8月22日(土) 東北巡業17日目

2015年8月23日 Posted in 25_特別野外公演_青頭巾
中野です。
いよいよ最終公演地、仙台の初日を迎えました。
これまでの3箇所は一夜限りの公演でしたが、この場所だけ週末2日間の本番です。

仙台には以前、唐さん率いる紅テント劇団唐組が巡業に来ていました。
それが、誘致してくれていた方が健康を崩されたために途絶えたそうです。
ですから仙台には、一定の唐十郎ファンがいると思って2日公演を組みました。
先日まで危うかった集客も、現地の中村くんや南川さんの努力で、じわりじわり増えてきました。
さすが劇都仙台。

8月22日(土)仙台公演初日。
朝起きてみると、昨日からの雨はまだ降り続いている。
そのぶん訪れる人も少なくて、公園は静かだ。
鳥が鳴き声をあげて飛び始めたので、雨も間もなくあがるだろう。

いつものようにデスクワークをして鷲見と軽く運動、身支度を整えて皆の到着を待つ。

10時半。
皆がやってきた。
聞けば、昨晩はお風呂に行ったり食事をしたりする中で、動きが緩慢だった学生を椎野が叱りつけたらしい。
団体行動も終盤にさしかかり、皆だんだん地が出てきているが、そんな旅もあと数日だ。

室井先生が小遣いをくれたので、齋藤、椎野と青葉城にずんだ餅を買いにいく。

11時半。
全体ミーティングして1日の動きを打ち合わせして、体操、仕込み作業。
自分は皆の衣類を抱えてコインランドリーへ行って洗濯機を回す。

12時45分。 ここらあたりで雨が完全にやみ、カンカン照りになってきた。
久々に暑さを感じる。
ものがよく乾いて助かるが、予報によると、これで夕方から小雨なのだという。
勘弁してくれよ。

作業が一通り終わってきたので、稽古。
学生パフォーマンスと劇の修正点を伝えると、皆それぞれに練習に入った。
自分は再びランドリーに行って今度は乾燥機。
地元のおばあさんと世間話する。

13時半。
皆は国分町や一番町にチラシ撒きに出かける。
2時間あるので、宣伝して、ついでに食事も済ませてくるという段取りだ。
宿舎のある卸町は工場街、周囲には何もない。
そこと西公園の往復だったほとんどのメンバーは、これで初めて仙台の街を探検することになる。

15時半。
皆が戻ってくる。
少し街歩きをし、それぞれ思い思いの場所で食事して嬉しそうだ。
この時点で中村くんも合流し、本番体制へ一気に加速する。
いまだ陽射しが強く、暑いくらいだ。

客席を整え、受付周りを整え、お客さんを迎え入れる体制をつくりつつ、劇中歌の伴奏合わせをする。
雨が降ってきたときのために、避難用テントもセットして、配置を微調整する。
BMX(自転車でアクロバットな動きをするやつ)の練習に取り組む青年が4人園内に入るので、学生パフォーマンスを見るお客さんとの支障が起きないよう声をかけておいた。

17時過ぎ、じわりじわりお客さんが集まり始めた。
これまでの3 箇所はすごく早い集合だったけれど、いつもの、都内や横浜での公演と同じような時間感覚だ。
仙台、都会だなあと改めて思う。
都会人共通の傾向が確実にあるらしく、このあと本番を通じても、それは発揮された。
おもしろいものだ。

17時35分。
ライオネル田中を紹介して前座パフォーマンス開始。
天気予報によれば夜は雨と盛んに言っているので、早めにスタートを切った。
劇の始まりをチラシで告知した18時以前にするのはルール違反だが、ぴったりに開演するペースを狙う。

学生たちよく動いて声も出ているが、反応薄。
山形県にちなんで『おしん』の名場面を再現する出し物があるが、おしん役の吉村が、船に見立てたポリバケツに乗る際、それを支える松下・米澤コンビがバランスを崩し、落下。
これには客もちょっと反応。
あと、甲子園ネタで「仙台育英高校ありがとう」と田中が吠えると、これにも少し反応。

学生たちにすればやや不安な反応の中で前座を終え、客席へご案内。
さすがにだいたいの観客が揃い、野外劇場の客席はあらかた埋まったが、予約客で遅刻が10人くらい。

18時。
劇を始めると、テンポがぐっと引き締まっている。
それはそうだ。
水曜にやった(まだ中二日しか経っていない!)石巻では、科白の一言、所作のひとつにも反応があった。
また、明らかに客席内に、自分たちのやっているような劇を見慣れない雰囲気があった。
すると、いきおい役者は丁寧になる。
反応の終わりを待つようにもなる。
ステージと客席が会話するような砕けた雰囲気が生まれるのだ。

ところが、ここ仙台での上演は、観客の反応が薄いと見るや、キレのある筋肉質なものに変わる。

何が喜ばしいといって、そういう演じ分けを、役者が自然とやっていることだ。
彼らは去年から続く野外劇を通じて、徹底して劇は観客とつくるものだと体得してきている。
段取りを繰り返すのではなく、相手によって出方を変える。
そういう引き出しを持つ。
テンポよく運ぶ掛け合いや劇の進行を見て、みんな、わかってきているな、と思う。

19時半近く。
エンディングまであと10分というところで、霧雨が降り始めた。
体感的には苦にならないレベルだが、照明のライン上の雨粒が反射している。
まずいなあと思ったが、あと少しだ。
止められるタイミングではない。
もっとも、あと少しとわかっているのはこちらだけで、お客さんに劇の残り時間はわからないわけだから不安にもなるが、役者の頑張りに賭けるしかない。

19時40分。
なんとか持ちこたえて終演。
この場所では明日も公演があるので、大方のお客さんを誘って乾杯。
この段になると「おもしろかったよ」とたくさんの人が喜んでくれている。

そうなのだ。
皆さん反応が薄いだけで、内心おもしろがってくれていたのだ。
これが都会の反応。
無駄に自信喪失するといけないから、学生たちをどんどんお客さんの隣の席に送って、お話しするように差し向ける。
劇団メンバーはさすがに経験上わかっているので、いつもの客席という感じだよねえ、などと話しながら宴会を過ごす。


20時近くになって、近所の小学校から突然打ち上げ花火が上がり、さらににわか雨も降った。
いまは雨用客席テントの屋根の下で、観客と出演者と、お互い運が良かったね、などと笑い合っている。
どんなに1日雨だろうと、本番2時間だけピンポイントで降らないでいてくれたら良いのだ。
明日の予報も雨だけれど、どうにか今日みたいであって欲しい。

21時にお開きにして、お客さんによっては「明日も来ます」と言ってもらって、小雨のなか片付けを開始。
自分は風呂に行き、残すところ二日のみの劇場番に備える。

戻ってきたら、もう全体は解散していて、宴会中に先に風呂を済ませた鷲見がひとり留守番している。
楽屋テントの横幕を全開にしているので不思議に思うと、中がすごい臭いらしい。
熱演の汗を吸った生乾きの衣類で溢れているから仕方ない。

一方、わが女子楽屋は爽やかなものだ。

その後、22時から1時間半、自分は衣裳の洗濯のために近くのコインランドリーをネット情報を頼りに探し回ったのだが、2軒廃業していたのを確認した時点で心が折れた。
ずっと小雨の中、洗濯を明日の早朝に回して寝る。

いまごろ宿舎の主力部隊は、中村くんもまじえて大いに盛り上がっているに違いない。

東北巡業、残すところあと1公演だ。



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