9/4(月)『夜叉綺想』本読みWS 第10回レポート
2023年9月 4日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
↑去年、結局このストーンヘンジには行きませんでした。後悔!
たかが観光地などとバカにせず、やはり訪ねて
おくべき場所だったと猛省しています
唐十郎作品中、屈指の迷走を見せる『夜叉綺想』第3幕が中ほどに
差し掛かりました。
舞台となる転落花横丁(新宿ゴールデン街の外れ、という設定)から
起死回生の浮上の挑む主人公二人、野口と牛乃がとんでもない
活路を見いだす。そういうシーンです。
牛乃は兄・ゴーシュを亡くし、
野口は義姉ケイコを刺殺した咎で明日、刑務所に収監されることに
なっています。
周囲には魔大医学部から転落した元女医や元ナースの街娼たち。
そんな魔窟とも、人生の掃き溜めとも吹き溜まりともいえる場所から
飛び立つために、牛乃は奇妙なことを語り始めます。
曰く、ゴーシュは実はUFOと交信していたらしい。
その際、10万年前のヒマラヤ山岳民族の言葉を使っていたらしい。
ヒマラヤ山岳民族の文明は、やがて西ローロッパのケルト文明に
結びついたらしい。ついては、「マブマブ・ドリュイド」という
言葉が宇宙と交信するキーワードらしい。
「マブ」とは「女王」の意。
同時に、江戸の遊郭言葉で「本命の男」を「マブ」とも云う。
「ドリュイド」は「不思議なもの」の意。
やがてケルトに至り、「ドリュイド教」「ドリュイド僧」に結びついた。
確かに、イギリスのストーンヘンジなんか、
いかにも宇宙と交信できそうな感じがしますね。そういうことです。
ここから、かなりメチャクチャではありますが、
牛乃と野口はこの「マブマブ・ドリュイド」を使った宇宙との交信に
活路を見出します。
その際、面白いのは、
要するに唐さんが、牛乃の生まれ故郷である信州の被差別部落を
ヒマラヤ山岳民族やケルト文明につなげて考えていることです。
唐さんというフィルターにかかれば、長野がミステリアスで壮大な
輝きを帯びてくる。牛乃は宇宙と交信する人々の末裔として、
毒も使えば魔術も使う、というイメージが連なってきます。
・・・この強引さを面白さととるか、単なる支離滅裂ととるか
それが、この『夜叉綺想』を好きになるかどうかの分岐点です。
昨晩はこういう会話をやりながら、時には娼婦たちが
牛乃と野口に面当てで皮肉な歌を歌ったりするのも愉しみました。
物語の最後、どんなUFOがやってくるのか。
果たして二人は救われるのか>
古代文明を使ったSF、というハヤカワ文庫的世界に、
ますますのめり込んでいきます。次回は9/10(日)!
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