6/10(月)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第5回(最終回)

2024年6月10日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
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↑この演目の最後のせりふだけはどうしても"新宿"という場が必要です

昨晩は本読みワークショップ。
『腰巻お仙 振袖火事の巻』の最終回でした。
ということは、2月以来つづけてきた『腰巻お仙』のファイナルでも
あります。『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』のことも振り返り
ながら、完結篇の総括をしました。

読んだ箇所は4幕半ば以降です。
約30ページを駆け足で読んだのですが、そのうち20ページは
なんと『忘却篇』2幕のコピペです。
唐さんがよほどあの場面を気に入っていたものと思われますが、
謎めいたドクター袋小路の秘密を暴こうと床屋と禿の客が
袋小路精神病院に挑み、返り討ちに遭うという展開を見せます。

ただし、『振袖火事の巻』のそれが大きく『忘却篇』と異なるのは、
ドクター袋小路の上位に君臨する「先生」の使者として、看護婦の
アキ・マキがいることがわかる点です。そう。アキ・マキは袋小路の
部下でなく、先生の手下として袋小路を監視する役割を負っており、
ゆえにこそ2幕で名曲『ローハイド』がかかるなか、働きの悪い
袋小路をしばいていたのです。その上で、「先生」の正体が"黒幕"
という以上に進展しないのは、まあ、唐さんのご愛嬌です。

そして、床屋も、客も、袋小路が相打ちで倒れます。
それを静観するアキ・マキの冷静な態度からも、
先ほどの権力構造は明らかです。

次につづく残りの2シーン。

今や、堕胎児・小五郎たちまでもが警察=公の国家権力に
なっています。彼らを慰めてきた仙子の吹く笛が3幕終わりで
破壊されてしまったために、彼らは自立し、娼婦である母を捕らえ、
あるいは、自らも少女を犯して父親を目指す側になったのです。
堕胎児を忘れようとする母・仙子と、
母を忘れようとする堕胎児・小五郎たちの闘い。
連行されかかる仙子は咄嗟に彼らのピストルを引き抜き、
彼らを殺します。そして、自ら子どもたちを殺めてしまったことに
慟哭するのです。

そして、最終場面では、ひとりになった仙子の前に
自衛隊の服を着た芳一が現れます。
芳一は自衛官の道を断たれて尚、私立のハグレ自衛隊として
どこともわからぬ戦地に赴こうとするのです。

数々の悲惨を経て、第一幕終盤の光景が変奏します。
今度は、ふたりは再会を約束します。
もう一度、少年・少女になった彼らは大人の男女になろうとする。
そして、いつか新宿で一緒に暮らそう!と誓い合うのです。

ここには、堕胎児に苛まれながらおぼつかない恋愛に悩む男女が
揃って一皮むけて成長した姿が描かれています。冷静に見つめれば
何の展望もないかに見える二人ですが、とにかく勢いで押し切って
大団円させてしまう言葉と場面のパワーが飛び抜けています。

唐さん自身もまた、機動隊を向こうに回して芝居をやり切ろうと
いう覚悟と、おそらく、前年に大鶴義丹さんが生まれて父親になった
自覚とが溢れていて、それが劇の主人公たちにも胸を張らせるのだと
思います。もう青春残酷物語はおしまい。そういう感じがします。

厳密には、翌々年の『吸血姫(1971年初演)』にも堕胎児は
ちらりと出てきます。しかし、それはテーマというほどのものでは
なくなっています。少年・少女が大人になるための『腰巻お仙』
シリーズを上演するには、私を中心とした唐ゼミ☆メンバーも
年齢を重ね過ぎていますが、今後に例えば、大学生の皆さんと
劇をつくる機会に恵まれたら、取り上げてみたい作品です。
以上、若さゆえの不安とギャグに溢れた『腰巻お仙』シリーズでした。

次回から、7月末に公演する『少女仮面』を取り上げます。

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