5/29 劇団員の背中(椎野)

2022年5月29日 Posted in 劇団員note
ワンオペ育児に演劇観劇はなかなかハードルが高いのですが
たくさんの人に助けられながら、幸運にも観劇が続きました。

4月末。津内口淑香さんが出演の『フェアエル、ミスター・チャーリー』
劇場のモギリにして、物語の重大な局面を担う、怪しげな占い師が役どころ。
横浜を舞台にしたお話を横浜で見るというのはかなり生活に密着していて
ニヤリとする。映像が巧みに舞台の演出として使われていて、
疾走感溢れるお洒落なお芝居。
ああ、濱マイクの映画でも久しぶりに見たいなぁと空を見上げました。

5月上旬に行われた米澤剛志くん出演のワンツーワークス『民衆が敵』
自分が非常に狭い演劇世界の中でしか観劇体験を持っていなかったことが
あらわになった作品でした。
私の演劇体験は小学生の時の芸術鑑賞会と大学に入ってからの紅テント。
そう、テント演劇的世界というか、
現実的なものからやや逸脱した過剰な世界観こそ演劇だ、と思っていましたが、
社会的、政治的なテーマを真正面から取り扱った作品は初めてで
自分の器が広がったようでした。
こどもを育てることになってから、社会問題やニュースに対する
自分の視線も随分変わりましたし、よくも悪くも自分の目線でしか
私は世界を見ることができないな、と、強く感じるようになりました。
世界、社会を知るのは今の私には非常に刺激的です。


5月3週目の唐組『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』
静岡SPACにて豪雨の中観劇した『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』の
衝撃体験の記憶が強かったので、改めて、この作品がどんな物語であったかを、
冷静に、そして、噛み締めるように味わいました。
特におちょこという人物の優しさと、
ラストの飛翔にたくさんの希望をもらいました。
想像の中でなら、物語の中でなら、
どこまででも飛んでいくことができるんですね。
紅テントは観客を包み込んでくれる極上の劇空間です。


5月4週目の齋藤亮介くんが舞台監督として奮闘するケダゴロ『세월(セウォル)』
コンテンポラリーダンスの公演。主宰の方は1992年生まれの女性で、
栗本慎一郎さんの『パンツをはいたサル』にインスパイアされ創作された
ソロダンス『オムツをはいたサル』にて頭角をあらわし、近年は
オウム真理教や連合赤軍を扱った作品で国内外から評価を受けています。
、、、というのは公演後にネットで検索した情報であり、
ほぼ事前情報ゼロで観劇にのぞんだ私は、この作品の毒のようなものに
当てられ、およそ1時間の上演時間の中で、セウォル号沈没という
という凄まじい大事故と自分の目の前で起こっている舞台のはざまで、
様々なことに考えや思いを巡らしていました。
また、10数枚の平台がバッタンバッタンと床に打ち鳴らされ、
(沈没を表現したのでしょうか)
そこを踊り手の方が時に踊り、時に走り、飛び越えていく様に
ただただ高揚感も覚えながら、劇場をあとにしました。
そして、今、何事が起こったのか理解したくて、
帰り道、スマホでカタカタと検索しはじめたのです。

4月下旬に開催された林麻子さんが出演した朗読劇『未明の世界』は
残念ながら娘の発熱で観劇が叶いませんでしたが、とても観たかった作品。
朗読において聞き手(観客の皆さん)に景色を想像させることの
難しさと大切さを公演後に林麻子さんと話したのが非常に印象的でした。
林麻子さんは『唐十郎劇中歌ワークショップ』を開講しているのですが
私もワークショップに参加させてもらってます。
的確な指導と本読みのアドバイスで読み手がイキイキとしていくのを
目の当たりにすると、こんな風にしっとりと落ち着いた指導でも
人は輝くものなのだ、と荒々しい昭和スパルタ世代の椎野は
目が開かれたようでした。彼女の才能はここにもあるのです。

6月はちろさんの舞台、映画公開へと続きます。

ゴリゴリと腕を磨き、勝負をしにいっている劇団員の背中は
とにかく輝いています。

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