11/14(金)『木馬の鼻』本読みWS 第4回 その③ 測量士「計筋」「下水」

2025年11月14日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
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↑2014年秋の上演より(撮影:伏見行介)
「下水(左:演 ヒガシくん)」「計筋(真ん中:演 木下くん)」が
演じてくれました。衣裳が上下関係を表しています


今日も『木馬の鼻』について考えてみます。
どうにも気になる人たちがいる。それは、測量士のふたりです。
「計筋(はかりすじ)」「下水(しもみず)」という風変わりな
名を持つ彼らは、よくよく考えてみると面白い動きをしています。

一幕の箪笥屋において、彼らは「竹子」「市」「谷也」の脅しに
業を煮やして店を飛び出しました。箪笥屋側の三人が、店の土地を
削ったら心中するかもしれないぞ!と脅かすようなアクションを
行ったのです。測量士ふたりは、「会長に言いつけてやるからな!」
と言って店を出た。

しかし、しかし、です。
二幕で彼らが喫茶〈ピサロ〉にやってきたのは、「竹子」「市」の
後なのです。木馬「マチュピチュ」に乗った「谷也」は臆病ゆえに
町内をさまよっているとしても、これは遅すぎます。

だいたい、一測量士たちが勢いよく箪笥屋を飛び出した後、
一幕の最後には「インカ」や「マチュピチュ」を云々する会話が
けっこう長くやりとりされるのです。

ここが面白い。要するに彼らは油を売っていたわけで、
この不誠実さにこそ、唐さんの測量士という存在に対する敵視が
込められていると思うのです。

まあ、測量士の皆さん自体は、行政が都市計画のなかで緊急車両が
通りやすい道路づくりをするなかで、発注を受けて測量をしているに
過ぎません。しかし、まるで土地を奪っていく張本人のように
書かれています。都市計画自体も決して悪いどころか、人々のため
なのですが、自分の土地を削られる側にとっては、理不尽に感じて
しまうわけです。

唐さんは何をルサンチマンしていたのか。考え、演じるたのしみが
「計筋(はかりすじ)」「下水(しもみず)」には込められています。

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