1/15(月)『鐵假面』本読みWS 第6回

2024年1月15日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑町の人々のせりふに出てくる小説『エミリーに薔薇を』です。
これは中公文庫版。あっという間に読めて、腐乱した死体の出てくる、
けれども美しい物語です。参加者の皆さんはぜひ!


昨晩は今年2回目の本読みワークショップ。
12月にスタートした『鐵假面』の本読みは2幕の中ほどに
進んでいます。

1幕の公衆便所が見世物小屋に改造され、
姉の元夫を殺してその首をボストンバッグに詰め込んだ姉妹は、
今では見世物小屋の蛇女として働いています。

そこで、劇中劇的に殺人に至った過去の様子を展開したのが前回の
パートでした。そして昨日は、その続き。

主眼としては2トピックです。

一つには、水商売-殺人といったゲスな存在だからこそ
妹スイ子に惚れ込む味代と小屋主(公園課職員)の問答。
そして、ボストンバッグから漂う腐臭がますます強まり、
その悪臭を問題視する町内住民たちが押しかけてめいめいの
主張を好き放題にぶつける。
そういう2場面です。

小屋主と味代の問答は、小屋主の座長としての苦悩に満ちています。
スイ子のパトロンに名乗りを上げた味代に対し、
小屋主はチャンスと見て、自分のパトロンにもなってくれるよう頼みます。

しかし、当然ながら味代の関心はスイ子のみにあるわけで、
小屋主はふられます。そして、小屋の経営の苦しみが吐白されます。
これは初演時に、座長となって約10年を迎えつつあった唐さんによる
心情告白に他ならず、笑いの中に異常なリアリティがあります。

座長とは、劇団の真ん中にいて威張っているよう見えて、
一人一人去ってゆく団員たちを見送るひがみ亡者にすぎない、
などという具合。当時の唐さんの苦労や心情が如実に開陳されていて、
それがリアルであり、コミカルでもありま展開されていきます。

一転。町の面々が押しかける場面になると、
これはもう唐さんが得意な大騒ぎの時間です。
何人もの人々が押し寄せ、てんでバラバラに好き勝手を言い、
あっという間に去っていく。その中で浮かび上がるのは
今や、殺された男の首の腐乱する匂いが全町内を覆っている事実です。

中でも、町内会を率いて現れる警官の正体は、
実はかの名探偵・明智小五郎という設定であり、彼によって
味代もまた、怪人二十面相が更生して企業に就職した姿と知れます。

そして、自分が確固たる存在でなく、
怪人二十面相がいてこそ初めて明智として立つことができると悟った
明智は、自分が受け身の存在、つまり男性に対する女性のようなものと
妄想をエスカレートさせ、スカートをはいた刑事としてデビューし、
皆を置き去りにして去ります。

2幕中盤で放り込まれたカオス。

楽しく、ナンセンスで、でも、よくよく考えると
物語の全体のために、世界を覆う腐臭と、法令遵守する側の虚無感を
訴えるという意味で、強い伏線を張るパートだとも言えます。

法令遵守がなぜ虚無なのか。
それは、この後の裁判シーンを待たなければなりません。

昨晩はとにかく楽しいシーンでしたから、参加の皆さんによる
総動員体制で愉しみました。唐ゼミ☆本体の稽古を始めていますので、
お客様用のWSのさなかにも多くの発見があり、
こちらも学びや閃きを得てメモをとったりしています。
ありがたい!

次回は1/21(日)です!

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