1/8(祝月)『鐵假面』本読みWS 第5回

2024年1月 8日 Posted in 中野WS『鐵假面』

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↑包丁を使って突発的に起きた刃傷沙汰。ベタですが、

ベタだからこそ唐十郎作品のなかで物語への導入になってくれます



昨日は本読みWS。

年始の3連休の真ん中でしたが、12月より続けてきた『鐵假面』を

追いかけています。年末に1幕を読み切ったので、現在は2幕。


2幕冒頭は押し出しが勝負です。

1幕の終わりでついに姉妹がボストン・バッグに隠してきた

情夫の首が登場し、場面を震撼させました。


あれからどうなったのか!?

と観客に気にならせておいて、2幕はいきなり、

公衆便所が見世物小屋に改造されている、という趣向です。


そこで姉妹はそれぞれに芸を披露するのを強要されている。

公園課の職員が見世物小屋の主となり、姉・テル子には蛇女を

妹・スイ子にはフラメンコをさせている。そういう光景です。


二人は殺人者として弱みを握られてしまったのかも知れません。

いずれにせよ、そういう境涯に置かれているところに、

殺人も含めたスイ子の下司さに惚れ込んだ味の素社の味代部長が

通いつけている。という具合にシーンが続きます。


姉・テル子のお腹には子どもがいるらしく、つわりがひどい。

酸っぱいものを欲しがるテル子に、味代は金にまかせて季節外れの

夏みかんを与え、スイ子に恩を売りながら口説こうとする。


と、そこへ、回想シーンがやってきます。

稲妻姉妹がどうやって大阪で暮らし、姉の情夫を殺すに至ったのか。

それが再現される場面。要するに愁嘆場です。


情夫はテル子の元夫であり、しかも2度目の結婚であるらしいことが

彼女のせりふから分かります。情夫は元・鳶職で、それなりに腕が

たち、誇りのある人物だったらしいのですが、ある時に高所から

落ちて腰を怪我し、それからは鳶職ができなくなったしまった。

ここから彼の転落が始まります。


働きにも出ず、麻雀ばかりするようになった。

あとはお定まりのコースです。女房であるテル子のヒモとなり、

夫婦別れした後も、テル子がルームシェアをしたスイ子との

共同生活にも転がり込んで、金を無心する。


それでも元夫を捨てられず、妊娠までしてしまっているのが

テル子の性でもあるわけですが、暴力をふるう情夫に耐えかねて、

テル子とスイ子は情夫を殺し、彼を鉄仮面とあだ名している。

そういうことが丸ごとわかってくるシーン展開でした。


シーンの前後に、これは味代が率いる味の素軍団の仕業と

知れますが、この劇中劇こそ唐版『鐵假面』のエピソード・ゼロ

であり、巷にあふれたメロドラマの愁嘆場であることから、

観客にとっても演じる側にとっても、まさに物語への入り口に

なるシーンです。


唐作品にはこのパターンが非常に多い。

ポーンと1幕で突飛な設定や登場人物を繰り出しておいて観客を

驚かせ、2幕序盤で裏付けを与えて感情移入させるいき方です。


昨年秋に唐組が上演した『糸女郎』。

ヒロインが代理母に挑むことになった理由である天竜川の決壊と

絹織物工場の崩壊が語られるのは、実に2幕序盤でした。


『唐版 風の又三郎』において、

物語の発端となる高田三郎三曹におる自衛隊機の乗り逃げが

まざまざと語られるのも、やはり2幕の序盤です。


自分も好きなパートです。

これまで、お客さんの前でめくるめく展開してきた場面や人物の

やり取りが、ここでピタッときたら嬉しい。味わいのある、

スタンダードに良い芝居をする腕の見せどころです。

こういう場面は、人として、舞台人として、キャリアを重ねるほどに

良くなる。ワークショップ参加の皆さんも、大いに人生を発揮して

くれました。続きは来週の日曜日、1/14です。


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