11/14(火)『青頭巾』本読みWS 第7回 その②
2023年11月14日 Posted in 中野WS『青頭巾』
↑オイチョカブは、あの世の兄さんにトランクを返す、
という奇想天外なアイディアで杉作を騙そうとする(撮影:伏見行介)
一昨日に行った本読みWSは2幕中盤における
杉作とオイチョカブの会話を中心に進行しました。
この場面の醍醐味は、
1幕終盤でオイチョカブに騙され、
怒りに燃える杉作がその剣幕にも関わらず、
結局はオイチョカブに丸め込まれ、さらには説教までされて、
最終的には杉作の側からオイチョカブの言うことを聞かされていく
くだりにあります。
何より、そういう過程に悲壮感が無く、互いに嬉々として、
騙し、騙されるのを楽しむようなところがある。
この余裕が、全編を通じた『青頭巾』の魅力です。
最初、杉作は移動型のカギ屋に扮しています。
これは、彼なりにオイチョカブを捕らえてやろうと張った罠でした。
何しろオイチョカブはトランクの二重底を開けてお宝・ザクロ石を
取り出すことに血道をあげていますから、カバヤマの持つカギが
手に入らなければ、きっとカギ屋に頼むに違いない。
こんな予測からカギ屋に扮するという、
まことに手の込んだ杉作の発想がコミカルです。
そして杉作は、まんまとカギを巻き上げて逃走中のオイチョカブを
発見する。カギ屋であることはまったく役に立たなかったわけですが、
執念は本物です。そこから彼は、1幕の後にどれだけオイチョカブが
トランクを持って現れるのを待ち、兄の葬儀や火葬に取り組みながら
彼女がやってくるのを信じ続けたのかを語ります。
信じた分だけ裏切られたショックがいかに大きかったか。
すると、ここからはオイチョカブ得意の口八丁が炸裂。
杉作に会いに行きたい自分になぜそれが出来なかったのかを
滔々と語り、自分はトランクをあの世の兄さんに返そうとしたのだと
強弁します。果ては、兄さんが首を吊った木とロープとを利用し、
あの世にトランクを飛ばす装置の説明までしてみせる。
(そんなことできるはずがないのは百も承知だが、杉作は騙される)
さらに、杉作がオイチョカブの案に疑いの目を向けるたび、
子どもの頃に杉作たちに投げられた石による額の傷が痛いと言って
杉作の罪悪感を刺激します。根がお人好しの杉作は、
またもオイチョカブにたらし込まれていく。
やがて再びオイチョカブの善意を信じるようになった杉作に
彼女はもう一つの要求を突きつけます。それは、オイチョカブの
亡き弟を杉作の家の養子にして欲しいという相談でした。
彼女の亡き弟の遺体を巡り、警察からの問い合わせに
困ったオイチョカブは、すでに死んだ弟を杉作の家の養子に入れ、
杉作の名字である上田家の墓に入ったことにしようとします。
実際はザクロの木の下に埋めたわけですが、嘘の証言を共に
することを杉作に飲ませようとする。証拠の品である
養子縁組の書類に杉作の拇印を打たせることで書類を
でっち上げようとするのです。
このあたり、唐さんの法律的知識はかなりいい加減で
(おそらく百も承知でメチャクチャなロジックを
組み立てているわけですが)、オイチョカブの目的は充分に判ります。
杉作にこの作戦を拒絶されると、
わざといじらしく諦めてみせ、相手に無理難題を頼んだことを
詫びてみせるくだりなどは詐欺師の真骨頂で、杉作はすっかり
絆され、要求を飲もうとします。
というやりとりを、一昨日は愉しみました。
次週は、オイチョカブの思い通りにはさせないとカラスが
登場します。結局、テキ屋の頂上決戦はオイチョカブとカラスの
一騎打ちです。杉作の奪い合いとも言える。
クライマックスに向けて劇が高揚していきます。
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