10/23(木)塔と青年の絵

2024年10月23日 Posted in 中野WS『少女都市からの呼び声』
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↑『下谷万年町物語』小説版の表紙です

中央公論社から、単行本と文庫本で出ている『下谷万年町物語』の
表紙には、いずれも上の絵が使われています。
これは、1964年に『煉夢術』が初演された時にチラシのビジュアル
として使われた絵で、『ゴドーを待ちながら』を意識してか、
山高帽をかぶった青年がギターを持ち、時計のついた塔を眺めている
という絵柄です。

大切なのは、なぜこの絵を『下谷万年町物語』というお話の表紙に
使ったのか、ということです。それは、塔のある町と万年町が
唐さんの中では一直線につながっているからです。

路地に寝転がって長屋を見れば塔に見える、というわけで
唐さんは『煉夢術』を着想したので、生まれ育った万年町を描くのに
この絵柄を使ったのは自然なことです。さらに塔=「オテナの塔」
を描く『少女都市』『少女都市からの呼び声』における
雪子の部屋の様子が、明らかに長屋の一室であることも、
この唐さんの頭の中のつながりに思いを馳せれば、自然なことと
感じます。

先ごろ調べがついたように、『新諸国物語』の中で「オテナ」とは
アイヌ語で「酋長」のことですが、『新諸国物語』の中でも
「オテナの塔」は北海道ではなく佐渡にあり、この時点で混乱
していますが、まあ、自由だということです。

唐さんのイメージする「オテナの塔」がどんなものか理解する際に、
上の絵はそんなことを教えてくれます。

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