11/27(月)『青頭巾』本読みWS 最終回

2023年11月27日 Posted in 中野WS『青頭巾』
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↑動画でないと分かりにくいんですが、トランクから飛び出た
オイチョカブがザクロ石を見事にさらうところで大団円
この青頭巾の女性が、オイチョカブか、アフリカ人女性のゾロメか
わからない。それが唐さんという作家の巧さです(写真:伏見行介)


昨日は『青頭巾』本読みの最終回でした。
10月から始まり、全9回目でエンディングに到達です。

最終回は先週の続きとして、快庵と牧村課長の作戦により、
盛り上がっていた杉作とオイチョカブの間に亀裂が入るところから
始まりました。オイチョカブの弟の遺体のエキスを吸って育った
ザクロの実を食べたことにより、力を得ていた杉作の自信が
急速に揺らいでいきます。ある種の養子縁組というオイチョカブとの
繋がりも急に弱まっていく。

こうなると、それまでの勢いはどこへやら、
杉作は萎えてしまって、オイチョカブがどんなに励まし、
掻き口説こうとも元の気弱な浪人生に逆戻りしてしまいます。

やがて、オイチョカブの心も離れ、
一転、自分の死体遺棄は杉作に唆された、つまり杉作のせいと
警察に訴え、二人の中は徹底的に引き裂かれてしまいます。

そして悪いことに、
オイチョカブは飛び込んできたガセ象に刺されてしまう。
これは、二幕序盤でユリアが若い男と絡むのを見せつけながら、
夫であるガセ象を挑発したのが引き金でした。
焚き付けられたガゼ象は男を見せようと逸り、凶行に及ぶ。

ガセぞうが警官に連行され、オイチョカブは息も絶え絶え、
杉作の呼び掛け虚しく、オイチョカブも退場します。

残った杉作の前にやってきたのは、トランクを持ったカラス。
そしてカラスは欲得ずくの本性をあらわし、お宝を手に去ろうと
します。カラスの当初からの目的を目の当たりにし、揉み合う
杉作。と、二人が争ううちに転がったトランクの中から
跳びだしたのは、ザクロ石をしっかりと握ったオイチョカブでした。

彼女はいまや、アフリカで亡くなったゾロメという女性にも見える。
ゾロメは自分の土地のお宝を、こうして青頭巾となって取り返しに
きたのです。あるいは、単に死んだふりをして、強かなオイチョカブが
見事に宝石を手に入れたようにも。とにかく、杉作はこれに
喝采します。

というエンディング。

参加してくださっている方からの感想では、
この『青頭巾』は時間も場所もキャラクターも飛躍せず、
唐さんの作品のなかではかなりわかりやすい、
という意見を頂きました。

その通りだと思います。
ザクロ石の奪い合いという物語の骨格もすごく単純で観やすい。
けれど、最後の最後だけ、青頭巾の女テキヤ、オイチョカブは、
アフリカで杉作の兄に轢かれた女性・ゾロメなのではないかという
唐さんの仕掛けが、このシンプルで痛快な物語に、大胆でユニークな
着想を与えています。

上田秋成の原作で、青頭巾を被ったのは鬼に堕ちた坊さんの魂でした。
これが唐版では、青頭巾を被るのはアフリカで殺された女性の霊という
ことになる。このアイディア、さすが唐さんです。

こうして気分良く、来月からの『鐵假面(てっかめん)』に続きます。

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