12/19(火)『鐵假面』本読みWS 第3回 その②

2023年12月19日 Posted in 中野WS『鐵假面』
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↑中濱鐡の「祖国と自由獄月号」。さすがのタイトル付。
当時の唐さんが右左を問わず激烈な人物たちに惹かれていたのが
分かります


一昨日に行った本読みWS。
大事な中年男のシーンの後、姉妹に乞食たちが絡み、
彼らの言い合いはボストンバッグの奪い合いに発展します。

このボストンバッグの中身は物語の進行上、
いまだ明らかにはされていないものの、二人が殺した姉の情夫の首が
入っているわけですから、姉妹とすれば必死です。

他方、まさか人間の首が入っているとは口が裂けても言えない
妹が中身を「鉄仮面」と呼んだことから、これが乞食たちの興味を
引いてしまう。結果的にバッグの奪い合いに発展するという
物語の流れです。

この対立のさなか、内気なタタミ屋が必死に女性二人をかばい、
乞食たちと渡り合おうと挑むところも見せ場のひとつです。
そのなけなしの勇気!

「お前は誰だ?」と問わせて「タタミ屋です」と答えさせる。
タタミ屋が必死な分、タタミ屋という響きはどこか間抜けです。
この唐さんのセンス。真剣かつコミカルなところが唐さんの真骨頂。

乞食たちが大事にする「黒パン」をキーワードに、
20世紀初頭を生きた日本のアナキスト、中濱鐵についても皆さんと
学びを深めました。当時の唐さんは、本当に右翼にも左翼にも
アンテナを張っていました。唐さんを魅了したものは思想そのものより
その激しさという感じがしますが、大逆事件で亡くなった大杉栄の
仇を討たんと燃える中濱鐵。彼が獄中出版した雑誌「黒パン」は
迫力に満ちています。

この芝居『鐵假面』の「鐵」は中濱鐵の「鐵」と同じ旧字であり、
そんなことからも、あるいは唐さんは「黒パン」を持ち出したのかも
知れません。「事件」を好む当時の唐さんの、極めて忙しい好奇心を
細部にも感じられます。

明日は「その③」として、姉妹と公園課職員の会話をレポートします。

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