8/19(月)『煉夢術』本読みWS 第3回

2024年8月19日 Posted in 中野WS『『煉夢術』
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↑こういう感じの足カセがはめられる、という場面があり
唐ゼミ☆での上演の際は苦労した覚えがあります


昨晩のレポートです。
通常、1〜3幕ものを基本とする唐十郎作品としては珍しく、
『煉夢術』の1幕は多くの「場」で分かれています。
そして、その「場」、各シーンは2〜3名の会話でシンプルに成り立って
います。ですから大変に進行しやすい。
唐さんの周りにまだ仲間が揃っておらず、せりふを言っている以外の
役者たちが舞台上をウロウロして役割を果たしている、という状況が
生まれるのは、まだ先のこと。

昨晩は5場〜7場を読みました。

5場。
塔の守り番をする男と女の場面です。
男は、新聞記事を保管した冷蔵庫を塔の上からふもとの町に向かって
投げ落とそうとします。時間の止まったこの町に時の流れのあることを
証明するためには、新聞の日付欄や牛乳ビンのふたを貯めることによる
しかなく、それを仕事として実行しているという設定です。
ところが、町に落としたはずの冷蔵庫はすぐに返ってきてしまう。
要するに、この町は頑として時の流れを受け付けない。

一方、女には、この塔を目指して近づいてくる足音、
お腹の中からは赤ん坊の鼓動が聞こえてきます。
成長著しい赤ん坊も、時計修理の青年の足音も、静止した町を
揺さぶろうとする存在、この男女が生み出した命という点で共通して
いますが、やがて腹の音は止まり、足音が高鳴ります。
現れてみると、足音の主は青年ではなく、屠殺人。
堕胎手術を行う医者ともとれる屠殺人Bでした。

6場。
塔のふもとの屠殺場にて、時計修理の青年は屠殺人Aと遭遇します。
屠殺人Aは手管を用いて青年に足枷をはめて自由を奪い、しかもAが
念ずればその足枷はギュウギュウと青年の足首を締め付けて苦しませる
という具合です。Aは、青年がこの町にやってきた目的、即ち、青年の
耳に響くオルガンの元を突き止めようという目的を思い出させ、
屠殺場の中にオルガンの部屋があることを告げます。
足枷を引きずりながら、オルガンの部屋を目指す青年。

7場。
5場の続きです。男女は、屠殺人Bに監視されてこの静止した町を
動かす赤ん坊の誕生を制限されています。「屠殺場」という名の
手術室に誘われ、堕胎させられようとしている場面です。
同時に、男女と青年の出会いが予感させられます。
屠殺人AとBは、町を静止させるものの意志を受けて男女と青年を
再会させようと目論んでいるようです。青年とは、20年前に3歳で
行方をくらませた男女の子どもに他なりません。
時の止まった夢の世界では、子ども=青年の存在は許されない。
そういう雰囲気が舞台上の世界を覆っています。

・・・という3場でした。
かなり観念的です。シリアス。
それでいて、いつも思い出して頂きたいのは、これが20代前半当時の
唐さんの実家に対する感覚、上野周辺に対する感覚であるということです。

吉祥寺周辺に暮らし始めたばかりの無名の唐さんが、自分の育った下町の
無時間感覚(変わり映えのないに日常)を唾棄すべきものとして嫌いながら、
同時に、数ヶ月と持ち堪えられず実家に帰りたくして仕方がない、
ということが、この台本からは濃厚に伝わってきます。

当時の唐さんが思い描いた観念と実際、両方を味わって読んでいくと、
一見むずかしいこの台本が、その難しさも含めて親しみを持って
感じられる。そういう風に読み解くのコツです。次回は8/25(日)。

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