12/11(月)『鐵假面』本読みWS 第2回
2023年12月11日 Posted in 中野WS『鐵假面』
↑太平洋戦争後、佐世保に引き揚げてきた復員兵たちの写真。
こういったものから「叔父さん」の様子がキーアイテム・リュックサック
の様子を想像します
本当は日曜日(昨日)は慣例なのですが、昨晩はどうしても参加すべき
催しがあり、それで皆さんにも振り替えて頂きました。
たくさん参加してくださって、ありがたい。
第二回は、紙芝居屋とタタミ屋の青年がますます親しくなる
ところから始まりました。時代に置いてけぼりにされる一方の
職業人同士、しかもせいねんが往年の紙芝居『少年王者』の
大ファンであったことで、二人は結びついたのです。
さらに、タタミ屋は自分の家族について紙芝居屋に打ち明けます。
タタミ屋の先代である父は、夢見がちに少年王者に憧れる
息子を殴って諭したこと。満州から引き揚げてきた復員兵の叔父さんは、
ずっと大切そうにリュックを抱えて肌身離さず、その中には、
死んでいった仲間たちの骨を大切にしていたこと。
この部分は、ちょうどこれから登場する姉妹と対を成します。
つまり、仲間の骨をリュックに詰めた叔父さんと、
姉の情夫の頭部をボストンバックに詰めた姉妹という対比です。
物語進行的にも、ちょうど叔父さんについて語られた流れで、
次に姉妹が登場します。ボストンバッグ抱えて、立っている。
トイレに隠した髪が失われているところから、
姉妹と紙芝居屋とタタミ屋の4人の会話が始まります。
その中で、特に妹の方は態度が露悪的で、自らフリーセックスな
感じをムンムンと漂わせ、奥手で童貞気質なタタミ屋を圧倒します。
紙芝居屋はタタミ屋を応援しようと妹に反論しますが、
妹は売れっ子ホステスの手管で以って男たちを丸め込んでしまう。
面白いのは、しかし、姉妹の会話の端々に「鉄仮面」という
ワードがやり取りされ、何やら生活苦らしいということもわかって
くるところです。もう少し先まで読めばその理由は簡単に明らかに
なりますが、要は、二人は殺人者なのです。
姉の情夫を何かの拍子に殺してしまい、
そのために各地を彷徨っている。お姉さんの方はどうしても
その男が思いきれず、頭部をボストンバックに詰めて運び、
愛情を断ちきれぬどうしようもなさに悩んでいる、ということも
徐々に、徐々に、分かってきます。
特に妹は、殺しの瞬間に自分たちを捉えていた衝動を振り返り、
トロイの王子の死体を三日三晩、馬車で引き摺り回したアキレスや、
夫の不義に怒って自らの子どもたちをも手にかけたメディアの
行動と子持ちに自分を重ねます。
一方、姉は恋人の頭部を「鉄仮面」と呼んで思い切れない。
・・・というところで、新たな登場人物「中年男」が登場し、
物語は次の局面へ。次回、第3回はまた日曜日にやります。
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