6/10(月)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第5回(最終回)

2024年6月10日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
_MG_4148.jpg
↑この演目の最後のせりふだけはどうしても"新宿"という場が必要です

昨晩は本読みワークショップ。
『腰巻お仙 振袖火事の巻』の最終回でした。
ということは、2月以来つづけてきた『腰巻お仙』のファイナルでも
あります。『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』のことも振り返り
ながら、完結篇の総括をしました。

読んだ箇所は4幕半ば以降です。
約30ページを駆け足で読んだのですが、そのうち20ページは
なんと『忘却篇』2幕のコピペです。
唐さんがよほどあの場面を気に入っていたものと思われますが、
謎めいたドクター袋小路の秘密を暴こうと床屋と禿の客が
袋小路精神病院に挑み、返り討ちに遭うという展開を見せます。

ただし、『振袖火事の巻』のそれが大きく『忘却篇』と異なるのは、
ドクター袋小路の上位に君臨する「先生」の使者として、看護婦の
アキ・マキがいることがわかる点です。そう。アキ・マキは袋小路の
部下でなく、先生の手下として袋小路を監視する役割を負っており、
ゆえにこそ2幕で名曲『ローハイド』がかかるなか、働きの悪い
袋小路をしばいていたのです。その上で、「先生」の正体が"黒幕"
という以上に進展しないのは、まあ、唐さんのご愛嬌です。

そして、床屋も、客も、袋小路が相打ちで倒れます。
それを静観するアキ・マキの冷静な態度からも、
先ほどの権力構造は明らかです。

次につづく残りの2シーン。

今や、堕胎児・小五郎たちまでもが警察=公の国家権力に
なっています。彼らを慰めてきた仙子の吹く笛が3幕終わりで
破壊されてしまったために、彼らは自立し、娼婦である母を捕らえ、
あるいは、自らも少女を犯して父親を目指す側になったのです。
堕胎児を忘れようとする母・仙子と、
母を忘れようとする堕胎児・小五郎たちの闘い。
連行されかかる仙子は咄嗟に彼らのピストルを引き抜き、
彼らを殺します。そして、自ら子どもたちを殺めてしまったことに
慟哭するのです。

そして、最終場面では、ひとりになった仙子の前に
自衛隊の服を着た芳一が現れます。
芳一は自衛官の道を断たれて尚、私立のハグレ自衛隊として
どこともわからぬ戦地に赴こうとするのです。

数々の悲惨を経て、第一幕終盤の光景が変奏します。
今度は、ふたりは再会を約束します。
もう一度、少年・少女になった彼らは大人の男女になろうとする。
そして、いつか新宿で一緒に暮らそう!と誓い合うのです。

ここには、堕胎児に苛まれながらおぼつかない恋愛に悩む男女が
揃って一皮むけて成長した姿が描かれています。冷静に見つめれば
何の展望もないかに見える二人ですが、とにかく勢いで押し切って
大団円させてしまう言葉と場面のパワーが飛び抜けています。

唐さん自身もまた、機動隊を向こうに回して芝居をやり切ろうと
いう覚悟と、おそらく、前年に大鶴義丹さんが生まれて父親になった
自覚とが溢れていて、それが劇の主人公たちにも胸を張らせるのだと
思います。もう青春残酷物語はおしまい。そういう感じがします。

厳密には、翌々年の『吸血姫(1971年初演)』にも堕胎児は
ちらりと出てきます。しかし、それはテーマというほどのものでは
なくなっています。少年・少女が大人になるための『腰巻お仙』
シリーズを上演するには、私を中心とした唐ゼミ☆メンバーも
年齢を重ね過ぎていますが、今後に例えば、大学生の皆さんと
劇をつくる機会に恵まれたら、取り上げてみたい作品です。
以上、若さゆえの不安とギャグに溢れた『腰巻お仙』シリーズでした。

次回から、7月末に公演する『少女仮面』を取り上げます。

6/3(月)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第4回

2024年6月 3日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
↑出版された本に必ず載っているこの絵。
唐さんが台本に書いたものでしょう!


昨晩の本読みについてレポートします。
読んだ箇所は、3幕後半・4幕前の幕間劇・4幕のさわり、です。

この箇所には、『腰巻お仙』シリーズの定番となった場面が登場します。
3幕の床屋、4幕の袋小路病院。こういったところでは、
場面だけでなく、そこでなされるやりとりもまた前作を受けた
ネタとして繰り広げられます。

床屋が永遠のお客の星型の禿頭を磨いたり、
ドクター袋小路が遊び半分な診断を患者にくだす、
お馴染みのシーンです。他にも繰り広げられるドタバタも含めて、
すごく面白い。ところが、一瞬一瞬のやり取りが面白いほどに、
全体のストーリー、物語進行を忘れてしまう。

ですから、昨日の本読みでは全体の流れを改めて確認しました。
主人公である円谷芳一(つぶらや ほういち)を中心に。

1幕。
芳一は中学を卒業して自衛官になるところ。
後にこの早期教育の理由が、父である床屋が日本帝国海軍出身で、
強烈な軍国主義者だからだと分かる。思いを寄せる仙子との別れ。
が、芳一は、仙子のために一人前の男になる気概に満ちている。

2幕。
一年後。自衛官になった芳一が帰省中に新宿に立ち寄ると、
そこで、街娼となった仙子と再会する。芳一の戸惑いをよそに
仙子は芳一としけ込むが、芳一を待ち受けていたのは、仙子が
これまで堕ろした未熟児たち(明智小五郎を名乗る)だった。
小五郎たちに耳を斬られ、自衛官としての将来を断たれる芳一。

3幕。
芳一の実家の床屋。耳を斬られた芳一は実家で静養中。
息子を立派な軍人にしたかった床屋の嘆きは深い。
旧海軍の仲間として袋小路も訪ねて来ると、禿の客、床屋と
意気投合する。一方、仙子は芳一につきまとう。
仙子や堕胎児にこれ以上、芳一を好きにさせないために、
床屋たちは芳一の体に血縁の文(円谷幸吉の遺書)を書いて
家族とのつながりを身に纏わせ、仙子たちへの結界とする。
自らの家族と、仙子&堕胎児たちの間で、引き裂かれるように
苦しむ芳一。芳一の仙子への想いが仇となり、芳一は堕胎児らの
父となってしまっている。(実際の父親は仙子を買った男たちで
あろう)

4幕前の幕間。
西口おつたの嘆き。おつたは体を悪くし(原因はおそらく性病)、
娼婦をやめてうどん屋になっている。おつたのせりふから、
戦争で弟を亡くしたおつたの身の上が知れる。弟に芳一を重ねる
おつた。
と、チンピラとなった小五郎たちと、ヤクザに身を落とした芳一の
ケンカが繰り広げられる。零落しながらも、仙子への想い、
小五郎たちを捨てた罪悪感に苦しむ芳一(責任感が強すぎる)。

4幕。
袋小路病院にて、どうなるか?


・・・という進行を整理しながらやりました。
どんなふうに大団円するか、来週が最終回です。
かなり爽やかな青春モノとして物語が解決するところが
見どころ。『忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』『振袖火事の巻』、
3作を読むことで見えてくる青春残酷物語とその昇華を味わって
ください。最終回は6/9(日)19:30から!



5/27(月)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第3回

2024年5月27日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
_MG_0097.jpg
↑第3幕の床屋。軍国主義が根強いため戦艦大和の絵が飾ってある

昨晩のWSをレポートします。
読んだ箇所は2幕半ば〜3幕半ば。

1幕で描かれた中学3年の卒業から1年が経ち、
自衛官となった円谷芳一が片桐仙子と再会するのが2幕の主眼です。
しかし、仙子は新宿西口の夜に立つ街娼になっている。
当然、芳一はショックを受けますが、
ポン引きに押し切られ、仙子としけ込むことになります。

そして2幕終盤では、仙子の堕胎児たち=明智小五郎に耳を
切り落とされた姿となって現れます。
まるで耳なし芳一のように、耳を失ってしまった芳一。

ここで面白いのは、仙子がこれまで堕ろしてきた堕胎児たちの群れに
とって、肉体関係が未遂の芳一が父親にされてしまっている点です。
時間的な厳密さを以ってすればこれはおかしいわけですが、
小五郎たちにとってみれば仙子と寝ようとするすべての男が潜在的な
父親になってしまう。この逆転がユニークです。

あるいは、もっと単純に考えても、堕胎児たちなりに、
母を犯そうとするすべての男から母を守った、そうともいえます。

いずれにせよ、芳一は耳を失ってしまった。
身体に負った障害は自衛官として致命的です。
こうして2幕が終わります。

3幕は『腰巻お仙』シリーズ名物の「床屋」という設定です。
ただし、この演目では細かな設定がもうけられ、この床屋は
芳一の実家ということになっています。
つまり、円谷理髪店とでもいいましょうか。

芳一のお父さんの床屋は元日本軍という経歴で、
戦艦大和の乗組員として生き残ったという過去の持ち主です。
軍国主義の家風が濃く、そのために芳一を中学卒業と同時に自衛隊に
入隊させたという背景もまた、この第3幕により明らかになります。

そのような背景があるので、芳一が耳を失ったことはとりわけ
ショックであることを前提3幕が展開していきます。

・・・という進行でした。

昨日読んだシーンには、看護婦の姉妹アキ&マキとドクター袋小路に
よるSMショーまがいのミュージカルシーンなど、メインストーリーを
撹乱する面白シーンがたくさんあるのですが、筋を見失わないために
ほどほどにしておきましょう。

次回、物語の本筋は「耳なし芳一」のパロディシーンに進みます。
6/2の開催!

5/21(火)『腰巻お仙 振袖火事の巻』本読みWS 第2回

2024年5月21日 Posted in 中野WS『腰巻お仙 振袖火事の巻』
_MG_0003.jpg
↑2016年10月 唐ゼミ☆公演より1幕の終わり。これぞ青春!
真剣につくるほど、どこか可笑しなシーンでした


一昨日の本読みWSの内容をレポートします。
読んだ箇所は1幕の終わりから2幕の中ほどまで。
中学3年生の終わりにそれぞれの進路に進んだ男女が
一年を経て再会するくだりです。
円谷芳一は駆け出しの自衛官として。
仙子は夜の新宿西口に立つ娼婦として。

1幕の終わり、お別れの時が迫った二人がもじもじと天気の話を
しながら、突如、仙子が芳一に迫るところは、まさしく青春を
象徴する見せ場です。芳一少年は子どもで奥手であり、
少女・仙子は人知れず過酷を背負って追い詰められ、
心情を吐白します。このあたりのすれ違い。

二幕になって、『てなもんや三度笠』調に、
堕胎児=明智小五郎が、持ち前の探偵力を駆使して母を求め、
さらにポン引きと西口おつた、おつたに引っかかった
サラリーマンが登場する箇所は、可笑しくて哀しい
喜劇の常道をいっています。

そして、芳一と仙子は先ほど冒頭でお伝えした再会を果たす。
一筋縄ではいかない再会ですが、ふたりのこれからの道行を
追いながら、物語は進みます。次回は5/26(日)。

・・・と、こうして皆さんと台本を読んでいると、
唐さんが亡くなったことにショックを受けているもの同士、
慰められるような実感があります。ありがたいことです。
とびきり面白くてユーモラスだった唐さんの話を、
これからも続けていきましょう!