4/22(月)『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』本読みWS 第5回

2024年4月22日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』
Phaedra_(1962).jpg
↑『Phaedra(邦題:死んでもいい)』のビジュアル
DVDが出ないかな、と期待している作品です

昨晩は『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』本読みの第5回。
物語の核となる3幕後半と、4幕の序盤を読みました。

3幕後半は重要です。
主人公・忠太郎と美少年(=実は腰巻お仙)が真っ向から対決する。
母を慕って再会を願い続ける忠太郎に向かって、
少年は母親の自己中心性をあげつらい、ひたすら母への憎しみを述べます。

当時のヒットソンングである『ブルーシャトウ』が呪いのように
リフレインするなかで、母親が胎児を体の中で弄ぶ
「母体構造概論」を捲し立て、それからさらに、
母親を忘れてしまうために湘南海岸から九十九里までを
スポーツカーでぶっ飛ばそうと忠太郎を誘うのです。

これを受けた忠太郎は、少年の母親憎悪に感化され始めます。
もともと、忠太郎の母はビキニ着たさに海水浴に行き、そこで
見知らぬ少年ととともにドライブに行ってしまう女性です。

14歳で忠太郎を生んだ母は29歳。忠太郎は16歳。
という設定です。その割に忠太郎はタバコを吸っていますが。
まあ、時代です(笑)
それ以上に、母親の年齢が29歳という若さが衝撃的です。

探せども探せども、手紙が来るばかりで一向に会おうとしない母。
忠太郎にもともとあった疑いや悪感情が、少年の長せりふを
受けて一気に吹き出し、忠太郎が揺さぶられるのが見どころです。

これを止めるのがお春さん。
彼女は、荒野で悪魔の誘惑を退けたキリストを引き合いに出しながら
母親への悪感情を募らせようとする忠太郎を諌めます。

と、ここで、よくよく読むと面白いのが、
当の美少年もまた、母親存在を振り切るために勢いや頑張りを
必要としていることが、せりふの端々に読み取れる点です。
「お仙」のキャラクターについては前作『忘却篇』を読み解くしか
ありませんが、確かにお仙もまた、両親に捨てられたことから
彼らを恨みつつ、一方で強烈に愛情に飢えてもいる。

その一旦が、この3幕にあらわれているのを皆さんに味わって
もらいました。

ともあれ、母は喫茶ヴェロニカに現れず、
4ヶ月で堕胎された忠太郎の弟を名乗る不気味なガキが
持ち込んだ手紙によれば、お母さんの居所は袋小路病院と知れます。

そして「4幕 月下」へ。

4幕序盤はお笑いのシーンです。
3幕が張り詰め、4幕終盤が母をめぐる忠太郎と少年の最終決戦で
あることは明白です。そこで、コメディリリーフとしての看護婦と
袋小路の情事、犬の患者、かおるを取り返そうとやってきた床屋と
禿の客を翻弄するドクター袋小路の二枚舌、口八丁ぶりが延々展開
します。要するに、ここをお笑いいっぱいにすることで、一気に
シリアスに収斂する時の求心力を高めるわけです。

かくて、忠太郎が病院を訪ねます。
続きは次週。4/28(日)で『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』を
完結させます。

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