2025年8月 7日 Posted in
中野note
↑二場の景色。かつて桐朋学園大学に非常勤講師として通った時、学生だった
宇野雷蔵君が、現在では頼もしい芝居仲間になっています
今日も11:00から通し稽古をしました。
新たにつくったニューウェーブ組の通しです。
昨日に比べて疲労感があり、また新鮮さもなくなって、
それだけにみんなの地力をよく伺うことのできた稽古でした。
ちょっとしたことのかかり違いで笑いは起きなくなり、序盤で噛み合わないと
後半まであとを引き、ぜんたいに苦しみながら進んだ通し稽古でした。
それが収穫です。
公演は何日も連続するし、その中には疲労を感じながら開演に入っていく日が
あるかも知れません。しかし、そのなかでどう渡り合うか、客席との呼吸が
合わなくともここでは確実に反応が、笑いがある、そういう場面があると
舞台は落ち着き、立て直していけます。そういうところも含めて
実りある通し稽古でした。
あと、収穫があって。
最後の方に出てくる「防空頭巾の女たち」、彼女らを今回は4人の役者で
やっているのですが、なかには合唱部分の伴奏を聞き取るのが苦手で
どうしても歌詞が先に先に出てズレてしまう傾向のあるメンバーがいます。
それを見た私は、順番を変えてみようと思い立って昨日のうちに
彼らに提案しました。が、彼らとしてはその後の流れも含めて初めに決めた
順番の方が良かったらしく、なんとか現在の配置でうまくやり抜けようと
稽古してきたということでした。結果、彼らによって事が上手く運ぶように
改善されていたので、私は自分の提案を引っ込めました。
これはとてもありがたいことです。
最終的に演じるのは役者たちですから、台本の読み方をよくわかった上で
彼らの意志と考えで選択し、それが成立するのであれば、私から指定された
段取りや動きよりも、それは主体的で活き活きするのです。
そういうやりとりは面白く、本番が近づくにつれ大いにやってもらいたいところ
です。彼らの奮闘を通じて、全体に何を推奨するか、伝えられたことも
ありがたかった。こういう収穫もありました。
稽古の前には、車イスで観劇に来てくれるという友人のところに行き、
エコー劇場内の導線的に確かにお迎えできるか、車イスの寸法を測って、
幸いエレベーターに入る事がわかり、安心しました。
稽古後は、小道具の加工を頼んだ友人の家に完成品を取りに行き、
家に戻って椎野・米澤と食事しました。食後は椎野の劇中歌の歌唱が
上手くいっていないので、どうしたら克服できるか、小さく伴奏をかけて
小さく歌いながら、改善方法を探りました。たのしい食卓でした。
2025年8月 6日 Posted in
中野note
今日は「ニューウェーブ組」の通し稽古でした。
こちらは全場を通して、これまでに準備してきたすべてを合体させました。
結果、彼らは良いコンビネーションを見せ、お互いに誘いあって
よく稽古していること、アイディアを出して主体的に演技を組み立てて
いることが伺えました。大きな収穫です。
このチームは、20代から30代半ばをメインの役どころに配役しています。
友情を結んでオフィシャルな稽古の前後に集結して試行錯誤している
ようです。唐ゼミ☆では、台本の読み方を研究し、せりふやト書きの
言わんとするところをとらえたら、それを叶える所作や言い方は
おのおのにゆだねることにしています。言い方や動き方はバリエーション
して良く、自分なりの方法で書かれていることの意味を体現する者が
優れていると考えます。めいめいがそれを理解して動き出すと、
舞台が活き活きとしはじめます。今日はそのとっかかりでした。
稽古後、私は飛び出して別件にかかり、途中でお祭り衣裳屋さんに
行きました。週末にお神輿の助っ人を頼まれたので、久々に着るものを
一新しようと思い立ったのです。
すると、いまや地下足袋にはエアーが入っていて驚きました。
これだと格段に疲れが違ってくるのだそうです。
たいしたアイディア、デザインだと感心して購入しました。
それから打合せに行き、流れで食事をして帰宅すると、
稽古を終えて帰ってきた椎野と、米澤がもりもり夕食を食べた後でした。
肉と魚の料理をつくって、フルーツも食べている。
体育会系の合宿の様相です。食べることもまた、粘り強い稽古のひとつ。
2025年8月 5日 Posted in
中野note
↑一場の終わりから始まり、場面転換も確かめつつ二・三場へ
今日は椎野を「春日野八千代」とする「同期の桜組」の通し稽古を
予定していました。が、皆の状態を見て、通しを二場と三場のみとし、
一場を割愛することにしました。
このチームはその名「同期の桜組」の通り、
去年に唐ゼミ☆版『少女仮面』を初演したメンバーを基調ですが、
「老婆」「水道飲みの男」「腹話術師」「防空頭巾の女たち」は新しい
キャストで構成されています。特に、終盤の場面は稽古が手薄になりがち
なので、二・三場に集中した方が全体のためになると判断したのです。
前後に返し稽古を多くして、細部を詰めたり、
せりふや所作が馴染むようくり返したり、特に相手役との関係性の
中で振る舞っていく方法を探りました。音響の平井隆史さんが稽古に
参加して本物の音源でオペレーションしてもらい、皆はずいぶん
やりやすかったと思います。
この組がほんとうに全体を通すのは8/12(火)の予定です。
自分は朝晩に他の仕事もあり、帰宅する頃には眠くて仕方のない
一日ではありましたが、自分が去った後の稽古場で皆がめいめいで
話しかけ、お互いのシーンの細部を詰めにかかっているのを感じながら
去るのは、なかなか良いものです。最後には、演じる者同士の世界。
明日は、ニューウェーブ組の通し稽古です。
2025年8月 4日 Posted in
中野WS『お化け煙突物語』
↑走行中のトラックの荷台にしがみつく、フルフェイスのヘルメットを
かぶってバイクを運転する「江ノ島カイ」を再現したかったのですが、
現在の画像生成ソフトでは限界がありました。バイクを運転しながら
荷台に捕まっていることが不可能だからです。いずれにせよ、「探偵」
が思わず見入ってしまった理由はよく分かりますね
昨日は『お化け煙突物語』オンラインWSの第3回目でした。
読んだ箇所は1幕中盤から後半に差し掛かるところ、
青年主人公である「探偵」が登場したのが、特に大きな進展です。
それでは、読み進めたところを整理します。
①先週のおさらい〜三人の盲人たちのこと
先週の終盤にダーッと読んでしまった箇所をおさらいしました。
「蝉丸」「とかげ丸」「蜂丸」が過去にどのような仕事に就き、
働きながら、それぞれの職場から眺める「お化け煙突」に思い入れ
やがて「大塚の母」から買ったメチルアルコールによって失明したか
ということを確認していきました。
②盲人たちの復讐
遠回しに「大塚の息子」に自分たちの被害を訴えていた盲人たち
でしたが、ついに牙を剥きます。自らも売り物であるメチルアルコール
に手をつけてしまったために極度の便秘におちいってしまった
「ワシ」こと「大塚の母」にカンチョウを振りかざします。
「蝉丸」は2本、「とかげ丸」と「蜂丸」は1本ずつ。
合計4本が「お化け煙突」のように見える本数を変えながら
「大塚の母」に迫るというギャグ的なサスペンスが展開します。
※盲人たちがちっとも視力を失っている感じでないところもまた、
この場面のおもしろさです
③「探偵」の登場
「探偵」がやってきます。すると、盲人たちは空いていたベッドに
隠れてしまう。この時点で、上手のベッドに盲人たち、真ん中に「姉」、
下手は「大塚の母」という配置です。
「探偵」はハナクソ探偵事務所、つまり、それだけしがない事務所で
浮気調査や探し物など、パッとしない仕事をダラダラとしているうちに
道で「江ノ島カイ」を見かけたことから、彼女を追ってここにやってきた
ようです。
④「カイ」と「探偵」
病室に「カイ」が戻ってくると、ふたりの会話が始まります。
彼らはちょっと前に道路で出会い、カイがバイクで転倒したところを
「探偵」が助けた、という間柄だと分かってきます。
そして、その前段がふたりの話題にのぼります。それによると、
・まず、「カイ」はバイクに乗りながらトラックにつかまっていた
・それは「ガソリン代」を節約するためではない
・「カイ」はトラックに積まれた荷物を追っていた
・荷物とは、「カイ」の養母、「ツレちゃん」のベッド
・「ツレちゃん」は、玉の井の女郎蜘蛛と呼ばれた娼婦だった
・ベッドと「カイ」の手の間には「蜘蛛の糸」のようなものが見えた
・「探偵」がそんな「カイ」に釘付けになった時、「カイ」も彼を見た
・結果、カーブのところで「カイ」は転倒
・転んだ「カイ」を「探偵」が担ぎ込んだ
という経過でした。
また、「カイ」は「ツレちゃん」直伝の「流し目」を持っており、
彼女が見るだけで多くの者が魅了され、メロメロになってしまう
こともわかってきました。これは、舞台上でアクションされると
すごく面白い動きなので、参加者のみなさんが想像できるよう
画面ごしに身ぶり手ぶりで説明をしました。
昨晩は以上です。
時間は、1幕が終わります。
8/10(日)に開催したら、その後は『少女仮面』公演のために
2週間のお休みをいただき、8/31(日)に再開します!
2025年8月 4日
稽古が進んでいます。明日にはラストシーンに到達する予定です。
初めてのシーンをあたるときには、台詞を間違えて覚えていないか、そもそも台詞はちゃんと入ったのか、
あそこの動きは、位置関係は・・・などなど、様々な制約に気を取られてしまいがちです。
どんどん進んでいくシーンにやっとこさ食らいついていく日々をこえたら、ようやっとスタートラインに立つことができるんだなあと感じています。
相手の言葉に耳を傾け、自分の発する言葉にもビビットに、そしてより自由に、
なれたら良いなあと思っています。がんばるぞ!
さて、今回の座組、私と同い年のキャストが3人もいます。
30半ばを過ぎるとこんなに同世代が揃うこともないので新鮮です。
中でも、Bチーム・ニューウェーブ組で水飲み男を演じてくれるフジタタイセイ君は
私の高校時代の同級生で、同じ演劇部でした。
劇団肋骨蜜柑同好会を主宰し、作・演出をつとめるタイセイ君に、いつか唐ゼミにも出演してほしいなあと思いながら虎視眈々と機会を伺っていたのですが、今回念願叶って出演していただくことになりました。
共演するのは高校時代ぶりなので、20年弱...!?(ひっ......)
タイセイくんは若くして老成しており、部内でのニックネームは「おじいちゃん」でした。
誰に対しても分け隔てなく接し、相手を否定することなく、
けれど自分の好きなものや良いと思うことに対してはまっすぐで、当時から尊敬していました。
数十年ぶりに時間を共に過ごしていますが、素敵なところが少しも変わっていないのが嬉しいですし、
今もこうして演劇を続けている仲間がいることにいつも勇気をもらっています。

戯曲の解釈や芝居の見せ方についてついつい相談してしまう、頼りになる存在です。いつもありがとう!
頼れる仲間とともに、ここからもっともっと練り上げていきたいと思います!
さあ、やるぞー!
津内口
2025年8月 2日 Posted in
中野note
今日は稽古がお休みでした。
台風がそれとはいえ小雨の降る中を、早朝の散歩。
そして、カンカン照りになってきたところで県民ホールまで行き、
フェリス女学院大のホールに行きました。
ここで、県民ホール主催のオルガン公演を行ったのです。
自分はあまりタッチしてこなかった事業ですが、同僚たちがキビキビと
働いていました。
お昼過ぎにこれが終わり、少し同僚と会話。
最近、私は稽古があるために日中は劇場に行きません。
朝早くと夕方以降の時間でホールの仕事をしています。
だから情報交換したのです。
それからAチームで老婆役の三木美智代さんに会いに行き、
喫茶店でおしゃべりしました。せっかく北海道から遠征して
くださっているのですから、時間があればコンタクトしたいもの。
それから、県民ホールの同僚たちと再合流し、二宮町へ。
車で東名から小田原厚木道路を乗り継ぎ1時間弱で到着しました。
ここの「ミライハラッパ」という広場で、毎月第一土曜日は
おもしろいイベントがあると、大学時代の同級生が教えてくれたのです。
17:00-20:00まで滞在しながら、数々のキッチンカーや演し物を
満喫しました。施設や事業の運営をされている方々とお話しすることも
でき、何人ものキーパーソンをご紹介いただきました。
近いうち、ここで何か演し物を展開するつもりです。
ゆとりある滞在時間のなかで、以前から受けてみたいと思っていた
足ツボマッサージを体験することができました。なるほど。
痛いけど気持ちいい。そして、また受けたい。
↓まさに稽古休み
こうして、私の稽古休みが過ぎていきます。
津内口は今日も稽古場に行き、短時間ですが一人で練習したそうです。
米澤の風邪は快方しているでしょうか。
2025年8月 1日 Posted in
中野note
8月に入りました。
今日の稽古は「春日野」と「貝」役のみの集中稽古としました。
座組のなかにポツポツと風邪をひく人が出始め、これが蔓延したり、
個人のなかで長期化することを恐れました。
風邪をひいている時に発声すれば声が枯れ、これからさらに
本腰を入れていく稽古の消耗に耐えきれないでしょう。
米澤もその一人で、稽古場に出てきてやや面倒がる彼を医者に行かせ、
すぐに帰すことにしました。個人の考えや主義もありますが、
いまや一人一人はお互いのなかでかけがえなく、責任も伴います。
ですから、回復のために周囲が納得できるベストを尽くす、という
視点も大事だと思うのです。それぞれの風邪が長期化して、
しかも「まだ医者に行ってないの?」となれば、やはり後悔に
つながります。
それに、3場終盤に差し掛かっていく際の「春日野」と「貝」の会話は
『少女仮面』中もっとも難関であると自分が捉える箇所です。
延々とふたりのやりとりが続き、その中で「春日野」が思い詰め、
モノローグをするこの場面にあっては、ギャラリーは少ない方が良い
とも思いました。集中と思い切りが必要とされる場面です。
散漫でない方が良い。
稽古を終えてみれば、明日の台風は横浜からは逸れるようです。
また、北海道から遠征してきている三木美智代さんの宿泊先に
トラブルがあり、協力して解消しにかかりました。
そういった問題も、座組にとって重大案件です。
昨日で7月が終わり、『少女仮面』チケットを購入するにお得な
期間も終了しました。この時点で全体の半分の客席が埋まりましたが
満席にはまだまだです。日々伸びていますが、ひとりでも多くの方に
観てほしい。それに、お客様の多さは役者たちに力を与えてくれます。
引き続き、ご予約を宜しくお願いいたします。
私と椎野は、明日から子どもたちを実家に預けることにしました。
その前に何が食べたいか彼らに訊いたところ、
「近所のレストランのカルボナーラ」と答えたので、ぜいたくして
連れていくことにしました。
息子と娘はコショウ抜きのカルボナーラを(厳密には"炭焼き"では
ありませんが)、親の方はイカ墨やスズキの蒸し焼きを食べました。
息子は興味を持って魚にも挑戦しました。
彼らを迎えにいくのは『少女仮面』が終わった後です。
最近、唐さんが90年代に朗読した太宰治さんの『桜桃』を聴いて
います。うちは「子どもよりも親が大事」でなく、
お互い持ち場でがんばろうぜ、そういう気持ちです。
2025年7月31日 Posted in
中野note
↑右がフジタタイセイ君。劇団主催者で作家でもあります
今日は少人数で短めのシーンを稽古しました。
3場で「水道飲みの男」が活躍する場面です。
短い場面というのは決して楽ではありません。
助走なしで急激にトップスピードに登りつめる必要があるために、
役者のからだに負担がかかります。だから今日は、フジタタイセイ君と
佐藤拓之さんがアクセルを踏み、燃焼する1日でした。
↓左が佐藤拓之さん
それだけに、途中には長めの休憩時間をとって、
数人で軽い食事に出かけることもしました。
ところで、昨日のゼミログにあげた写真を見て、
我ながらピンときました。『少女仮面』初演の早稲田小劇場の
舞台写真と、なんとなしに似ているのです。
↓昨日の写真
これまで、どの場面がこんな構図を生んだのか疑問に
感じてきましたが、どうやらこれは、「ボーイ主任」が
「老婆」愛用の少女フレンドの表紙を引き裂いた直後の場面だと
いうことが分かってきました。
↓早稲田小劇場の初演より
初演で「老婆」を演じた高橋美智子さんが「ボーイ主任」の
脚に絡みついているのは、台本指定のカッコ書きを超える過剰さです。
ささいなことですが、またひとつ謎が解けて良かった!
こんな細部に気がつくのも、なかなかおもしろいものです。
2025年7月30日 Posted in
中野note
↑これは1場の最後です
数日、このゼミログでの稽古場レポートが途絶えていました。
先週末が『オオカミだ!』平塚公演につき稽古休み、
次いで、『お化け煙突物語』オンラインWSレポートがあったからです。
実際には、日曜以降は『少女仮面』稽古を着々と進めており、
現在は1・2場を何度も確認しながら、現在は3場に進んでいます。
今日は、まさに3幕冒頭をやろうというところ。
狭い風呂の上をいかに大きく使うか、「春日野八千代」と「貝」の
稽古が、彼らの真剣さとは裏腹にいかに側から見れば滑稽なのかを
試行錯誤しました。こういうシーンをつくるには、2パターンの
キャストを組んだことが強みになります。
役柄は精一杯生きていて、しかもそれが側から見ているとコミカルで
ある状態をつくるために、別キャストを見ながら、熱演と客観性の
バランスを見ることができるからです。真剣に演じ、しかも冷静さ
を両立させるために、交替して見合い、また自分が取り組む。
そういう稽古を繰り返しています。
新しく唐ゼミ☆に参加してくれている三木美智代さん、
鍵山大和くんと麻生金三くんがここにきて馴染み、
「水道飲みの男」を演じる佐藤拓之さんとフジタタイセイくんを
知恵袋とするところがあります。拓之さんはベテランであり、
フジタくんは作家なので、アイディアと手数が豊富で、
試行錯誤をする余裕があるからです。
・・・と、ここまで進んできて、今日は地震による津波で
交通機関が乱れ、さらに週末には台風が迫っています。
あと3回稽古すると最後までシーンを組み終わり、
「防空頭巾の女たち」も登場します。
土台、毎日の暑さも含めて災害の多い最近ですが、
それらを縫って稽古し、疲れてきた喉のために休養もとりたい。
米澤の食事改善実験を粘り強く進めていますが、さすがの彼も
喉が疲れてきたので、睡眠が必要です。
8/2(土)に再接近するという台風、どうなるんだろう?
2025年7月29日 Posted in
中野note
↑実際の写真です。盲人三人は視力があった頃、それぞれの職場から
眺める本数の異なるお化け煙突に心慰められていた、という設定です
昨日の続きです。
舞台は鉄道病院の病室、「本間玲子の姉」と「大塚の母」が入院する部屋。
「江ノ島カイ」「本間玲子」「大塚の息子」の珍妙な恋愛沙汰が続いて
コミカルな展開を見せたあと、「カイ」は「玲子」にのしかかります。
「姉」は「玲子」の下敷きになり、座布団3枚状態にある。
が、「カイ」の目的は「玲子」でなく、ベッド。
自分の育ての母が使った「ベッド」を捕らえ、その中から「蜘蛛の糸」
を取り出します。この「蜘蛛の糸」が、後のストーリーに続く伏線に
なります。
と、そこへ三人の盲人が登場します。
彼らの目的は、自分たちが盲人となった原因である「大塚の母」に
復讐すること。かつてメチル・アルコールを商っていた「ワシ」こと
「大塚の母」から件の商品を買ったために、三人は眼の光を
奪われました。ゆえにこの場に押しかけたのです。
ここで面白いのは、病室に入ってきた彼らが、なかなか本題を
切り出さないことです。「大塚の息子」は身構えている。
しかし、三人は恨みや復讐をストレートに表現しません。
まずは自分たちの経歴を語ります。それが、観客に三人の
キャラクターを説明しつつ、同時に「そういった自分たちを盲人に
した」相手への、遠回しであるからこそ強烈な嫌味になっている。
要するに、真綿で首を絞めるような陰湿さが三人の面白さなのです。
彼らのキャリアを整理すると。
「蝉丸」
都電の車掌。終点 三ノ輪駅にくると見えるお化け煙突をたのしみに
していた。
「とかげ丸」
彼も鉄道関係者。飯田橋駅の連結係。トロッコ、貨物車、
蒸気機関車で働いた経験がある。彼もお化け煙突のファン。
「蜂丸」
上野公園の「お猿の電車」で働いていた。猿の「タアちゃん」の
世話をしていたが、「タアちゃん」とお化け煙突に登った際、
メチル・アルコールに酩酊した結果、「タアちゃん」を煙突の中に
落として死なせてしまった。
という三人です。
それぞれに鉄道に関係して働き、お化け煙突に愛着し、
メチル・アルコールに人生を狂わされて盲人となった点が共通して
います。そして、そうして越し方を披瀝しながら、「大塚の母」への
復讐の助走をしていく、「大塚の息子」にジリジリと迫り、
プレッシャーを与えていくのです。
とはいえ、こうして書くとかなり暗く陰惨な感じもしますが、
これらが、どこかコミカルに、ブラックユーモアも含みながら
あくまでユーモラスに描かれるのが、この『お化け煙突物語』の
たのしさがあります。
次回は、ついに三人の盲人が「大塚の母」に復讐の牙を剥き、
青年主人公である「探偵」の登場に運びます。次は8/3(日)です。
現在位置は、
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です。