10/17(火)『青頭巾』本読みWS 第3回 その②

2023年10月17日 Posted in 中野WS『青頭巾』
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↑野外上演版の拡大器を扱うシーン(写真:伏見行介)

昨日の続きです。

青頭巾の女テキヤによる身の上ばなしは、
一昨日にやったパートの中で重要な聞かせどころです。
何せ彼女は手練のテキヤという設定ですから、
とにかく弁が立つように書かれている。
その能弁家が弟を亡くした様子を語るくだりはなかなかグッときます。

だいたい、彼女たち姉弟はかなり厳しい子供時代を過ごしています。
青頭巾がトレードマークの拡大器を売るテキヤに拾われ、
この姉と弟は(親がどうだったかは知れない、戦争孤児か?)、
学校にも行かずにテキヤの学校前販売に付き沿っています。

青年との出会いもこの時分。

それが、時間が経つうちに青頭巾のテキヤが亡くなって、
子どもながらに姉の方が方が跡を継ぐことになった。
それだけでもなかなかしんどい育ちですが、
加えて商品である拡大器の仕入れ中の弟が交通事故で亡くなる。

その際、車に轢かれて道路に倒れた弟の手に姉が拡大器を握らせ、
弟の顔をなぞることで地面に大きな弟の似顔絵を描こうとした
くだりは、唐さんならではの不思議な情感に満ちています。

姉は咄嗟に、すでに事切れて時間の止まってしまった弟を拡大器で
描くことで、大きく成長した姿を思い描こうとしたのか、なんて。
どうにもやりきれません。

さらに、墓もままならぬ貧しさから弟の遺体をザクロの木の下に埋め、
その養分を吸い取って生ったザクロの身を食べた青年を弟がわりに
しようとするところなど、余りに強引ではありますが、
何としても弟に再会したいと願う姉のなせる技、と理解できます。

加えて、これが興味深いのは、
主人公の兄がアフリカで起こしてしまった交通事故と、
女テキヤの弟が轢かれた事故が、キレイに対になっているところです。

アフリカでは弟を庇って姉が轢かれ、日本では姉の前で弟が轢かれる。
このあたりの連鎖も、唐作品の特徴ですからぜひ味わって欲しい。

次回は10/24(火)19:30からやります。

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