10/31(火)『青頭巾』本読みWS 第5回 その②

2023年10月31日 Posted in 中野WS『青頭巾』
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↑左から、ガセ象、切り株、カラス、若い衆、ユリアがいます
若い衆を可愛がるユリアに、ガセ象は追い詰められます
(写真:伏見行介)


一昨日の本読みWS、
第2幕に少しだけ入ったので状況を整理しておきます。

2幕では、すでにザクロの木が伐られ、切り株になっています。
その間でユリアがコマ回しの芸を見せ、
薬売りの口上を述べているところから始まります。
これは本来、ユリアの夫であるガセ象がやっていたこと。
けれど、傍にいるのはガセ象でなく、1幕では手下だった若い衆。
彼らは商売をしながらイチャついている。

と、ガセ象が上半身裸でそれを覗き見ています。
1幕のガセ象はいざという時にまったく役に立たず、
しかも、終盤はチバ師のカラスと組んで、カラスは鞍馬天狗に、
ガセ象は馬に扮して時代劇ごっこに興じていたのでした。

そんな愚かなガセ象への折檻として、
ユリアはガセ象の裃を奪い取って裸にした挙げ句、
若い男とイチャつく姿をこれみよがしに見せつけています。

泣きべそをかくガセ象をなぐさめるのはカラス。
そういうシーンから2幕はスタートします。

このガセ象、ユリアの夫婦関係はなかなかに含蓄があります。
美男美女同士、お互いに第一希望同志の恋人や夫婦の世界は、
それこそ絵に描いたドラマのようなものです。
現実には、そんな美しい者同士の美しい関係ではないからこそ、
味わいが出てくる関係性というものがあります。

ユリアはいつも情けないガセ象を怒っている。
ガセ象はいつも尻に敷かれてユリアに付いて回っている。
でも、この二人の、腐れ縁に見える関係を、いざとなれば深い
情実をはらんで泣かせるような輝きを発揮する。

こういうのが唐さんの得意手です。
言ってみれば『秘密の花園』の2幕終わりのようなもの。
いちよと大貫が分かちがたく結びついていたように、
ユリアとガセ象もまた強すぎる絆を彷彿とさせます。

そういう細部にも注目して欲しい。
痛快な『青頭巾』は下町のしがない人々を扱って、
細やかな情緒を扱った劇でもあります。

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