2/19(月)『腰巻お仙 忘却篇』本読みWS 第1回

2024年2月19日 Posted in 中野WS『『腰巻お仙 忘却篇』
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↑なんといってもこのポスターが有名ですね。初演時に集まった観客は
せいぜい数十人というところ。しかし、そのポスターは絶大に後世に
語り継がれました。面白い!


昨晩は本読みWS、新シリーズの初回でした。

『腰巻お仙』シリーズ、すなわち、
『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』『振袖火事の巻』を
一気に踏破しようという野心的企画です。
初期のザ・唐十郎、ザ・アンダーグラウンド芝居というこの作品群に
興味を持ってくださったのか、多くの方々にご参加頂きました。

まず、初回恒例の時代背景や唐さんの執筆動機について
説明する時間を多くとりました。
1960年代が持つ、戦後20年という特性、ベビーブームの中で
生まれた団塊の世代が青年となって同棲ブームとなり、
望まぬ妊娠→中絶が頻発したことが、
唐十郎流に「母性」や「堕胎児」を取り扱ったこのシリーズ誕生の
背景であることを伝えました。

60年代の作品というとおどろおどろしいイメージがあるかも
知れません。確かに流血シーンが多めではありますが、
軽演劇的なコミカルさやバカバカしくナンセンスな笑い、
そして、当時の青年たちにとってシリアスな妊娠→堕胎 事情が
ないまぜになっているところがこの作品群の魅力です。

そういう中から、初回の立ち上げを行いました。

肝心の内容についてですが、まず、お蓮という夜鷹が登場します。
彼女は年増の娼婦として、昔に情を通じた男の帰りを待っています。
「夜鷹」という設定は戦後のパンパンを想起させ、
「シルバー」と呼ばれる思い人には出征兵士の匂いがします。
このあたり、「戦後」が濃厚です。

そこへ登場する「乞食」。
彼はシルバーのことを知っているようでありながら、
あえてそれを口にせず、お蓮にあシルバーを忘れるよう諭します。

お蓮が去った後に現れた「少女」は、
中気を患って働くことのできない父にかわって家計を支えているようです。
その彼女もまた、乞食を誘って公衆便所に消えます。
少女買春が濃厚に匂います。

それからはお馴染みの床屋と禿の客の会話。
野外理髪店という珍妙な設定ではありますが、それにも戦後の
バラックを感じます。「なんてじめじめした陽気だろう」という
名せりふ、名会話が展開します。
娼婦や乞食たちが登場する一方で、貧しいけれど平和な庶民。
それがこの床屋とお客に託された風情です。

ここでは、かつて大久保鷹さんから教わった
この会話を言うコツを参加者の皆さんに伝えました。
不条理的に意味深にならず、楽しげに言うんだよ。
これは、高温多湿の日本に対する讃歌なんだ。
そういうコツを、学生時代の私に鷹さんは語ってくれました。

思い出いっぱいの『腰巻お仙』シリーズです。
そういうエピソードもたくさん披露していきたいと思います。

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