10/1(火)『少女都市』本読みWS 第3回 その②

2024年10月 1日 Posted in 中野WS『少女都市』
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↑雪中行軍といえばこの映画。生き残った人たちの手足に障害を
負わせる凍傷の恐ろしさを想像することができます。
つまりそれはフランケが身体に負った障害ということです


一昨日の本読みWSのレポートを続けます。

割れたビー玉にこと寄せたフランケのモノローグは、
彼が雪子を手術するに至った動機を明らかにしていきます。

まず、フランフがかつて、雪の満州を行軍する二等兵(下級兵士)で
あったことがわかります。さらに、フランケだけが追体験する
連隊長麾下の兵士たちとのやり取りの中で、ぜんそく持ちの
フランケ二等兵がいかに従軍を希望しながらこれを聞き届けられず
日本に復員することになったかが語られます。

明らかに太平洋戦争末期の満州が描かれています。
日本の敗戦が濃厚となるなかで、隊の者たちは雪原の中で
あてどもなく彷徨い、死んでいきます。
それを象徴するのは「オテナの塔」作戦という言葉。

この時、フランケに帰還を命ずる連隊長の言葉のなかにある
「おまえの作戦は、おまえでつくれ!」「おまえのオテナ、
温かいオテナ」という言葉が、雪子をガラスの少女に改造すること
への直接的な動機になっていることが示されます。

つまり、満州で死にきれず、傷痍軍人として日本に帰ったフランケは
(フランケが身体障害を負ったことは「醜態」という名前に示されて
います)、同じように身体に不具合を抱え、ガラス工場で働く雪子の
なかに、障害を持つ者同士のシンパシーや、美しさや永遠性への憧れを
覚えてフィアンセとなり、また手術を行っている背景が見えてきます。

この後のシーンで舞台が現実に帰り、雪子の兄が手術中の雪子を
助けに来ると、雪子はフランケと進めてきたガラス化への恐怖、
元の人間であることへの未練が生まれ、フランケとの約束のようには
事が進みません。しかし、何も手術はフランケが無理矢理に進めて
きた事でなく、雪子とフランケの結びつきの中に生まれた着想で
あり、二人の希望であったことが分かってきます。

場面としては、女1がラムネを持って帰ってきたことにより、
逡巡する雪子を挟んで睨み合うフランケと兄の対決は中入りします。

が、大切なのは、一見すると悪役に見えるフランケこそが傷ついた者
であり、主人公的であることです。雪子も、唐さんの物語展開では
書ききれていませんが、前提条件として『ガラスの動物園』のローラ
を参考に不具合ゆえのコンプレックスを抱えた存在であることは
明白です。他方、雪子の兄については、社会や会社に対して怠惰で
あることくらいしか設定がなく、むしろこの兄は正義の味方や主人公
であるように見えて、感情移入しにくいキャラクターであることも
見えてきます。

私としては、傷痍軍人であり、身体障害者であるフランケの視点から
『少女都市』『少女都市からの呼び声』を読んでいく必要を感じています
が、今回の本読みこそ、そういう方針の裏付けとなる重要シーンでした。

次回は10/7(月)19:30です。


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