10/16(日) 戦争への想像力(椎野)

2022年10月16日 Posted in 劇団員note
10月16日より唐十郎戯曲を読むワークショップにて
『ベンガルの虎』を読み解きはじめました。
1973年の傑作は、戦争から高度経済成長へと
突き進んでいく日本において唐さんが何を考え、
何を物語として伝えたかったのかを読み解いていく必要がありそうです。
というかそれが、個人的に気になっています。

子供を持ったことで、戦争への自分の想像力は格段に変わりました。
妊っている最中の身体の不調や、不便さ、出産直後からの眠れない日々。
放っておけばすぐに死んでしまう人間の赤ん坊の弱さ。
子供が自分でトイレに行く、自分でご飯を食べるという簡単なことすら
多数の大人が多大な労力と時間をかけなければならない。

そんな子供を戦争に出征させなければならない苦痛。
それが国への役目だと思いこむ。辛いことからの逃亡のような諦念。
身近な人が次々亡くなり、自分も死からそう遠くない場所に
いるという実感。食糧難。ひもじさ。
そして戦争後に生きていくことは綺麗事ではいられないこと。
そんなつらさを振り切るように復興、再建という希望の物語に
身も心も投じていく。

日本はもう「戦争する」という前時代的な過ちはきっと起こさないだろう、
と思っている人もいるかもしれないけれど、そんなことはない。
どんなきっかけで戦争は始まるかはいつもわからない。
人は追い詰められればキュウソネコカミとなるし、
セイテンノヘキレキ的にミサイルが飛んでくるかもしれないし、
大地震、大洪水の自然災害で一気に追い込まれるかもしれない。

「たくましく生きる」と一言で言ってしまうのは簡単だけれど
1日、1時間、1秒の中で苦痛ややりきれなさ感じながら
生きることは容易ではない。しかし、その簡単ではない人生の中に
爆笑することだって、感動することだって、心躍るようなことだって
心燃やすようなことだって起こるのがいいところだ。

人生は簡単じゃないし、不条理なものでもあるが 
楽しいし、希望があるものだ。
と唐さんの作品を読むと思うのです。

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