11/20(木)The Sixteenが日本にいる!
2025年11月20日 Posted in 中野note
↑初めて聴いた時、休憩時間に話しかけて撮ってもらった
指揮のハリー・クリストファーズさん
The Sixteen は英国の合唱団です。
2022年にイギリスに研修に行った際、もっとも驚いた表現のひとつが
彼らでした。彼らのコンサートに行くと、はじまりの第一声でいつも
驚かされました。心地よい緊張が自分のうちにも生まれ、宗教を超えた
厳粛さに打たれました。
どんなに広い会場でも、彼らは空間を支配しました。
アンサンブルは音量を超えるということを実地に体験し、
だから、予定の許す限り、同じプログラムの演奏会でも複数箇所で
聴きに行きました。それぞれの会場をかれらがどう制圧するのか、
たのしみだったのです。
11/20(木)初台オペラシティ
11/21(金)海老名でマスタークラス
11/22(土)相模大野グリーンホール
11/23(日)京都バロックザール
11/24(祝月)福岡シンフォニーホール
という行程です。
尊敬する友人の山根悟郎さんの音楽事務所が招聘を行っていて、
この円安の時代に、山根さんのド根性を見る思いがします。
エライよ、山根さん!
そういうわけで、彼らが近くにいるとなんとなしに落ちつきません。
私は、相模大野で聴きます。
タワーレコードで今回のプログラムのみを集めたCDが売っていたのを
買いました。予習もバッチリです。
11/19(水)『木馬の鼻』本読みWS 第5回(最終回)その③
2025年11月19日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
↑2011年初夏に上演した『海の牙 黒髪海峡篇』のカーテンコールです。
『木馬の鼻』を書く直前の唐さんは、何を考えていたのか?
(撮影:伏見行介)
絶大に思えた会長「呂々井」は打ち捨てられ、孤独に沈む。
そのときのせりふは、
そして、俺だけ、タンスの中か......
これはやっぱり、いろいろなことを考えてしまいます。
台本に託して唐十郎はメッセージを送っているわけです。
『少女仮面』であれば、鈴木忠志さんと早稲田小劇場がしていた
あの伝説的な稽古に、唐さんは物申していたわけです。
『盲導犬』であれば、蜷川幸雄さんや石橋蓮司さんが行ってきた
革命青年の挫折劇に対して、やはり唐さんは物申していたわけです。
『木馬の鼻』は私と唐ゼミ☆メンバーに何を言いたかったのだろうと、
いまだに考えてしまいます。箪笥ってなんだろう?
四角い箪笥。
「青テント」のことかもしれません。
当時、公演地だった「花やしき駐車場」のことかもしれません。
当時、拠点にしていた「大学」や室井先生のことかもしれません。
さらに根本的に、「唐十郎」や「唐ゼミ☆」という劇団の土台のこと
かもしれません。
自分たちにとって表層的で具体なことから根本的な事柄まで、
何を言いたいのだろうと、今回の本読みを通じて、もう一度
突きつけられました。なんだろう?
『木馬の鼻』は全体にコンパクトでファンシーな作品です。
が、少なくとも私にとって、エンディングはかくも鋭いのです。
どういうことか? どうしたら良いのか?
どこまでの枠組みを破壊せよと言っているのか?
こうして、台本を受けて考えていることも、また一つの枠組みでは
ないのか?
書き下ろし、恐るべし、です。
11/18(火)『木馬の鼻』本読みWS 第5回(最終回)その②
2025年11月18日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
↑「谷也」らが去り、取り残された「呂々井」
(2014年初夏の上演より 撮影:伏見行介)
「群馬」が大勢を引き連れて去りました。
「林原」夫婦と「天雨」夫婦、「計筋」と「下水」に展望はあるのか。
全くありません。二組の夫婦は、旦那の失職を避けられないでしょう。
測量士たちは実に場当たりで、その場の権力に追従しているだけです。
そう。「計筋」と「下水」が付いていったということは、権力はもはや
「呂々井」から「群馬」に移行したのです。
思えば、「谷也」との問答が激しさを増した時、「呂々井」が
しどろもどろになり、むしろ「群馬」がたくみに言い返す場面が
徐々に増えていきました。「呂々井」が寵愛していた女店員「加々子」
は、今や「呂々井」を見限り、インカ側に付くようになりました。
そうして「加々子」は、自らの名前の由来する「チチカカ湖」の
ある南米方に付いたのです。
「木馬」が一行を引き連れて去った後、劇はエンディング体制に
入ります。わずか3ページですが、そこで「谷也」「竹子」「市」は
木馬「マチュピチュ」の鼻に再びこびりついた鳩の糞を見ながら
敗北を噛み締めます。しかし、素手でその糞をこそげ落としてでも、
「谷也」はやはりこの木馬とともに、どこかにある「マチュピチュ
の谷」を志向します。
その出発には、「竹子」は同行しません。
「竹子」は見送り役で、「谷也」は「市」と旅立っていく。
ここに「加々子」を加えるかは、上演する人次第です。
例えば、『唐版 風の又三郎』ほどの一発逆転的パワーは
ありませんが、それでも、主人公たちは希望を語り、目指します。
上演する者次第で、いかようにも練り上げられそうです。
と、そこへ、ここには風変わりな設定が用意されています。
主人公たちが出発した後、取り残された「呂々井」が自らの
孤独を噛み締めます。ここが、なかなかどうして、この
『木馬の鼻』の味わい深いところ。
それが何を意味するかは、また明日、考えてみます。
11/17(月)『木馬の鼻』本読みWS 第5回(最終回)その①
2025年11月17日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
↑大箪笥=谷屋の部屋を破壊する人々(撮影:伏見行介)
2011年にこの台本を受け取ってから、2012年と2014年に上演しました。
以来、11年経ち、唐さんからの手紙を改めて受け取り直すような
体験でした。まずは、あらすじの整理から。
二幕中盤で満を辞して「谷也」が登場すると、
「竹子」「谷也」の箪笥屋の姉弟は「呂々井」を責め立てます。
木馬「マチュピチュ」の腹を喫茶〈ピサロ〉の腹にあて、店ごと
揺さぶる手口はかなり暴力的です。
が、「群馬」が帰ってくると、「呂々井」方が勢いと取り戻します。
さらにそこへ、「林原」「天雨」が加わる。屋上遊園地を経営してきた
二人は困り果てています。彼らの事業自得ですが、二人が木馬を
持ち出したために、翌日に控えていた幼稚園・保育園児たちへの
遊園地解放デーは失敗に終わってしまったというのです。
この辺り、一幕終了時点から二幕まで24時間以上経過している
計算になり、たかが町内を移動して箪笥屋から喫茶〈ピサロ〉に
文句をつけにいくのにそれ程の時間が経過しているのが、
変と言えば変です。
ともかく、「林原」「天雨」は引責され、駆けつけた妻たち、
「仙子」「妙子」も合流して失職したことを嘆く四人の混乱が
スタートします。そこへやってきた「市」は彼らを翻弄するために
職安を開設したと宣言し、その手は当初うまくいきます。
が、「群馬」が「市」の企みを暴き、やがて「林原」夫妻と
「天雨」夫妻を強烈に先導し始めます。先行き不安ならば、
木馬を担いで上役に謝罪に行けば良い、しかも、木馬の鼻に
もう一度、鳩の糞を塗りたくることで、ずっと遊園地にあった
のだと騙れば良いと言いだします。
かなり強引な嘘をはらんだこの手ですが、浮き足だった夫婦二組
はその意見に賛同し、暴走を始めます。木馬を担いで歌い躍る
カオスが出来します。
しかも、測量士「測筋」「下水」まで帰還し、彼らは「呂々井」
への点数稼ぎに箪笥屋で発見した大箪笥=「谷也の部屋」を
持ち込み、これがすべての妄想のはじまりだと糾弾します。
そして、「谷也」「竹子」の前で箪笥は破壊されてしまう。
・・・続きは、明日。
11/16(日)目覚め(齋藤)
2025年11月16日 Posted in 劇団員note
ここのところ、前回のゼミログにも書きましたが、こちらの企画の準備に勤しんでいます。
大さん橋と山下公園と、唐ゼミの倉庫のハンディラボを往復する日々。
明日からは各所仕込みが本格化。
今日も、2tトラックいっぱいの荷物を積み込みました。
ここ数日、コツコツと作業してたところ、
気温が低いのが原因か、肩が凝り、背中周りがバキバキに。
今まで経験したことがないぐらいのコリを見せております。
作業中にそんな話をしたところ、背中を踏んでもらったらいいんじゃない? と言われたので、
手伝いに来てくれた女子に背中を踏んでもらいました。
僕は床にうつ伏せになり、背中に乗ってもらうと、
「めっちゃ背中硬いですよ、思ってるより全然硬い、やばいですね」と言われました。
僕は「めっちゃ柔らかいと思ったんだろうな」と心によぎりつつも、
これが、本当に気持ちいい。人生で初めて
「踏まれたい」
「誰か俺を踏んでくれ!」
と強く思いました。目覚め、かもしれません。
本番は12月から。
輝かしいイルミネーションのそばの暗闇で、僕が誰かに踏まれてるかもしれません。
写真は照明確認中のHANDIの窓。
オランダの飾り窓のようですね・・・。僕もここで初めて踏まれました。
齋藤
11/15(土)『木馬の鼻』本読みWS 第4回 その④ 過去2作品より
2025年11月15日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
↑唐十郎ゼミナールに入った時、唐さんが指定した"教科書"がこれでした
これを読んでいると、唐ゼミ☆が過去に上演してきた演目の
影響が如実に現れているのに気づきます。
例えば、二幕冒頭の「群馬」がフラメンコを踊るシーン。
これは明らかに、『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』第三幕
の影響です。もともとは、麿赤児さん演じるフラメンコダンサーが
歌ったスペイン語の歌が、とりあえずカタカナで書かれていること
に笑ってしまいます。
これは、私が唐十郎ゼミナールに入って初めて唐さんのもとで
上演した演目で、それだけに強烈な印象がお互いにあり、唐さんが
書いてくださったのだと思われます。
また、同じく二幕の「谷也」登場シーン。
臆病ゆえに現れては消え、現れては消え、を二度繰り返したのち、
今度はかなり暴力的な勢いで乗り込んでくる場面は、
『ジョン・シルバー』第二幕に登場する「小男」の場面そのもの
といえます。これも、唐ゼミ☆にとって大事な演目、場面で、
私たちは2001年に『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の後、
2002年春に『ジョン・シルバー』をやりきって、唐さんの信任を
得ることができた実感があります。
両作品とも、ともに大学教授と生徒たちであった時代の初期に
上演した演目です。それだけに印象が強く、唐さんが書いて
下さったものと考えます。唯一の書き下ろし作品のなかに、
それまでの唐ゼミ☆と唐さんの歴史が汲み上げられています。
11/14(金)『木馬の鼻』本読みWS 第4回 その③ 測量士「計筋」「下水」
2025年11月14日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
↑2014年秋の上演より(撮影:伏見行介)
「下水(左:演 ヒガシくん)」「計筋(真ん中:演 木下くん)」が
演じてくれました。衣裳が上下関係を表しています
どうにも気になる人たちがいる。それは、測量士のふたりです。
「計筋(はかりすじ)」「下水(しもみず)」という風変わりな
名を持つ彼らは、よくよく考えてみると面白い動きをしています。
一幕の箪笥屋において、彼らは「竹子」「市」「谷也」の脅しに
業を煮やして店を飛び出しました。箪笥屋側の三人が、店の土地を
削ったら心中するかもしれないぞ!と脅かすようなアクションを
行ったのです。測量士ふたりは、「会長に言いつけてやるからな!」
と言って店を出た。
しかし、しかし、です。
二幕で彼らが喫茶〈ピサロ〉にやってきたのは、「竹子」「市」の
後なのです。木馬「マチュピチュ」に乗った「谷也」は臆病ゆえに
町内をさまよっているとしても、これは遅すぎます。
だいたい、一測量士たちが勢いよく箪笥屋を飛び出した後、
一幕の最後には「インカ」や「マチュピチュ」を云々する会話が
けっこう長くやりとりされるのです。
ここが面白い。要するに彼らは油を売っていたわけで、
この不誠実さにこそ、唐さんの測量士という存在に対する敵視が
込められていると思うのです。
まあ、測量士の皆さん自体は、行政が都市計画のなかで緊急車両が
通りやすい道路づくりをするなかで、発注を受けて測量をしているに
過ぎません。しかし、まるで土地を奪っていく張本人のように
書かれています。都市計画自体も決して悪いどころか、人々のため
なのですが、自分の土地を削られる側にとっては、理不尽に感じて
しまうわけです。
唐さんは何をルサンチマンしていたのか。考え、演じるたのしみが
「計筋(はかりすじ)」「下水(しもみず)」には込められています。
11/13(木)『木馬の鼻』本読みWS 第4回 その②
2025年11月13日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
「市」と「呂々井」のタワシvsケータイ問答が、
「竹子」と「市」のヨダレ攻撃→スマートフォンの発火
というまるで超常現象めいた決着を見た時、喫茶〈ピサロ〉に
測量士たちが駆け込んできます。
ここで、測量士たちに名前が付きます。
ふりがなが付いていませんが、それぞれ
「計筋(はかりすじ)」「下水(しもみず)」とします。
彼らは、絶対王者である「呂々井」が、盥のハンコとヨダレ攻撃に
よって窮地に立たされていることに驚きますが、たいして加勢の役に
たちません。一方、「群馬」がここで頭角をあらわします。
機転を効かせて盥の上でフラメンコを踊り、底を抜いてしまうことに
より、今度は「竹子」らを追い詰めます。
やがて、「林原」「天雨」も合流。彼らは焦っています。
昼食を終えて箪笥屋に戻ったところ木馬も人も消えている。
このままでは明日の遊園地営業が木馬を欠くことになるので、
彼らは駆けずり回っているようなのです。
当の木馬の上には「谷也」がまたがり、どこか町内にいるわけです。
それが知れると、「林原」「天雨」が「谷也」を探しに行く→「谷也」を
いじめさせてはならじと「市」が二人を追う→「群馬」は「市」が
好きなので、追う→いまいち役に立てない「計筋」「下水」は居心地が
悪いので、どさくさにまぐれてこの場を去る。
という連鎖が起こります。
そして、残され、勝ち誇る「呂々井」と、盥を踏み抜かれて落ち込む
「竹子」のもとに、満を辞して「谷也」が現れます。
最初はビクビクと2度去り、しかし、3度目には木馬「マチュピチュ」
とともに殴り込みをかける剣幕です。(この辺のアップダウンが面白い)
次週、「谷也」と「呂々井」の頂上決戦から、エンディングまでを
読みます。その前に、明日以降も、少しずつ解説を補足します。
11/12(水)行李がうちにやってきた!
2025年11月12日 Posted in 中野note
↑現代では貴重品です。大切に使わせていただきます!
行李とは、昔、着物なんかを入れていた収納ボックスのことです。
来年に挑戦する『ベンガルの虎』の最重要アイテムは、
この行李と言って過言ではありません。
しかし、行李は手に入りにくい。
ヤフオクなどで見ると、なかなか高価です。
何より送料が高い。中身が入っていなければ極めて軽いものですが、
容積がデカいだけに送料がかかってしまうのです。
そのようなわけで、先日に行った『唐版 風の又三郎』第三幕WSの
時に、受講生の皆さんにご相談しました。すると、行李を持っていて
しかも譲ってくださるという方が現れたのです。
狂喜して受け取りに伺いました。その結果が上の写真です。
私たちの倉庫であるハンディラボは、放っておくとかなり粉塵が
積もるので、大きな袋に入れて保管することにしました。
来年、これが大活躍することは間違いありません。
譲ってくださったMさんに深謝します。
本来、今日は『木馬の鼻』オンラインWSのレポートの続きを書く
予定でした。が、あんまり嬉しかったので、行李がやってきたことを
ご報告します。そのようなわけで、唐ゼミ☆では現在、
行李を譲ってくださる方を募集しています。
繰り返しますが、『ベンガルの虎』の最重要アイテムなのです。
所持していながら不要だという方がいらっしゃったら、教えて下さい。
参上します!
11/11(火)『木馬の鼻』本読みWS 第4回 その①
2025年11月11日 Posted in 中野note
↑スマホ(左)とタワシ(右)のネックレス対決
(撮影:伏見行介)
『木馬の鼻』二幕中盤を読みました。
箪笥屋の「竹子」「谷也」とラーメン屋の「市」が
町内会長「呂々井」に異議申し立てするため、喫茶店〈ピサロ〉に
やってきます。面白いのは、三人が一時にはやって来ず、
「竹子」「市」「谷也」の順で徐々に乗り込んでくるところです。
まずは、盥をかついだ「竹子」とフランメンコ練習中の「群馬」が
闘います。「群馬」は「市」と「竹子」が夏祭りに来ていたのを
羨んでいたらしく、その恨みをぶつけます。
コップの水を「竹子」にかけ、「竹子」はその仕返しに、
「群馬」のフラメンコやスパニッシュ・ソングを完コピして
お株を奪ってみせます。
そうこうするうちに「市」が来て、それから敵役の親玉である
「呂々井」が登場します。一幕で木馬「マチュピチュ」にささげた
タワシの首飾りを付けた「市」と、当時、最先端のメディアだった
スマートフォンを数珠繋ぎにしたものを首に下げた「呂々井」が
激突します。
ここでは、「呂々井」に託して唐さんなりに解釈したスマートフォンと
ツイッターを巡る論争が起き、その解釈の独特さをたのしみつつも、
結局は「竹子」と「市」がヨダレを「呂々井」のスマホにぶつける
ことでケリがつきます。しかも、ヨダレを受けたスマホはなぜか
発火し、炎を上げたところで、「竹子」がすかさず盥を被せます。
この「盥」こそ、「竹子」が「呂々井」に突きつける区画整理に
対するNo!の意思表示となり、場は張り詰めます。
つづきは明日。
