5/18(土)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第1回 その②
2024年5月18日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
↑2016年10月の唐ゼミ☆公演より
この『腰巻お仙 振袖火事の巻』は上演にまつわる伝説が大きすぎて
では内容は、というと冷静な評価の対象になっていないように
思います。ですから、実際にはどんな内容の劇なのか検証することが
より大切であると考えながら読んでいきます。
まず、舞台はソロバン塾から始まる。
「お仙」には「片桐仙子」という名が与えられていて、
中学3年生=14〜15歳という設定です。
主人公である円谷芳一は同級生ですから、同い年なのです。
20代も後半にさしかかり、30歳に手が届く唐さんたちがした設定
としては、ちょっと可笑しみもあります。
このソロバン塾を経営するのは、袋小路先生であり、
仙子はいかにも不出来な生徒です。ピタゴラスの定理を問われ、
π2r(パイ2乗アール)という間違った答えを返す。
(このへんには、理数系志望を挫折した唐さんの個人史が
ディフォルメされているようにも感じられ、これまた可笑しい)
こういう授業のさなかにも、袋小路は何やら狙っています。
というのも、彼は年若い女生徒である仙子をかどわかす
エロ教師なのです。他方、当の仙子にしても、
純情な女学生に見える彼女の背後にある秘密が垣間見える。
仙台で育ち、何らかの事情で東京の叔父に引き取られた彼女には、
生活のために春をひさいだ過去があり、往時の望まぬ妊娠により
何人もの子どもを堕胎した、というエピソードが、わかりにくい
かたちではありますが、語られます。
それに応えるように、当の堕胎児たちはかの明智小五郎に扮し、
母を求める探偵に扮しているという有り様です。
ともかくも、袋小路によって陵辱された仙子。
と、それを迎えに来るふたりの男。
一人は仙子の中期のおじさんで、まるで彼女を女中扱いします。
彼は仙子の様子に目もくれない。
もう一人は、同級生の円谷芳一。
芳一と仙子とはいわゆる友だち以上恋人未満の関係&年齢ですが、
それぞれの進路をめぐっていかにも青春といった会話を繰り広げます。
その際、芳一はもちろん、仙子が背負った因果は想像だにしません。
女性は男性よりも一足先に大人になるという定石を唐さんは展開します。
芳一は中学を卒業し、自衛隊員を目指すことを宣言します。
中卒で入隊できるのか、という疑問はさておき、ここに、
『振袖火事の巻』を貫通する物語が提示されます。
少年は、少女の因果に見合うだけの男になり得るのか、というテーマ。
娼婦と兵隊、というそれぞれのジェンダーにとって人類最古の
職業を踏襲するあたり、実にクラシカルな設定でもあります。
短い1幕により、主題が提示されました。
続きは5/19(日)の夜に!
トラックバック (0)
- トラックバックURL:
コメントする
(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)