10/31(金)丸山厚人さん演出の『少女仮面』

2025年10月31日 Posted in 中野note

shoujyokamenomote.jpeg

↑天野天街さんが描いた絵をコラージュしたビジュアルだそうです


今日の午後は新宿の雑遊に出掛けて『少女仮面』を観ました。

唐組の劇団員だった頃から付き合ってきた丸山厚人さんの演出による

『少女仮面』。池林坊のオーナー・大田篤哉さんプロデュースとあって

縦横に使える劇場空間と新宿の街並みも活かした、やりたいことが

いっぱい詰まった上演でした。


唐さんの作品をやるんだ!『少女仮面』をやるんだ!

そういう意気込みがほとばしった上演でした。

立派な声と体格の厚人さんはいつも努めて冷静だけど、

お客さんを捌きながら上気しているのが伝わってきました。

それから、劇中に使われている音楽の数々を聴きながら、

かつて俳優としてだけでなく、唐組の音響係として、

音に厳しい唐さんのリクエストに応え続けていた厚人さんを

思い出しました。


赤松由美さんと丸山厚人さんとはほぼ同い年だということもあって、

もう四半世紀に届こうかという付き合いです。

彼らが舞台に立っていると、掛け値なしに応援したくなります。


丸山厚人さん演出は、甘粕大尉の登場が抜きん出てロマンティックで

あること、ラストの工夫により少女・貝を中心とした物語として

貫かれているのが大きな発見でした。

貝が「少女」の中心であり、「少女」とは可愛くて怖いものだという

複雑さを背負って消えていきました。強かで、不気味です。


『少女仮面』について。

自分がこれだ!と思って取り組んでいるとどうしても近視眼的になるので、

この劇の新たな側面を教えてもらいました。きっと「老婆」を中心とした

『少女仮面』があってしかるべきだと、そういう予感もします。


夜はもうひとつ、富ヶ谷でマドリガル・コメディの音楽会を聴いて

帰りました。丸山さん・赤松さんが唐組で活躍していた頃、

こんな組み合わせは考えられませんでした。


帰り道、ハロウィンで騒然とする雨の渋谷を抜けながら、

自分の過去と現在が入り乱れて変な感じがしました。

それなりに生きてきたおかげで、色々バリエーションが生まれています。

10/30(木)時代のプリズム展に行く〜椿さんとやなぎさん

2025年10月30日 Posted in 中野note

S__1253601.jpg

↑時代のプリズム、ですからね。確かに輝いていた!


今日は津内口と都内に出ました。

四谷で打ち合わせをして、その後、少しだけ時間があったので

ふたりで国立新美術館に駆けつけました。

いま行われている「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現

1989-2010」を体験するためです。

 

椿昇さんとやなぎみわさんは、唐ゼミにとって、とてもとても

重要なクリエーターです。お二方とも室井先生によって得ることが

できたご縁でしたが、椿さんには巨大バッタを通じて唐ゼミ

立ちあがるきっかけを、やなぎさんには、劇団がまたひとつ

バリエーションしなければタイミングで、劇作家やなぎみわとして

『パノラマ』公演を協働で創作していただきました。

 

今回の展覧会には、

椿さんは《エステティック・ポリューション(1990)》を

やなぎみわさんは《アクアジェンヌ イン パラダイス1995)》

を出品されており、ずっと写真で眺めてきたお二人の黎明期の

作品を、遂に実物で体験することがきました。


近づいたり、離れたり、周囲をグルグル回りつつ見ていると、

今の私より歳下の椿さんとやなぎさんが颯爽と創作している姿が

作品から想像できました。


私の知る椿さんとやなぎさんは、常に次の創作に向けて頭いっぱい

の方たちですが、もっと過去の作品の実物を見てみたいものだと

遅れて知り合うことのできた自分は思います。


できれば会期中に、もう一回見たい!

10/29(水)『木馬の鼻』本読みWS 第2回

2025年10月29日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
180731_yuenchi_01.jpg
↑屋上に観覧車を含む遊園地を残す「かまたえん」(木馬はいません!)
このように、全国で数件は残って頑張ってくれています


『木馬の鼻』の主人公「谷也」の職場はデパートの屋上遊園地です。
この屋上遊園地という設定自体、いまは失われつつあるもの、
懐かしいもの、という感じがあります。

そもそも、デパートとか百貨店という存在は、
かつてとても輝いていたのだと思います。
なにしろ「百貨」ですから、「すべての物が買える!」という夢、
大袈裟に言えば、人類の気概と希望!を感じます。

アニメで『サザエさん』を観ると、デパートに行く際は
オシャレや正装をしている向きがあって、単なる買い物を
超えたハレの機会であったことが伺えます。

同時に、とても子どもの多かった高度経済成長期に、
アミューズメントパークとしてもデパートが機能した。
屋上遊園地はそういう子どもたちの楽園を思わせます。
メリーゴーランドに乗り、レストランでお子様ランチを食べる。
至福の時であったことは簡単に想像できます。

上野で成長した唐さんは、松坂屋の屋上でバルーン広告の
見張り番のアルバイトをしたことがあるのだそうです。
ああいった広告もいまでは見かけません。

ただひさすらバルーンの見張り番をしながら唐さんが
どんな時間を過ごし、どんな着想を得たか、想像するのは
愉しいことです。

10/28(火)今日は劇団集合

2025年10月28日 Posted in 中野note
E3A1A586-2703-4DE7-B68B-8B2DA6F8BAA8.jpg
↑年始の『下谷万年町物語』台本の作成。すでにお申し込まれた方に
早めにお届けします


今日は劇団集合でした。
今月は、相模湖での野外バレエ、
橋本駅の南に建設中のリニア新幹線新駅工事現場でのイベント、
と際立った野外イベントが続いたために、劇団の集合をオンラインで
行ってきましたので、久々に直接集合して話し合いをし、
作業をしました。

すでに来年の『ベンガルの虎』を見越して、稽古場や会場の押さえに
動いています。そうした条件をいつもより早めに出して、
スケジュールを確定させ、多くの人を巻き込みたいと考えています。
『ベンガルの虎』、208ページの大作です。

また、1月から始まる『下谷万年町物語』の対面WSに備えて、
参加の皆様用の台本作りを行いました。

『下谷万年町物語』は239ページ。
『ベンガルの虎』を上回る長編ですから、大きなホッチキスを
貫通させるにもそれなりの力が入り、ページがズレないように、
紙を持つ者、ホッチキスを押し込む者が息を合わせて芯を
打ち込みます。

さらに、飛び出た芯が読む人の手を傷つけないよう、
金物でよく叩いて寝かし、そこに製本テープを貼りました。
製本テープは、先月頭に愛川町でイベントを行った際に
見つけた、クラシックな文房具屋さんで見つけた紺色の
テープを使いました。

こうした作業をしながら先々について相談するのはたのしい
ものです。おかげで、だいぶ進展しました。

10/27(月)『木馬の鼻』本読みWS 第2回 その①

2025年10月27日 Posted in 中野WS『木馬の鼻』
K-0074.jpg
↑箪笥のなかの寝室に引きこもって休もうとする「谷也」
(唐ゼミ☆2014年公演より、撮影:伏見行介)

先ほどまで、オンラインWSを行いました。
昨日がリニア新駅でのイベント予備日にあたっていたので、
前回の火曜開催に引き続き、今回は月曜開催ということになりました。
それでもお集まりいただき、ほんとうにありがたいです。

『木馬の鼻』2回目の本読みです。
先週に読んだところにも少し戻って、「谷也」の登場から読み直し
ました。「谷也」はデパートの屋上遊園地の清掃員。それが、
あるしくじりをします。園の花形であるメリーゴーランドの
木馬の鼻に鳩のフンがこびりついたのを最後のとっておきに
したところ、これをすっかり忘れて終業時間になってしまったのです。

それに気づいた「谷也」はバケツと雑巾片手に戻ろうとしますが
上司に規定時間外の仕事を禁じられ、掃除道具すら、家に帰って
きれいにしろと言われる始末で、それで、バケツと濡れ雑巾を抱えて
自宅の箪笥屋に帰ってきたということでした。

それまでイチャついていた姉「竹子」とお隣のラーメン屋「市」が
手をとめて帰宅した「谷也」を気にするも、「谷也」は仕事着のまま
箪笥の中に入っていきます。劇冒頭から「竹子」が寝室に仕立てて
いた箪笥は、「谷也」の部屋だったのです。

着替えもせず、風呂にも入らず狭い空間に自らを押し込めようと
する「谷也」を「市」はたしなめます。すると、自分がどうして
ナーバスになっているかという上記の失敗が、「谷也」の口から
語られるのです。

と、そこへ、来客です。
「谷也」の職場であるデパートから、遊園地を管理する庶務部の
「林原課長」と、遊園地を任されている園長「天雨(あまさめ)」が
やってきます。

最初は「竹子」に対して世間的な挨拶を交わし、言葉も丁寧だった
二人ですが、やがて、「谷也」の仕事がいかにダメかを咎め、
さらに、明日の幼稚園・保育園生への開放日に木馬の鼻に鳩のフンが
こびりついている弊害を熱弁します。その上、
実際の木馬を箪笥屋に引っ張り込み、ここできちんと掃除をしろ
と迫るのです。

仕事を言いつけて食事に出かけた「林原」と「天雨」。
残された「谷也」を励ましつつ、「竹子」と「市」は手伝います。
すると、家族と友人の情愛により、「谷也」は少し元気を取り戻す。

・・・上記が読んだ箇所のストーリーです。
続きの解説はまた明日。

10/26(日)『盲導犬』公演の思い出(椎野)

2025年10月27日 Posted in 劇団員note
唐組が10/11に初日を迎え、『盲導犬』の公演をしています。
夏のような気候から急転直下の寒い雨の中、
テントや舞台の設営、そして本番を上演していると思うと、心が熱くなります。
春の旅公演で悪天候に出くわした話をテントで聞いた時は
「いやーきつかったです!」と言いながらアハハとたくましく笑い、
颯爽と舞台の準備をしている後ろ姿に惚れ惚れしました。

『盲導犬』を劇団唐ゼミ☆で上演したのは2004年。もう21年前です。
当時は稽古場に24時間いられたことをいいことに、稽古も小道具作りも
気がついたら夜を徹してやっていました。体力もあったし、今思えば贅沢です。

盲導犬の胴輪を小道具で作らなくてはならないのだけれど、
技術レベルが追いつかず、七転八倒し、
後輩含めて3人がかりで、夜10時頃に稽古を終えてから
あーでもないこーでもないと作って朝9時なってもできあがらず、
ただただ朝の光を背中に感じていたのを思い出します。

物語も、私の知識や人生経験では全く太刀打ちできず、
これはどういう意味なのだろうと、天井を見上げて途方に暮れたりしていました。
銀杏さん登場のシーン、難しかったなぁ。何でもない会話がものすごく難しい。

なので、2009年、唐組の『盲導犬』を見た時の衝撃は忘れられませんし、
2025年、長い時を経ていま上演されている『盲導犬』がどうやって
自分の目の前に立ち現れてくるのかも、想像するだにワクワクします。

角川文庫の『盲導犬』を片手に、心して鬼子母神様に向かいたいと思います。

20251026zemirogu.jpg

10/25(土)リニア駅にて.完全にはできなかった

2025年10月25日 Posted in 中野note
今日はリニア新幹線駅の工事現場で行われる
「さがみはらリニアフェスタ2025」に参加してきました。
そのなかでコンサートを3回行うのが私たちのミッションです。

①14:30-15:00 地上ステージ
②17:30-18:00 地下ステージ
③18:30-19:00 地下ステージ

内容は「オペラ歌手とトロンボーン四重奏によるクラシック名曲集」。
野外イベントにつき、これはもう雨との戦いというか、
天候的には勝ち目のないなかで、なんとか少しでも晴れてくれ!
と祈りながら広い会場を行き来してチャンスを狙い続けました。

結果的には、

①中止
②ダイジェストして8曲中、3曲だけできた
③冒頭から3曲やったところで中断→中止

という運びになりました。
特に③、18:30からは最後の望みをかけ、天候的には落ち着いていた
のですが、地下空間に風が吹き、風が吹くと、地下に林立する
無数の鉄柱にそれまでにこびりついた水滴がそこらじゅうに
舞い始め、音楽家の皆さんと楽器に襲いかかる、という
工事現場独特の現象が起こってしまったのでした。

観客・聴衆のいる地上はほとんど雨が降っていないけれど、
地下は横殴りの雨状態、という、これまでに経験の無い状況の
なかで苦しい決断をしました。

総計して、準備してきたなかで3曲できなかった曲がありました。
夜まで会場に残ってくださった何百人というお客様の期待に応えて
やり切りたかったし、昔、台風で『木馬の鼻』足柄公演の千秋楽を
諦めたことを思い出しました。

またリベンジする機会がないかとも切望しますが、
工事現場ですから、工事は日々進んでおり、いま目の前にある
環境は二度と帰ってきません。そういう刹那的な瞬間に、
火花を散らした仕事でした。数人で、相模原の方に教わった
「福よし」というハンバーグ屋さんに行き、それから帰りには
銭湯に寄って帰ってきました。

Yahoo!ニュースに、音楽家の皆さんに傘をさして強行した②コンサート
の写真が出ています。
スクリーンショット 2025-10-26 8.38.02.png

10/24(金)地下にいます

2025年10月24日 Posted in 中野note
108051-1283-071ac10dfee99a118e8aa96da18a989a-1601x1206.jpeg
↑実物写真は明日までオープンにできないので、広報資料より
こんな感じで立派なステージができており、地下20メートルのところ
にいます


今日から橋本駅に通っています。
JRと京王線が乗り入れる橋本駅です。
ここに建設中のリニア新幹線の新駅を会場で行う野外イベントに
参加し、そのなかでコンサートをするというのが今回のミッションです。

私たちの担当は工事中の地下空間。
リニア新幹線のホームができるあたりに設えられた特設ステージから
地上に、空に向かって歌う、という特殊なコンサート。

先週の相模湖に引き続き、またも相模原市。
横浜市保土ヶ谷区にある家から、保土ヶ谷バイパスにのる日々が
続いています。

工事中の新駅の開放デーとして行われるイベント全体は
10/25(土)26(日)に行われ、県民ホールは土曜日に、
30分のコンサートを3回やります。

土曜に雨が降ったら日曜日に振り替える、
という計画ですが、しかし、本日リハーサル日から徹底して雨模様
です。今日だけは晴れる予報だったのに、今現在の天気予報が
どんどん雨マークに変わっていきました。

しかし、音を出さなければバランス調整もできず、
ぶっつけ本番になってしまう。そこで、先ほどまで雨足が弱まるのを
待って、弱まった瞬間に2曲だけリハーサル、2曲終わったところで、
まだいけそうだからさらに別の曲もやる、という臨機応変な対応で
今日を凌ぎました。結局は、全8曲中、7曲をあたることができました。
やれやれ、短いプログラムにして、助かりました。

明日はどうなってしまうのか。

一応、12:00オープンの「さがみはらリニアフェスティバル2025」
全体は予定通り行う予定ということです。
準備が大変だったので、何とか、一回でも公演本番がやりたい、
コンサートの様子を何とか映像や記録に残したい。そう考えています。

それにしても、冷たい雨。

10/22(水)『木馬の鼻』本読みWS 第1回 その③

2025年10月22日 Posted in 中野note
_0165_190915.jpg
↑『ジョン・シルバー』の「双子の姉妹」。私たちの原点といえる演目
(唐ゼミ☆2017年9月公演より 撮影:伏見行介)

今回、皆さんと一緒にひさびさに『木馬の鼻』と向き合っていて
気づくことがあります。それは、それまでに唐ゼミ⭐︎が上演してきた
作品の要素が、『木馬の鼻』にちりばめられているように感じるのです。

例えば、一昨日に読んだ場面。
「竹子」が自分にすてきな男性が現れないことを嘆いて
歌う歌のなかにこんな歌詞が出てきます。

笥の中は 思い出市場
売れた物は ハマグリの貝
残ったものは シジミのかけら

これなど、谷也が引きこもる箪笥を貝になぞらえながら、
売れ残りの女性である自分を自嘲した歌といえます。
女性を貝に例える歌といえば、私たちが初期に上演し、
ずっと思い入れてきた演目『ジョン・シルバー』で「双子の姉妹」
がこう歌います。

あたいたちゃ すべた
あたいたちゃ あさり

・・・思い切り下ネタですが、こんな具合です。
また、ラーメン屋の「市」が自分の耳を男性器に見立てて、
「竹子」にペンチで引っ張ってもらうくだりなど、
私たちがやはり初期に上演した『動物園が消える日』の中で
ヒロイン「オリゴ」に主人公の「灰牙」が、ゲランの香水瓶を
自らの男性器に見立てて、動物園のもぎり用パンチでつまんで
もらう、というシーンに似ています。

これらが、唐ゼミ☆の上演史を意識したものなのか、たまたま
唐十郎という作者がいつも同じ傾向を着想する範囲に収まる事柄
なのか、それは私には判断できません。『木馬の鼻』という唯一の
書下ろし作品を読む時、まして、唐さんの現在を思う時、私は
どうしても感傷的にならざるをえないのです。

この先も読んでいくと、何か同じような発見があるかも知れません。
上記の2作品を2002年に上演した後、唐ゼミ☆公演は
『少女都市からの呼び声』『鉛の心臓』『盲導犬』という風に
続きました。WSに参加してくださる皆さんと台本を読みながら、
そんな期待も去来しています。

10/21(火)『木馬の鼻』本読みWS 第1回 その②

2025年10月22日
120707_033.jpg
↑後ろが、お部屋化した箪笥です。「谷也」が居住できるよう設えてある
(唐ゼミ☆2012年春公演より)

一昨日の第1回で読んだ箇所は、唐ゼミ☆版の台本105ページ中
15ページほど。まだほんの序盤。

物語は、箪笥屋が舞台です。その隣はラーメン屋。
まず、箪笥屋の「竹子」が、売れ残った箪笥の中に「お部屋」を
仕込んでいます。布団や枕を置き、狭いながらも人がギリギリ寝られる
環境をつくっている。結果的にこれは、後に弟である「谷也(たにや)」
のためだとわかります。「竹子」は、引きこもりがちな「谷也」が
もっとも落ち着く空間をつくっているというわけです。

しかも、その時に歌を歌います。
それは売れ残った箪笥と自分をうたう歌で、「売れ残り」、
つまり、恋人や結婚相手ができない自分を自嘲して、
「わたしを迎えに誰かがやって来ないものか」と歌うのです。

すると、隣のラーメン屋の青年がやってくる。
「市(いち)」という青年です。彼は「竹子」に気があるらしく、
しかも「竹子」の方でもまんざらでもないらしいのですが、
昔から知り合いのご近所であるがゆえに「腐れ縁」という感じの
関係性の二人です。

「市」は、最近のお祭りで「竹子」が手に入れた金魚のために
出前用のオカモチの中に風鈴を入れ、その音色で、金魚を喜ばせようと
します。が、「竹子」は「金魚に耳は無い」と言って「市」をからかう。

「市」は見当はずれなプレゼントをしてしまった自らを恥じ、
「金魚の耳はどこにある?」と歌って身悶える、という、何とも
情けない展開です。

要するに彼らは、そんな問答をしながら戯れあっているようにも
見えるのですが、そこに、「谷也」が帰ってきます。
デパートの屋上遊園地で清掃員をしている「谷也」は、どうやら
仕事でしくじりをしたらしい。それがために、冒頭で「竹子」が
用意した「箪笥部屋」に着替えもせず、風呂にも入らず汚れた体で
入ってしまう。そういうところからこの物語は始まります。

・・・全体に、平和です。
とるに足らない問題や悩みを扱った寓話のようなはじまりといえます。
明日は、そこにどんなメタファーがこめられているか。考えてみます。