12/26(火)『鐵假面』本読みWS 第4回 その②

2023年12月26日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑20世紀フランスの生んだ天才フルート奏者
ジャン=ピエール・ランパルの田園幻想曲に唐さんも惚れ込み、
叔父さんにフルートを持たせたようです


いよいよ1幕も大詰めです。

乞食たちが、実は味の素社の社員たちだったと知れると、
そこで中年男(子連れ狼風)や公園課職員が乱入、
皆がイナヅマ姉妹を怪しみます。
しかも、大事そうに抱えたボストンバッグから何やら血が滴っている。

持ち堪えきれなくなった姉妹がバッグの中を覗くと、
中に隠したはずの首がなく、妹は「鉄仮面」と叫びます。

と、トイレの奥が赤く光り、鍛冶屋のような灯りの中で
ハンマーを振るう男が現れます。彼こそ、タタミ屋の叔父さんであり、
戦後、大陸から復員してきた姿そのままに鉄仮面を被せらせた者たちを
救い出してやろうと、この公衆トイレの奥で仮面を割り続けてきたのです。

思わず駆け寄るタタミ屋。

この、叔父さんの行動は謎に満ちていますが、
実は、彼の働きは戦時下で亡くなっていった戦友たちに捧げられている
ことが、せりふの端々から見て取れます。

大陸で、物言わぬ兵士として個としての生き方を奪われ、
亡くなっていった仲間たちを、おじさんは鉄仮面になぞらえます。
だから、彼は、亡き友人たちの魂の解放を願って、仮面を割ろうとする。

不気味、乱暴、暴力的に見えますが、よく読めば
叔父さんのこうした振る舞いは、戦後民主主義に則っています。
「女の髪が巻き付いた長い長い物差し」というせりふからは、
人骨が単なるモノとして処分された戦時下の過酷が浮かび上がり、
復員して尚、仲間たちの魂とともにあり続ける叔父さんの生き方が
見えてきます。
彼がフリュートで吹く『田園幻想曲』は、鎮魂のためのものなのです。

死の匂いが立ち込めました。ここでようやく姉妹の抱える首が登場です。
タタミ屋はボストンバッグの奪い合いのさ中にこれを発見し、
トイレの奥に首を隠していました。ようやく現れた、姉の亡き情夫の首。

なぜ姉妹は放浪の身なのか。なぜ公衆トイレで身支度をし、
なぜトイレの中に鬘を隠していたのか。なぜ、味の素社の若手社員から
車を借りて、そのままどこかへいく必要があったのか。
すべてこの首のためだったのです。

ということが明らされたところで、1幕は終了です。
続きの2幕は1/7(日)から再開します!

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