10/30(月)『青頭巾』本読みWS 第5回 その①

2023年10月30日 Posted in 中野WS『青頭巾』
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↑上田秋成の『青頭巾』に出てくる名僧・快庵和尚の子孫の坊主も
登場し、念仏を唱えています(写真:伏見行介)

昨日の本読みで1幕が終わりました。そして2幕に少し入る。
いよいよこの『青頭巾』という劇は、唐作品の中でもライトに楽しめる
エンタメだということがはっきりしてきました。

青頭巾の女テキヤと青年・杉作は意気投合します。
青頭巾の扱う品物の拡大器、彼女の語る亡き弟への想い、
いずれも杉作の心を捉えます。彼はすっかり青頭巾に絆され、
彼女にどこまでもついていこうという勢いです。

ところが、ここでユリアが殴り込む。
ザクロの木の下の場所割りを巡ってニセ醤油売りのカラスとの
争いに躍起になっていたユリアはふと我に返り、
青頭巾の騙った倉持の親分がすでに他界しているのを
嗅ぎつけたのです。

もはや青頭巾の詐欺師ぶりは明白。
青頭巾を封じる、といえば、この芝居の原作、
上田秋成の『青頭巾』に登場する快庵和尚の末裔まで
引っ張り出して(役名は「坊主」)、青頭巾ことその名を
オイチョカブを戒めにかかります。

ところが、やはりオイチョカブは一枚上手、
今やすっかり自分に心酔する杉作も使い、ユリアと坊主の追求を
巧みにかわします。坊主は先祖の快庵に及ぶべくもないスケベ野郎、
バカな生臭坊主だということまであっという間に暴かれます。

が、ここは敵もさるもの。
坊主は「光月照松風吹〜」という原作おなじみの呪文を唱えながら
手下にオイチョカブをはがいじめさせ、さらに別の手下が斧で
ザクロの木を伐り倒します。弟のエキスの詰まった木を切られ、
心を引き裂かれるオイチョカブ。

そこへ、杉作の兄が自殺した報が飛び込んできます。

駆け付けたカラスによれば、
杉作の兄は近所の木にロープを結えて首を括ってしまったのです。
この大事に、すべての人間が事件の現場に殺到します。
もちろん、杉作も。

するとオイチョカブは駆け出そうとする杉作に声をかけ、
自分は弟を、杉作は兄を、喪った者同士の再会を涙声で約束します。
情感あふれる熱いシーンです。

が、すべての人間が去った後にオイチョカブが見せた表情は
まんまとザクロ石の詰まったトランクをせしめた喜びでいっぱい。
要するに彼女は、またも持ち前の口八丁で皆を出し抜き、
お宝入りのトランクをせしめることに成功したのです。

ここで1幕はおしまい。
杉作の兄が亡くなるという大事件が起きながら、
不思議と悲壮感がないのがこの『青頭巾』の魅力です。
痛快さを全面に押し出して悲劇性は控えめ。

昨日は2幕冒頭にも進んだので、それはまた明日。

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