2/14(水)『鐵假面』本読みWS 最終回 その②

2024年2月14日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑今日は私の誕生日だったので、丸山雄也くんがケーキを買ってきて
くれました。おいしさもさることながら、カットケーキを一個買って
立派な箱に詰めてきてくれたのに感激しました。お店の方は、あるいは
少し迷惑だったかも知れません。でも、そうするところが雄也くんの
気持ちだし、店員さんもプロだったのだろうと思います。感謝!


昨日の続きです。
『鐵假面』WSの最終回ではもう一つのエンディングも取り上げました。
というのも、この台本にはバージョンの違った終幕があるからです。

もともと、雑誌「海」に掲載されたもの。
それから、状況劇場による初演を経て『二都物語』とセットで
新潮社から単行本化されたもの。この二つのバージョンで
最後の4ページの内容が違う。

単行本バージョンでは、タタミ屋に刺される相手が違います。
スイ子と結婚しようとした味の素の部長・味代が刺される。

これは、昨日に紹介した「海」バージョンよりコミカルな
展開です。味代が刺されるのは、初演を唐さんが演じたことと
併せて考えてみるとなんとなくコミカルです。

が、その後が問題です。
犯罪者となったタタミ屋をスイ子が森へと誘う展開は同じなのですが、
そのスイ子をめった打ちにする叔父さんの激しさが格段に増している。
さらに、タタミ屋はなぜか、スイ子が打ちすえられる姿を見て
笑うのです。この笑いは何なのか。

さっきまで思い入れていたヒロインに主人公がここまで残酷に
なれるものなのか。それとも、笑い、というのは嬉しさだけでなく、
真逆の感情がゆきすぎて笑うしか無くなってしまったのか。

巨大な謎、ブラックホールのような闇を残してこの劇は終わります。
最後に紙芝居屋が来て、「夢から醒めろ」と言って終わるのは一緒。
しかし、後味の悪さ、カオスの度合い、そういうものが
単行本バージョンでは増しています。

初演前に雑誌掲載されたものと初演後に単行本化された内容が
違うことはままあります。けれど、ここまでの変化は珍しい。
だから、皆さんと一緒に読み、どこがどう違って、そのことで
テーマの進行がどのように異なり、どちらが好みかを考えました。

このことは、実際に唐ゼミ☆での上演に際しても
最後に選択する大きな問題になるでしょう。
そういう課題もはらんだ『鐵假面』最終回でした。

次回から『腰巻お仙』リリーズがスタートします。
「忘却篇』『義理人情いろはにほへと篇』『振袖火事の巻』を
一気に読もうというこの企画。のべ4ヶ月くらいかかりますが、
アンダーグラウンド演劇好きにはたまらない時間になるはずです。

我ながら、これはすごい。
ついてくる参加者がすごいと思います。
血みどろのアングラのようでいて、ライトな笑いに溢れた
このシリーズをやることで、20代後半の唐十郎を発見しましょう!
2/18(日)からスタート。


2/13(火)『鐵假面』本読みWS 最終回 その①

2024年2月13日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑唐ゼミ☆は2幕を稽古しています。そろそろ疲れが溜まってきました。
ここを押し切って最後までいけば、次の景色が見えてきます

昨日はすっかりWSのレポートを忘れていましたが、
2/11(日)は『鐵假面』本読みの10回目、最終回でした。

読んだ箇所は最後の10ページ。
鉄仮面裁判の結末から、味代がスイ子にプロポーズしてジャワ行きを宣言。
そこから雪崩れを打ってカタストロフィが展開し、結末に至ります。

まず、裁判の判決はスイ子に有罪を与えるものでした。
真相はどうあれ、遊び半分で姉テル子によるトビ職殺しをそそのかし、
ボストンバッグに首を入れて腐臭をばら撒いた罪が確定します。
淫乱全開のスイ子は、町中の鉄仮面の夜伽を命じられます。
それが、鉄仮面全員との結婚式に発展する。

それに待ったをかけたのが味代でした。
彼はスイ子が下等でゲスになっていくほど喜びを覚えるものの、
いざ鉄仮面たちとの結婚となるとこれに反対し、自分との婚姻を
宣言します。商社員の妻となり、東南アジアで現地の男性相手に
唐行をしながら夫婦関係を結ぼうと奇体な提案をし、
スイ子はそれを面白がって受け入れます。

鉄仮面たちがそれに呼応して仮面を脱ぎ捨てると、
実は味の素の社員であったことがわかり、叔父さんは孤独に
苛まれます。戦下で自由を奪われたかつての仲間たちを鉄仮面と呼び、
その仮面を叩き割って自由を与えようとしていたおじさんは、
いざ彼らが戦後日本の経済戦士になるに至って不満を覚えます。

自由を求めながらも、いざそれが実現すると反発する。
叔父さんのこのあたりの生理はなかなか読ませます。

さて、今度は味代と結婚しようとするスイ子を、タタミ屋が刺します。
いつの間にかフルートが剣に変わり、それでスイ子を刺す。

するとスイ子は、タタミ屋を森へと誘います。
自分が刺されたとはいえ、犯罪を犯したタタミ屋には、
自分と同じ道を歩む資格があるということでしょう。
タタミ屋はスイ子を刺すことで大人の男になりつつあるとも言えます。
が、タタミ屋をドロップアウトさせたスイ子を叔父は許さず、
スイ子をハンマーで滅多打ちにします。

悪夢のような光景に慄然とするタタミ屋を、紙芝居屋が殴りつけて
この劇は終わります。「夢から覚めるんだ」という紙芝居屋の怒声が
響くなか、鉄仮面たちの顔が並びます。謎めいて居並ぶ仮面たち。

何者かになろうとしてなれなかったタタミ屋よりも、
物言わぬ鉄仮面たちの不気味さが光ります。

唐さんが書いた初めてのバッドエンドです。陶酔より覚醒。
それがこの『鐵假面』の終幕です。観客は戸惑ったことでしょう。
しかし、この戸惑いこそが作者の狙いなのです。
そして何より、そこに居並ぶ鉄仮面たちの物言わぬ表情。

明日は日曜に読んだ別バージョンのエンディングも紹介します。

2/6(火)『鐵假面』本読みWS 第9回

2024年2月 6日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑雪に備え、短時間集中して早く帰宅する稽古もホットに進行しています!

一昨日、2/4(日)の晩に行った本読みワークショップのレポートです。

この回もう、全編のなかで一番重要なせりふ、
と私が考えていることばが現れるシーンで、クライマックス!
という実感がありました。

鉄仮面裁判中に揺れ動くスイ子とタタミ屋の心理と対話を
丹念に追いながら、彼らを取り巻く叔父さん、味代、
鉄仮面たちがどのように動くのかを検証していき、
その果てに現れるスイ子の内なる叫びに耳を傾ける回でした。

鉄仮面裁判は相変わらずわかりにくいのですが、

タタミ屋(検事)・・・スイ子に清純派ヒロインであってほしい
スイ子(被告)・・・性的にも解放された自由な人間でありたい
味代(弁護士)・・・下司であるほどスイ子を美しく感じる
叔父さん(裁判長)・・・タタミ屋の味方であるも、スイ子に
            鉄仮面たちの慰安を担わせたい
鉄仮面(裁判員&傍聴人)・・・自分たちを慰めてくれるスイ子に期待

という、それぞれのスタンスを見失わなければ、細部の意味、
せりふの意図もクリアになり、読み、演じる上で迷子にならずにすみます。

タタミ屋のスイ子に対する迫り方は、
火の粉を振り払いながら強気に生きてきたスイ子自身に被害者的な
意識を押し付けるものでもあり、それをスイ子は受け入れません。
受け入れるどころか、激しく突っぱねる、そして、より露悪的に
振る舞う。

そういうなかから、世間に揉まれながらも奔放に生きてきた
スイ子の虚無感やテル子の情夫への思い、そういったすべてを
しがらみに感じる自由への渇望が溢れ出てくる、という回でした。

 個々のせりふをあげるのは、レポートとはいえ今回は野暮なので、
それは自分で発見したり、唐ゼミ☆の公演を観てください。

これは唐十郎のほんとうの凄みだ!
そういう確信を得られる展開、せりふが現れた回でした。
次回は2/11(日)。唐さんの84歳のお誕生日にWSの『鐵假面』は
完結します。二つのパターンのラストシーンも追います!

1/26(金)写真展2日目と『鐵假面』本読みWS 第8回

2024年1月26日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑『青頭巾』で演じた「ガセ象」役の写真の前でパチリ。重村大介くん

本日は齋藤が写真展当番で、元唐ゼミ☆劇団員で
現在は唐組の重村大介くんや、『鐵假面』に出演してくれている
平泳ぎ本店の松本一歩くんが来てくれたらしい。
まことにありがたいことです。

他方、こちらは横浜で一日仕事をして、
それから夜には本読みWSを行いました。
本来ならば日曜日行うものですが、今週末は写真展の
ギャラリートークがあり、振り替えたというわけです。
金曜夜にも関わらず、いつもの皆さんにご参加いただきました。

特に取り組んだ箇所は、鉄仮面裁判の序盤です。

タタミ屋によれば、自分は子どもの頃に谷中の墓地で怪我した
ところをスイ子に助けられ、しかも、直後に治療薬のドクダミ草を
取りに行ったスイ子は、大勢の男たちに襲われてしまったらしい。

タタミ屋はそういう記憶を目の前の千羽スイ子に重ねますが、
彼女は頑として、それは自分ではないと拒否します。

一方で、スイ子自身の思い出の中にも大勢の男たちに襲われた経験が
あって、微妙に重なりながら、完全な一致は見ないというチグハグさで
裁判は進みます。

この際、わかりにくいのは、
タタミ屋は自分の記憶に沿わないスイ子を糾弾する検事であり、
スイ子は被告、味代は弁護士、リュックサックを背負った叔父さんが
裁判官、新たに登場した鉄仮面の群れは傍聴人であり、裁判員でもである
ということです。

群れなして現れた鉄仮面のおどろおどろしさ。
一転、子どもっぽい身振りで首を振ったりして可愛らしい鉄仮面。
さらに、さまざまなギャグが散りばめられて裁判の序盤は無駄話
ばかり繰り広げられ、それらが結構おもしろい。

だからこそ、青年主人公がヒロインを攻める構図と原因が
分かりにくくなってしまい、何を争点にして裁判が行われているか
見失いがちなのが、この場面で面白く、また難しいところでもあります。

スイ子が延々語り始めた夏の思い出は、
青春期独特の虚無感に満ちており、自分が海の上のヨットで
男たちにたらい回しにされ、復讐にヨットを燃やした激しさも、
どこか投げやりです。ここは特に、唐さんの情景描写力が光るところで、
映画『八月の濡れた砂』や石原慎太郎の小説『完全な遊戯』を思わせます。

WS参加の皆さんには、それぞれの方が裁判を傍聴した話や、
男性として、女性として、タタミ屋やスイ子の感じ方をどう思うか伺いながら
本を読みました。あと2回で『鐵假面』もおしまいです。

スイ子とタタミ屋のボタンの掛け違いがエスカレートしていく結末を
丁寧に追っていきましょう。次回は2/4(日)!

1/22(月)『鐵假面』本読みWS 第7回

2024年1月22日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑やはり明智小五郎といえば天知茂。が、唐さん流の明智はスカートを
はいて二十面相に抱かれたい乙女チックな小五郎となる
天知さんがやってくれたら、さぞ面白かっただろうなあ


昨晩は本読みWS。今日は『鐵假面』第7回目のレポートです。
読んだのは次の3つのトピックです。

①ポリスマン率いる町の人々の場面
②タタミ屋が『少年王者』妄想を爆発させてスイ子を訪ねてくる場面
③鉄仮面の群れが登場しての、鉄仮面裁判の前段

まずは①から。

①ポリスマン率いる町の人々の場面
ここは先週やったシーンなのですが、先週は初めてで
騒がしく楽しい場面、という要素をひたすら追いかけました。
そこで、ちょっと冷静になって特にこの場面の後半を読み解きました。

重要なのは、正義があって悪があるのではなく、
悪があって初めて正義が成立するのだ、という論理をポリスマンが
開陳するところです。つまり、悪は正義に先行し、
ゆえに犯罪はこれを肯定的に捉えてみようじゃないか、
という考え方です。実にこの芝居を最後まで読み解いてゆくと、
この価値観が大事な役割を果たすことに気づきます。

その上で、かつては明智小五郎だった警官がスカートはいた
女性になって、怪人二十面相たる味代に迫り、フラれるという
流れに入ります。フラれてヤケを起こす警官の楽しさを
味わい尽くしました。警察とは、犯罪者に憧れ、惚れ込む
女のようなもの、という唐十郎流の大胆な考えがここに
炸裂します。


②タタミ屋が『少年王者』妄想を爆発させてスイ子を訪ねてくる場面
2幕にほとんど登場してこなかったタタミ屋がやってきます。
正確には、インサートシーンで叔父さんと鉄仮面割り修行に
励む姿が描かれましたが、本格的には、中盤を過ぎてようやく登場
という珍しい主人公です。そしてここからが問題。

彼は見世物小屋に「スイ子」という名の女性がいると知ってやって
きたのですが、要するに『少年王者』フリークの彼は、物語のヒロイン
の名前と同じ女性をつけ回す癖があるのです。

結果、稲妻姉妹の妹「千羽スイ子」に付きまとい、
自分の理想の女性を投影しようとする姿は、かなり痛い。
モノマニヤ、というふうにスイ子に気味悪がられますが、その通り、
圧倒的な偏執狂ぶりです。

1幕でさんざん問題にしていた公衆トイレの落書き「有志来たれ」は
物語が始まるに際して原動力ともなったフレーズですが、これ自体、
タタミ屋の自作自演と知れるせりふも見逃せません。

こういうところをめざとく見つけてツッコミを入れつつ味わう。
唐さんの台本を楽しむコツです。

③鉄仮面の群れが登場しての、鉄仮面裁判の前段
そしていよいよ鉄仮面の群れが登場しますが、これがまたひどい。
タタミ屋によれば、かつて谷中の墓地で『少年王者』ごっこをしていた
タタミ屋が怪我をした時、親切に解放してくれた女性を集団レイプ
したのが、彼ら鉄仮面たちだというのです。

かなりハードコアな設定ですが、その割に実際に登場した鉄仮面たちは
ゆるキャラ系で、どう見て良いのか迷子になりそうです。
ここはひとつ、非道なところは非道に、ユルいところは徹底して
遊ぶことで、ますますその支離滅裂さに拍車をかけるのが良いでしょう。


という具体に、昨日は3トピック。
あと3回で完結というペースで進めています。
次回は変速で1/26(金)の夜に!

1/15(月)『鐵假面』本読みWS 第6回

2024年1月15日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑町の人々のせりふに出てくる小説『エミリーに薔薇を』です。
これは中公文庫版。あっという間に読めて、腐乱した死体の出てくる、
けれども美しい物語です。参加者の皆さんはぜひ!


昨晩は今年2回目の本読みワークショップ。
12月にスタートした『鐵假面』の本読みは2幕の中ほどに
進んでいます。

1幕の公衆便所が見世物小屋に改造され、
姉の元夫を殺してその首をボストンバッグに詰め込んだ姉妹は、
今では見世物小屋の蛇女として働いています。

そこで、劇中劇的に殺人に至った過去の様子を展開したのが前回の
パートでした。そして昨日は、その続き。

主眼としては2トピックです。

一つには、水商売-殺人といったゲスな存在だからこそ
妹スイ子に惚れ込む味代と小屋主(公園課職員)の問答。
そして、ボストンバッグから漂う腐臭がますます強まり、
その悪臭を問題視する町内住民たちが押しかけてめいめいの
主張を好き放題にぶつける。
そういう2場面です。

小屋主と味代の問答は、小屋主の座長としての苦悩に満ちています。
スイ子のパトロンに名乗りを上げた味代に対し、
小屋主はチャンスと見て、自分のパトロンにもなってくれるよう頼みます。

しかし、当然ながら味代の関心はスイ子のみにあるわけで、
小屋主はふられます。そして、小屋の経営の苦しみが吐白されます。
これは初演時に、座長となって約10年を迎えつつあった唐さんによる
心情告白に他ならず、笑いの中に異常なリアリティがあります。

座長とは、劇団の真ん中にいて威張っているよう見えて、
一人一人去ってゆく団員たちを見送るひがみ亡者にすぎない、
などという具合。当時の唐さんの苦労や心情が如実に開陳されていて、
それがリアルであり、コミカルでもありま展開されていきます。

一転。町の面々が押しかける場面になると、
これはもう唐さんが得意な大騒ぎの時間です。
何人もの人々が押し寄せ、てんでバラバラに好き勝手を言い、
あっという間に去っていく。その中で浮かび上がるのは
今や、殺された男の首の腐乱する匂いが全町内を覆っている事実です。

中でも、町内会を率いて現れる警官の正体は、
実はかの名探偵・明智小五郎という設定であり、彼によって
味代もまた、怪人二十面相が更生して企業に就職した姿と知れます。

そして、自分が確固たる存在でなく、
怪人二十面相がいてこそ初めて明智として立つことができると悟った
明智は、自分が受け身の存在、つまり男性に対する女性のようなものと
妄想をエスカレートさせ、スカートをはいた刑事としてデビューし、
皆を置き去りにして去ります。

2幕中盤で放り込まれたカオス。

楽しく、ナンセンスで、でも、よくよく考えると
物語の全体のために、世界を覆う腐臭と、法令遵守する側の虚無感を
訴えるという意味で、強い伏線を張るパートだとも言えます。

法令遵守がなぜ虚無なのか。
それは、この後の裁判シーンを待たなければなりません。

昨晩はとにかく楽しいシーンでしたから、参加の皆さんによる
総動員体制で愉しみました。唐ゼミ☆本体の稽古を始めていますので、
お客様用のWSのさなかにも多くの発見があり、
こちらも学びや閃きを得てメモをとったりしています。
ありがたい!

次回は1/21(日)です!

1/8(祝月)『鐵假面』本読みWS 第5回

2024年1月 8日 Posted in 中野WS『鐵假面』

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↑包丁を使って突発的に起きた刃傷沙汰。ベタですが、

ベタだからこそ唐十郎作品のなかで物語への導入になってくれます



昨日は本読みWS。

年始の3連休の真ん中でしたが、12月より続けてきた『鐵假面』を

追いかけています。年末に1幕を読み切ったので、現在は2幕。


2幕冒頭は押し出しが勝負です。

1幕の終わりでついに姉妹がボストン・バッグに隠してきた

情夫の首が登場し、場面を震撼させました。


あれからどうなったのか!?

と観客に気にならせておいて、2幕はいきなり、

公衆便所が見世物小屋に改造されている、という趣向です。


そこで姉妹はそれぞれに芸を披露するのを強要されている。

公園課の職員が見世物小屋の主となり、姉・テル子には蛇女を

妹・スイ子にはフラメンコをさせている。そういう光景です。


二人は殺人者として弱みを握られてしまったのかも知れません。

いずれにせよ、そういう境涯に置かれているところに、

殺人も含めたスイ子の下司さに惚れ込んだ味の素社の味代部長が

通いつけている。という具合にシーンが続きます。


姉・テル子のお腹には子どもがいるらしく、つわりがひどい。

酸っぱいものを欲しがるテル子に、味代は金にまかせて季節外れの

夏みかんを与え、スイ子に恩を売りながら口説こうとする。


と、そこへ、回想シーンがやってきます。

稲妻姉妹がどうやって大阪で暮らし、姉の情夫を殺すに至ったのか。

それが再現される場面。要するに愁嘆場です。


情夫はテル子の元夫であり、しかも2度目の結婚であるらしいことが

彼女のせりふから分かります。情夫は元・鳶職で、それなりに腕が

たち、誇りのある人物だったらしいのですが、ある時に高所から

落ちて腰を怪我し、それからは鳶職ができなくなったしまった。

ここから彼の転落が始まります。


働きにも出ず、麻雀ばかりするようになった。

あとはお定まりのコースです。女房であるテル子のヒモとなり、

夫婦別れした後も、テル子がルームシェアをしたスイ子との

共同生活にも転がり込んで、金を無心する。


それでも元夫を捨てられず、妊娠までしてしまっているのが

テル子の性でもあるわけですが、暴力をふるう情夫に耐えかねて、

テル子とスイ子は情夫を殺し、彼を鉄仮面とあだ名している。

そういうことが丸ごとわかってくるシーン展開でした。


シーンの前後に、これは味代が率いる味の素軍団の仕業と

知れますが、この劇中劇こそ唐版『鐵假面』のエピソード・ゼロ

であり、巷にあふれたメロドラマの愁嘆場であることから、

観客にとっても演じる側にとっても、まさに物語への入り口に

なるシーンです。


唐作品にはこのパターンが非常に多い。

ポーンと1幕で突飛な設定や登場人物を繰り出しておいて観客を

驚かせ、2幕序盤で裏付けを与えて感情移入させるいき方です。


昨年秋に唐組が上演した『糸女郎』。

ヒロインが代理母に挑むことになった理由である天竜川の決壊と

絹織物工場の崩壊が語られるのは、実に2幕序盤でした。


『唐版 風の又三郎』において、

物語の発端となる高田三郎三曹におる自衛隊機の乗り逃げが

まざまざと語られるのも、やはり2幕の序盤です。


自分も好きなパートです。

これまで、お客さんの前でめくるめく展開してきた場面や人物の

やり取りが、ここでピタッときたら嬉しい。味わいのある、

スタンダードに良い芝居をする腕の見せどころです。

こういう場面は、人として、舞台人として、キャリアを重ねるほどに

良くなる。ワークショップ参加の皆さんも、大いに人生を発揮して

くれました。続きは来週の日曜日、1/14です。

12/26(火)『鐵假面』本読みWS 第4回 その②

2023年12月26日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑20世紀フランスの生んだ天才フルート奏者
ジャン=ピエール・ランパルの田園幻想曲に唐さんも惚れ込み、
叔父さんにフルートを持たせたようです


いよいよ1幕も大詰めです。

乞食たちが、実は味の素社の社員たちだったと知れると、
そこで中年男(子連れ狼風)や公園課職員が乱入、
皆がイナヅマ姉妹を怪しみます。
しかも、大事そうに抱えたボストンバッグから何やら血が滴っている。

持ち堪えきれなくなった姉妹がバッグの中を覗くと、
中に隠したはずの首がなく、妹は「鉄仮面」と叫びます。

と、トイレの奥が赤く光り、鍛冶屋のような灯りの中で
ハンマーを振るう男が現れます。彼こそ、タタミ屋の叔父さんであり、
戦後、大陸から復員してきた姿そのままに鉄仮面を被せらせた者たちを
救い出してやろうと、この公衆トイレの奥で仮面を割り続けてきたのです。

思わず駆け寄るタタミ屋。

この、叔父さんの行動は謎に満ちていますが、
実は、彼の働きは戦時下で亡くなっていった戦友たちに捧げられている
ことが、せりふの端々から見て取れます。

大陸で、物言わぬ兵士として個としての生き方を奪われ、
亡くなっていった仲間たちを、おじさんは鉄仮面になぞらえます。
だから、彼は、亡き友人たちの魂の解放を願って、仮面を割ろうとする。

不気味、乱暴、暴力的に見えますが、よく読めば
叔父さんのこうした振る舞いは、戦後民主主義に則っています。
「女の髪が巻き付いた長い長い物差し」というせりふからは、
人骨が単なるモノとして処分された戦時下の過酷が浮かび上がり、
復員して尚、仲間たちの魂とともにあり続ける叔父さんの生き方が
見えてきます。
彼がフリュートで吹く『田園幻想曲』は、鎮魂のためのものなのです。

死の匂いが立ち込めました。ここでようやく姉妹の抱える首が登場です。
タタミ屋はボストンバッグの奪い合いのさ中にこれを発見し、
トイレの奥に首を隠していました。ようやく現れた、姉の亡き情夫の首。

なぜ姉妹は放浪の身なのか。なぜ公衆トイレで身支度をし、
なぜトイレの中に鬘を隠していたのか。なぜ、味の素社の若手社員から
車を借りて、そのままどこかへいく必要があったのか。
すべてこの首のためだったのです。

ということが明らされたところで、1幕は終了です。
続きの2幕は1/7(日)から再開します!

12/25(月)『鐵假面』本読みWS 第4回 その①

2023年12月25日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑なんとか全編を見たいのですが、手に入らず・・・

昨晩は年内最後の本読みWSでした。
読んだのは1幕終盤の約20ページ。

今回も際立った場面の連続なので、2日間かけてレポートします。


乞食たちとの争いから何とかボストンバッグを守りきったタタミ屋。
しかし、姉妹の妹・スイ子は彼に対して冷淡な態度を取り続けます。

そこへ、おしろい婆アと紙芝居屋の親子がやってくる。

息子である紙芝居屋の静止にもかかわらず、
婆アは自ら「蟻の街のマリア」を標榜し、高齢にも関わらず
食い詰めた男たちに色気まで振りまこうとします。

この元ネタは、
戦後、隅田公園周辺にあった廃品回収業の集落=通称:蟻の街で
社会奉仕家として有名だった北原怜子(きたはら さとこ)。
キリスト教徒だったことから「蟻の街のマリア」と呼ばれた女性です。

「蟻の街のマリア」に憧れ、しかも街娼のように振る舞う婆アを
止めようと、息子である紙芝居屋は彼女を木の枝で打ちます。
そんな愁嘆場ととともに次のシーンへ。

そこへ、味の素社の若手社員が現れ、ホステスの姉妹ふたりと絡みます。
エリート社員風を吹かせてイケイケの若手社員でしたが、
公衆トイレの中で乞食たちに出会うと態度が一変。

それまで乞食に扮していた者たちは、
実は味の素社の社員たちであり、群れを率いる乞食の頭領こそは
部長の味代(あじしろ)と知れます。

彼らはアジアの旨味調味料たるグルタミン酸ナトリウム=味の素の
社員だけあり、凋落していくであろう西欧を見切り、
アジア圏への進出に注目。アジアの根源はカオスたる"泥"にある!
と見定めて、日夜、乞食に化けて泥の研究に励んでいたのです。

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↑懐かしき「味の素」の容器。後にアジアを席巻!

この味代。彼の見せ場はまさに
乞食に変装していた男の変身シーンであり、初演時に唐さんが
演じたことも考え合わせれば、大ウケだったのが容易に想像できます。
そして勘の良い方ならば、2003年初演の『泥人魚』で唐さんが
演じた伊藤静雄こそ、その応用であると気づくはずです。

あの時も、オムツに巨大なウンコをつけたボケ老人が,
時計が20:00の鐘を打つとあっという間にタキシードの
ダンディに変わるという趣向でした。

約30年の時を経て必勝パターンを繰り返す唐さんを思い出しつつ。
続きは明日!

12/20(水)『鐵假面』本読みWS 第3回 その③

2023年12月20日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑日常から、すぐに撮影プランを閃いた勝新太郎さんみたいな公園課職員
という感じで、この役をとらえています


第3回の本読みはほんとうに充実していたので、
これまでで最長、3回のゼミログをレポートに充てることになりました。
それだけ内容充実。32歳当時の唐さんの好調ぶりを感じます。

日曜に行ったWSのうち、終盤に登場したのは公園課の職員でした。

乞食の群れとタタミ屋がボストンバッグ(生首入り)を巡って争って
いる間、トイレの外にいる姉妹のもとに公園課の職員が巡回で
やってきます。この、常識的な存在であるはずの役人が極めて
ユニークな人物であったことから、三者の短いシーンが
異様な膨らみを見せる。それがこの場面の醍醐味です。

この公園課職員はかなり芸術家肌で、
すぐにインスピレーションに駆られては、まるで気鋭の映画監督の
ように自分に去来した場面展開を、それこそ撮影プランを語るように
まくし立てます。

例えば、
ホステスがトイレの上に腰掛けで酔い覚ましをしている。
これだけで、彼には、このホステスの背景、酒場での情景がありありと
浮かび、脳裏に閃いたアイディアを滔々と語る。

また、尾崎紅葉の『金色夜叉』をヒントに、
有名な貫一お宮@熱海の浜辺の場面、あの高歯の下駄での蹴り上げ
シーンについて、実は貫一の蹴りはお宮にヒットしておらず、
貫一はフェミニストよろしく下駄を空振りしたのだという新説を力説。

さらに、「下駄」といえば「スリッパ」という履き物の連想に
駆られた公園課職員は、近所の医者が情夫の看護婦をスリッパで
叩いては痛ぶるという、まるで日活ロマンポルノのような
妄想にとらわれ、その様子を克明に語ってみせるのです。

・・・という妄想3連発をわずか2ページ余りで展開するという
唐さんの荒技。姉妹に誰かと問われやっと「公園課の職員」を名乗る
ところなど、彼の語ってきた妄想に比べ、あまりに常識的な
彼の肩書きの落差が読む者(観客)を笑わせます。

と、ここ3日間を前回のレポートに費やしました。
それだけカオティックだということです。

当時の唐さんの頭に渦巻いた情報量は伊達ではないということを
確認しつつ、次回、年内最後の本読みは12/24(日)夜に行います。
嗚呼、なかなかのクリスマスイヴ。

12/19(火)『鐵假面』本読みWS 第3回 その②

2023年12月19日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑中濱鐡の「祖国と自由獄月号」。さすがのタイトル付。
当時の唐さんが右左を問わず激烈な人物たちに惹かれていたのが
分かります


一昨日に行った本読みWS。
大事な中年男のシーンの後、姉妹に乞食たちが絡み、
彼らの言い合いはボストンバッグの奪い合いに発展します。

このボストンバッグの中身は物語の進行上、
いまだ明らかにはされていないものの、二人が殺した姉の情夫の首が
入っているわけですから、姉妹とすれば必死です。

他方、まさか人間の首が入っているとは口が裂けても言えない
妹が中身を「鉄仮面」と呼んだことから、これが乞食たちの興味を
引いてしまう。結果的にバッグの奪い合いに発展するという
物語の流れです。

この対立のさなか、内気なタタミ屋が必死に女性二人をかばい、
乞食たちと渡り合おうと挑むところも見せ場のひとつです。
そのなけなしの勇気!

「お前は誰だ?」と問わせて「タタミ屋です」と答えさせる。
タタミ屋が必死な分、タタミ屋という響きはどこか間抜けです。
この唐さんのセンス。真剣かつコミカルなところが唐さんの真骨頂。

乞食たちが大事にする「黒パン」をキーワードに、
20世紀初頭を生きた日本のアナキスト、中濱鐵についても皆さんと
学びを深めました。当時の唐さんは、本当に右翼にも左翼にも
アンテナを張っていました。唐さんを魅了したものは思想そのものより
その激しさという感じがしますが、大逆事件で亡くなった大杉栄の
仇を討たんと燃える中濱鐵。彼が獄中出版した雑誌「黒パン」は
迫力に満ちています。

この芝居『鐵假面』の「鐵」は中濱鐵の「鐵」と同じ旧字であり、
そんなことからも、あるいは唐さんは「黒パン」を持ち出したのかも
知れません。「事件」を好む当時の唐さんの、極めて忙しい好奇心を
細部にも感じられます。

明日は「その③」として、姉妹と公園課職員の会話をレポートします。

12/18(月)『鐵假面』本読みWS 第3回 その①

2023年12月18日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑『子連れ狼』萬屋錦之介バージョン!
やはりなかなかのインパクト。さすが小池一夫先生です


昨晩は『鐵假面』本読み第3回。
今まで突飛に散らかっていた登場人物や場面に、
一つの背景が見えてくるのが、昨日やった台本30ページ過ぎでした。

キーワードは「千日デパート火災」。
これは1972年5月に大阪の千日前という繁華街で実際に起こった
火災事件で、立て込んだ雑居ビルで起こった火事のために
上層階'(建物7階)にいたキャバレーのホステスやお客たち、
100名を超える人々が窒息死で亡くなったという事件でした。

YouTubeに当時の痛ましいニュース映像がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=hQWvC1h6s1E

新たに登場する「中年男」というキャラクターがこれを語ります。
この男の妻(内縁?)は火事で亡くなったキャバレーのホステスで
元同僚の姉妹に偶然会ったことで旧交を温めるうち、
姉妹の素性が明らかになってくるという物語進行です。

そして、彼の背中に背中は亡き妻の忘れ形見に見えて
実は大きな石の塊でした。これは、なかなかどうして、
この中年男の悲哀を物語るヘビーな道具であるように思います。

二人の間に生まれた子は、あるいは亡くなったか、
それとも、ヒモであったらしい彼では育てきれず、亡き妻の
家族に引き取られたか、そもそもそんな子どもなどはいなかったのか。
そんなことを考えながら、この「中年男」のキャラクターを
つくり込んで欲しいと思える仕掛けが満載の登場人物。

さらに、当時テレビドラマで流行していた萬屋錦之介主演の
『子連れ狼』までが持ち出され、舞台の造形としても賑やかです。
なかなか面白いシーンでした。

何より、先に書いたように、姉妹の素性が徐々に明らかになる会話が
なされる意味で、この中年男は重要です。ユニークに見えて、
実はリアリズム、物語の裏付けに貢献します。
とても重要なキャラクター、シーンであることを強調しておきます。

・・・ちょっと長くなったので、続きは明日に。
中年男のシーンの後には、乞食たちとのボストンバッグの奪い合い、
公園課の職員との会話、という部分もやりました。
面白くて内容充分。レポートにはあと2回を費やす必要がありそうです。

12/11(月)『鐵假面』本読みWS 第2回

2023年12月11日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑太平洋戦争後、佐世保に引き揚げてきた復員兵たちの写真。
こういったものから「叔父さん」の様子がキーアイテム・リュックサック
の様子を想像します


今日はついさっきまで『鐵假面』本読みの第2回目でした。
本当は日曜日(昨日)は慣例なのですが、昨晩はどうしても参加すべき
催しがあり、それで皆さんにも振り替えて頂きました。
たくさん参加してくださって、ありがたい。

第二回は、紙芝居屋とタタミ屋の青年がますます親しくなる
ところから始まりました。時代に置いてけぼりにされる一方の
職業人同士、しかもせいねんが往年の紙芝居『少年王者』の
大ファンであったことで、二人は結びついたのです。

さらに、タタミ屋は自分の家族について紙芝居屋に打ち明けます。
タタミ屋の先代である父は、夢見がちに少年王者に憧れる
息子を殴って諭したこと。満州から引き揚げてきた復員兵の叔父さんは、
ずっと大切そうにリュックを抱えて肌身離さず、その中には、
死んでいった仲間たちの骨を大切にしていたこと。

この部分は、ちょうどこれから登場する姉妹と対を成します。
つまり、仲間の骨をリュックに詰めた叔父さんと、
姉の情夫の頭部をボストンバックに詰めた姉妹という対比です。

物語進行的にも、ちょうど叔父さんについて語られた流れで、
次に姉妹が登場します。ボストンバッグ抱えて、立っている。

トイレに隠した髪が失われているところから、
姉妹と紙芝居屋とタタミ屋の4人の会話が始まります。
その中で、特に妹の方は態度が露悪的で、自らフリーセックスな
感じをムンムンと漂わせ、奥手で童貞気質なタタミ屋を圧倒します。
紙芝居屋はタタミ屋を応援しようと妹に反論しますが、
妹は売れっ子ホステスの手管で以って男たちを丸め込んでしまう。

面白いのは、しかし、姉妹の会話の端々に「鉄仮面」という
ワードがやり取りされ、何やら生活苦らしいということもわかって
くるところです。もう少し先まで読めばその理由は簡単に明らかに
なりますが、要は、二人は殺人者なのです。

姉の情夫を何かの拍子に殺してしまい、
そのために各地を彷徨っている。お姉さんの方はどうしても
その男が思いきれず、頭部をボストンバックに詰めて運び、
愛情を断ちきれぬどうしようもなさに悩んでいる、ということも
徐々に、徐々に、分かってきます。

特に妹は、殺しの瞬間に自分たちを捉えていた衝動を振り返り、
トロイの王子の死体を三日三晩、馬車で引き摺り回したアキレスや、
夫の不義に怒って自らの子どもたちをも手にかけたメディアの
行動と子持ちに自分を重ねます。
一方、姉は恋人の頭部を「鉄仮面」と呼んで思い切れない。

・・・というところで、新たな登場人物「中年男」が登場し、
物語は次の局面へ。次回、第3回はまた日曜日にやります。

12/5(火)『鐵假面』本読みWS 第1回 その②

2023年12月 5日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑文芸雑誌「海」1972年11月号。『鐵假面』初演と同時期に出版された
この中に初めて活字化された同台本が収録されています。後に出た
新潮社の単行本とは終盤が違う。これをもとに本読みし、最後に
単行本との違いを検証するつもりです。『二都物語』併録の新潮社版↓
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昨日に引き続き、『鐡假面』本読み初回のレポートです。
今日は進んだところまでの内容を振り返りましょう。

この劇は公衆便所でのやり取りからから始まります。
これは上野公園を前作で初めて借りた唐さんが、
再びこの場所で公演するにあたり着想したアイディアだと推察します。

夜更けに公衆便所にやってきた青年が目にしたのは、
手洗いで髪を洗い、トイレに隠した鬘を颯爽と付えけてどこかへ
出かける女でした。青年の視線に気づくと、「何見てんのよ!」と
言って啖呵を切ったことから、女性の気の強さが窺えます。
対して青年は、なんとも気弱。一人になると「誰かいませんか?」
と言ってトイレの中に消えます。

すると、始まったのはこの公園にたむろする乞食たちの
ファッションショーでした。彼らは実に堂々と自分たちの泥だらけ
の衣裳を誇り、高らかに歌さえ歌います。なかなかの朗らかさ、
そして、気高さです。心は実にノーブルな感じがする。

するとここへ、おしろいを塗りたくったお婆さんがやってきます。
彼女の頭は少し正常ではないらしく、男を誘惑するような媚態を
見せるので、乞食たちにからかわれます。

そこで、「真吾!」と助けを求める。
「真吾」といえば、『少年王者』に出てくる主人公の名前です。
すると自分はヒロインのつもりなのか。いずれにせよ、
助けに入ったのは今は廃れつつある紙芝居屋で、
後にこの男は、婆さんの息子と知れます。

多勢に無勢で紙芝居屋は乞食たちに襲われ、
商売道具のせんべいを奪われる始末です。乞食たちは去る。

取り残された親子の前に、冒頭の青年が現れます。
この青年のあまりの頼りなさに憤る紙芝居屋ですが、
青年が『少年王者』のファンだと知れると態度が急変。
意気投合の後に、青年は親の代からの家業を継いだタタミ屋と
知れます。

紙芝居屋とタタミ屋、時代遅れのシンパシーが効いたか。
二人がなかなかに良い関係になったところで、第1回の本読みは
おしまいでした。

次回は12/11(月)の開催です。
初回に漏れた方にも説明をよくしながら本読みを展開します!

12/4(月)『鐵假面』本読みWS 第1回 その①

2023年12月 4日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑「鉄」の旧字は2パターンあるので要注意!
「真ん中に王様がいる方」と憶えましょう


ついに『鐵假面』本読みを始めました。
私たち劇団唐ゼミ☆は来年3月に公演予定です。
ですから、ずっとこの台本について考えてきました。

まずは、初回恒例で、作品が書かれた背景について説明しました。

(1)前作『二都物語』で上野公園不忍池を初めて使い、その環境を
活かして、序盤が公衆トイレを利用した野外劇仕立てになっている

(2)フランスの作家ボアゴベに『鉄仮面』という作品があり、
唐さんはこれを江戸川乱歩が翻案した少年少女読み物を、おそらく
幼少期に読んでネタにしている。(ちなみに、乱歩版のエンディングは
原作とかなり変えられて味わいを減じている)

(3)山川惣治作の『少年王者』も強力な下敷きになっている。
ヒロインの名前「スイ子」や青年主人公「タタミ屋」の憧れの対象こそ
『少年王者』の真吾という、アフリカを生きる少年である。

(4)初めて唐十郎作『鐵假面』が活字化されたのは、文芸誌「海」
1972.11号であり、後に出た新潮社の単行本『二都物語・鐵假面』とは
劇の終盤に大きな違いがある。今回の本読みは、まずは「海」版を読む

(5)唐さんはタイトルに『鐵假面』と旧字をあてているが、「鉄」の
旧字には「鐵」「鐡」2パターンがあり、前者につき要注意!

(6)劇の途中に何度もフルート(唐さんの表記は「フリュート」)の曲が
取り上げられているが、これはフランス人フルート奏者、ジャン=ピエール・
ランパル演奏によるドップラー作『ハンガリー田園幻想曲』をもとにして
書かれた

(7)ちなみに、私が(6)を知ったのは故・根津甚八さんが生前に
書かれていたブログによってであり、根津さんの書かれた状況劇場時代の
エピソードはかなり貴重で、『吸血姫』創作の様子なども分かって
かなり面白いので、もっと多くの人に読んで欲しい
http://jinpachi.blog.tennis365.net/


・・・などということを伝えました。
初回は盛りだくさんにつき、なかなか内容までいきません。
というわけで、また明日!