2/13(火)『鐵假面』本読みWS 最終回 その①
2024年2月13日 Posted in 中野WS『鐵假面』
↑唐ゼミ☆は2幕を稽古しています。そろそろ疲れが溜まってきました。
ここを押し切って最後までいけば、次の景色が見えてきます
2/11(日)は『鐵假面』本読みの10回目、最終回でした。
読んだ箇所は最後の10ページ。
鉄仮面裁判の結末から、味代がスイ子にプロポーズしてジャワ行きを宣言。
そこから雪崩れを打ってカタストロフィが展開し、結末に至ります。
まず、裁判の判決はスイ子に有罪を与えるものでした。
真相はどうあれ、遊び半分で姉テル子によるトビ職殺しをそそのかし、
ボストンバッグに首を入れて腐臭をばら撒いた罪が確定します。
淫乱全開のスイ子は、町中の鉄仮面の夜伽を命じられます。
それが、鉄仮面全員との結婚式に発展する。
それに待ったをかけたのが味代でした。
彼はスイ子が下等でゲスになっていくほど喜びを覚えるものの、
いざ鉄仮面たちとの結婚となるとこれに反対し、自分との婚姻を
宣言します。商社員の妻となり、東南アジアで現地の男性相手に
唐行をしながら夫婦関係を結ぼうと奇体な提案をし、
スイ子はそれを面白がって受け入れます。
鉄仮面たちがそれに呼応して仮面を脱ぎ捨てると、
実は味の素の社員であったことがわかり、叔父さんは孤独に
苛まれます。戦下で自由を奪われたかつての仲間たちを鉄仮面と呼び、
その仮面を叩き割って自由を与えようとしていたおじさんは、
いざ彼らが戦後日本の経済戦士になるに至って不満を覚えます。
自由を求めながらも、いざそれが実現すると反発する。
叔父さんのこのあたりの生理はなかなか読ませます。
さて、今度は味代と結婚しようとするスイ子を、タタミ屋が刺します。
いつの間にかフルートが剣に変わり、それでスイ子を刺す。
するとスイ子は、タタミ屋を森へと誘います。
自分が刺されたとはいえ、犯罪を犯したタタミ屋には、
自分と同じ道を歩む資格があるということでしょう。
タタミ屋はスイ子を刺すことで大人の男になりつつあるとも言えます。
が、タタミ屋をドロップアウトさせたスイ子を叔父は許さず、
スイ子をハンマーで滅多打ちにします。
悪夢のような光景に慄然とするタタミ屋を、紙芝居屋が殴りつけて
この劇は終わります。「夢から覚めるんだ」という紙芝居屋の怒声が
響くなか、鉄仮面たちの顔が並びます。謎めいて居並ぶ仮面たち。
何者かになろうとしてなれなかったタタミ屋よりも、
物言わぬ鉄仮面たちの不気味さが光ります。
唐さんが書いた初めてのバッドエンドです。陶酔より覚醒。
それがこの『鐵假面』の終幕です。観客は戸惑ったことでしょう。
しかし、この戸惑いこそが作者の狙いなのです。
そして何より、そこに居並ぶ鉄仮面たちの物言わぬ表情。
明日は日曜に読んだ別バージョンのエンディングも紹介します。
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