11/6(土)子どもの頃にみた舞台③
2021年11月 7日 Posted in 劇団員note
うりんこの『ファウスト』についても話したいと思います。
こちらの方は、確か、名古屋市民会館で観たと記憶しています。
4年生くらいだったろうか。
老いたファウスト博士が書斎にいる場面から始まり、
犬に化けたメフィストフェレスがやってきます。
そして、例の契約を交わす。
若返ったファウストは旅をし、
ヒロインであるグレートヒェンと出会うわけですが、
よく覚えているのはお城を訪ねるシーン、
さらに、大宴会のシーン。
そもそも、この舞台は装置なし。
すべて人力で演じられていた、登場人物たちだけでなく、
お城の門や、宴会の場面で使われる胡椒なんかも、
俳優たちによって表現されていました。それが印象深い。
俳優たちが手を繋いで壁になったり、そのうちの何人かが動いて、
門がオープンしたことを示す。胡椒を演じる人が腰を動かすと、
カリカリという効果音が鳴って、ミル付きの胡椒の容器となる。
あとは最終場面。
ファウストが期限の終わりを告げられる場面。
メフィストとの間に交わされた20年契約は、
半分の10年で満了時期がやってきます。
理由はメフィストが、昼も夜も働いたから。
これに、小学生時代の私はまったく納得がいきませんでした。
あと10年あると信じていたところで、いきなり約束の終わりを告げられる、
そのことを怖ろしく感じました。
『マクベス』の「女の腹から生まれた〜」理論と
『ファウスト』の「昼夜を通して働き続けたから」と云う理屈は、
私がいまだに、ぜんぜん納得がいっていないものの代表です。
ちなみに、この間まで取り組んでいた『唐版 風の又三郎』の
ヒロイン「エリカ」も似たようなせりふを言います。
一幕の半ば。それはこんな感じ。
「僕は男と女を使い分けるから、時間を二倍の速度で駈けぬけられる。
だから、君の三年は僕にとって一年半。」
『ファウスト』の影響かと思っていたら、これは『不思議の国のアリス』の
引用でした。『さすらいのジェニー』もそうですが、矢川澄子から、
唐さんは色々なことを教わった。
マルセさんと『ファウスト』。
二つの舞台には共通点があって、それらが徹底して、
セット無しの人力による表現だったことです。
これは、もし子ども向けの舞台をつくるとしたら、
自分が踏襲したい大きな要素です。
最後に。『ファウスト』好きになった私は、
それから原作を読み、多くの関連作品を観ました。
中でも面白かったのは、アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画です
あの映画の最終場面。
容貌怪異のメフィストに終わりを告げられたファウストは怒り、
この悪魔をボコボコにして去ります。あれは痛快でした。
しかし、一度だけの裏技と云えますね。
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