8月15日(土) 東北巡業10日目

2015年8月16日 Posted in 25_特別野外公演_青頭巾
中野です。

今日、8月15日(土)はなんという1日だったでしょう。
これまで10年くらい劇団をやってきましたが、初めてこんな過ごし方をしました。

081507.JPG

これまで経験した各地での公演。
金沢、大阪、新潟、京都、米沢、福岡、長野、名古屋。
けれども、地方にいて1日休みなどということは絶対にありませんでした。
それはそうです。 1日滞在すれば、それだけお金もかかる。
宿泊費、お風呂代、食費など。
だから必要最小限の日数で横浜を発ち、準備をし、公演をし、片付けをし、横浜に戻るわけです。
観光があるとすれば、寝る時間を削って朝早く起きるとか、片付けの日に早く作業を終えて、夕方から自由にするくらい。
それでも、皆は大層その時間を愉しみにしてきました。 

それが、今日と明日は、旅先でお休みなのです。
そうなった理由は、今回の4都市ツアーで使わせてもらう会場の利用可能日を掛け合わせていくと、どうしても前回の山形公演から石巻公演の間にブランクが空いてしまったから。
  
4日(金)に山形から横浜に戻り、16日(日)の夕方に石巻にやってくるという手も考えましたが、お盆の渋滞に巻き込まれた挙句、休息が1日では、かえって疲れてしまうという判断でした。
なにより、石巻の宿舎「門脇ハウス」が格安だったので、この2日間はのんびり過ごすことになったのです。
ただし、残りの石巻・仙台公演に向けて、広報活動はガッチリしますよ。


そんな8月15日(土)。
昨晩、実は自分は車で寝た。
以前に書いたように、ぜんそく持ちゆえにハウスダストが恐ろしくて仕方ないので、大部屋に敷かれる大量の布団に耐えられそうもなかったのである。
虚弱だ、虚弱だと嘆いていると、皆に、テントや車で寝ている方が余程つかれますよ、と慰められる。
慣れてしまったのと、安心して眠れるのとで、自分は全然つかれないのだけれど。

ぜんそくを想うとき、いつも思い出すのはゲバラである。
有名な『ゲバラ日記』や『ゲリラ戦争』を20歳前後で読んで、猛烈に感動した。
なぜなら、ゲバラもまたぜんそく持ちだったからである。
ラグビーの試合中発作を起こしてはベンチ裏に下がり、吸入(ぜんそくの治療)を済ませて再び試合に向かう医大生のゲバラ。
ぜんそくにも関わらず、密林に潜むゲリラ闘士のゲバラ。
ゲバラこそ、ぜんそく界のスーパーヒーローだ。
ぜんそくだってゲリラ戦や革命を闘い抜くことができる。
野外公演が何ほどのことであろう。

他にも、有名なところでは、長野オリンピック、スピードスケート金メダルの清水宏保やアントニオ・ヴィヴァルディなんかもぜんそくらしい。
閑話休題。

そういうわけで、カーテンなき車で寝ているので、石巻でも陽の出とともに目覚める。
周囲は海だから、釣りをする人、散歩をする人がけっこういる。
朝5時台から仙台行きのバスが石巻駅裏を出発するので、これを目指す人も多いのだろう。
かなり人通りがある。

7時。
宿舎の中から出てきた鷲見と散歩に出かける。
津波で流された地域を歩き、海側から日和山を登り、頂上の神社へ。
それから尾根伝いに高校がいくつかある文教地区を巡って、石巻駅周辺へ。
ぐるりと川沿いをあるいて戻って来ること1時間。 

途中、壊れてしまってそのままにされている住宅や商店をいくつも見る。
一方で、震災後にできたカフェや飲み屋さんなんかも多くある。

ところで、鷲見から気になる話を聞いた。
聞けば、夜中、一番窓側に寝ている鷲見は女の子がすすり泣く声を聞いたらしい。
いま、石巻に外からやってきている若者は多い。
その中の一人だろうか。
それとも......。
ここは亡くなった人も多いし、お盆なのだ。

8時。
皆でミーティングをして、ここから2日間の動きを話し合う。
いかに休息し、せっかくだから石巻について知り、さらに広報を展開するか。

8時40分。
まずは住環境をさらに快適にしようと、皆で布団を干し、掃除をし、炊事場を整えた。
海風があるし、涼しいしで、何をしていても恵まれた感じがする。
今日は贅沢な1日なのだ。

10時半。
皆をフリーにする。
ただし、チラシ、ポスターは携帯必須。
石巻マップに昨晩行った店を記入させ、未開発の店に率先して行くことで、小さな町の店の壁を野外公演で埋め尽くそうという作戦だ。

食事班と制作班は別動。
車でスーパーに行ったり、溜まったデスクワークしたり。

そうそう。一人学生を病院に連れて行った。
見れば、手の甲がパンパンに腫れている。
山形で虫に刺されたのかも知れない。
いずれにせよ昨晩から、こんな風になってしまったらしい。 
普段冷静なこの女子が目に涙を溜めているのを見て、悪いけれど、爆笑してしまった。
聞けば、夜中不安で眠れなかったらしい。
ということは、鷲見が聞いたのは、宿舎を抜け出して泣く彼女の声だったのだ。
鷲見を安心させて、女の子は椎野が病院に連れて行った。 

自分は買い出し班に同行する。
お盆なので、家庭でのパーティーに備えて、フルーツやお刺身や焼き肉用生肉の盛り合わせが充実している。
オードブル、お寿司なんかも豪勢だ。
ホタテ貝が氷水に使っていて、それをトングで掴み取るのもある。
ホヤも同様に豪快な売り方。
ここは宮城県なのだ。

12時。
戻ってきて、デスクワーク。
翌16日に仙台で展開する広報活動の準備。
それから、留守中の横浜のケア。

午後は、久々にまとめて本を読む。 おかげで、秋にやる予定の望月六郎さんとの公演の予習が、かなり進んだ。
皆は、海辺や日和山を散策したり、石ノ森萬画館や震災の資料館に行ったり、もちろんチラシを撒いたりしていたようだ。
石巻は震災以降、様々な人たちが訪れるようになった土地だから、地元には2011年のことについて語る使命感を持っている人が多い。
だから、うちのメンバーは、それぞれにそういう話を聞いてきたのだそうだ。
今回わたしたちが公演する中瀬公園はもろに津波被害にあった。
あの場所にはいまだに行きたくないという方も、何人かいたらしい。

一方、中には、仙台まで足の伸ばして楽天ゴールデンイーグルスの試合を見に行くという学生もいる。
相手は日ハムで、先発は斎藤佑樹らしい。
望月さんの新作に、この元ハンカチ王子の話題が出てくる。
実物がどんなだったか後で聞かせて欲しいと言って送り出す。

17時。
集合して食事の準備をする。
といっても、これは普通の晩ご飯ではない。
門脇ハウスのオーナー千葉さんご夫妻が、わたしたちのためにウェルカム・パーティーを開いてくれることになったのだ。

081501.JPG

ご夫婦で営む家庭菜園をフルに生かして、ご馳走を作ってくれているのだが、こちらは会場をつくり、おにぎりを握った。

学生リーダーのライオネル田中は料理が得意なので、スーパーで買ってきたホヤを調理してくれた。

19時から宴会。
千葉さんの旦那さんはかなりいけるクチらしく、お酒を各種取り揃えて振舞ってくれた。
焼酎からウィスキーから、なんでもある。

081502.JPG

081503.JPG

081505.JPG

081504.JPG

わたしたちはわたしたちで、これまで秋田と山形で頂いてきた日本酒をプレゼントして、ともに飲んだ。
奥様は日本酒党なのだそうだ。
石巻の歴史や、震災後いかにしてこの門脇ハウスを始めたかについて、千葉さんは話してくれた。
これまで4000人を超える人たちがここに泊まったそうだ。


海外の人も大勢。
あとは、旦那さんのサッカー熱について。

皆、おなかいっぱい食べて、飲んで、話して、記念撮影して1日が終わった。

12過ぎに就寝。

こんなのは、やっぱり初めてだ。



 →翌日の日記へ

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)