2025年12月11日 Posted in
中野note
引き続き『アリババ』を読んでいます。
若く、貧しい夫婦のお話です。四畳半ものというやつです。
かぐや姫の『神田川』に象徴される風俗の所産といえます。
戦後世代が成人し、非正規雇用であるアルバイトが普及すると、
同棲が盛んになります。それでいて、コンビニのない時代です。
避妊のための道具は現在より手に入りにくい。
覚悟なき妊娠と堕胎を数多く生んだにちがいありません。
そして、『アリババ』のような台本が生まれるわけです。
主人公の男女、宿六(やどろく)と貧子(ひんこ)は、
五ヶ月の「英子」を堕胎したと言います。
この五ヶ月というのがかなりリアルで、これ以上大きくなると
中絶が難しくなるギリギリの時期なのです。
ところで、この「英子」、なんと読めば良いのでしょうか。
この前の新宿梁山泊の上演では「エイコ」と読んでいました。
すっきりとしたカッコ良い響きの読み方で、なかなかハマって
いました。が、私はどうもこれを「ヒデコ」と読んでみたい気に
かられています。なぜなら、唐さんの本名は「義英=ヨシヒデ」
なのです。まだまだ世間に認められていなかった疎外感を、
唐さんは「英」の字に託したのではないかと想像したくなる。
「エイコ」か「ヒデコ」か。
そう思い悩んでいると、こんな箇所に突き当たりました。
老人 英子の手は窓に吊るしてある?
女 ええ、ここ。
老人 英子ももうすぐ来るよ。
女 英子が?
・・・まさか、ダジャレ!?
「エイコ」と読めばダジャレが完成してしまう。
ひょっとして、やはり「エイコ」なのか?
今日はずっと悩み続けています。
2025年12月10日 Posted in
中野note
↑この手前のところで鍋やっている若者たちを見たことがあります
『アリババ』を読んでいます。
年明けのオンラインWSに備えて読んでいます。
短い台本です。手元の台本で60ページ強。
ですから、4日間かけて読もうと決めました。
一気にやると雑になるので、1日平均15ページ強を丹念に。
早朝に仕事が立て込んだら、夜に作業開始です。
とはいえ、帰宅して食事でもとろうものなら、頭の回転は鈍り、
疲れと眠気が押し寄せてきます。
そこで、ビブレに寄ることにしました。
横浜駅西口のビブレです。ここには私にとって、CDとズボンを
買い来る商用施設です。
このビブレは、活き活きした若者たちがたむろしています。
やんちゃそうな若者たちが多い印象です。
スターバックスに寄ると、なかなかの面々が店中に溢れていました。
ほぼ満席のなかに空席を見つけて座り、台本を開きますが、
漏れ聞こえてくる会話が面白すぎる。
20代半ばと見受ける女性同士が彼との倦怠を語り、海外で働くこと
への夢を語ります。別の方からは、結婚や子作りを迫る彼がいかに
うっとうしいか、熱弁振るっている人もいます。
勢い込んで三人で元気にやってきた男子らは、座る場所もなく、
受け取りカウンターにスタンディングで飲み、大声で語って
去っていきました。
そういえば、15年ほど前、冬場にビブレ前を通りかかったところ、
広場にコタツを持ち込み、鍋を食べている若者たちを見かけました。
そういう勝手が許されるところにビブレのたのしさはあり、
時代とともに弱まったとはいえ、現在もその感じは健在です。
昔、唐さんがドトールコーヒーでの執筆を行ったことがありました。
あのノイズが良いのだ、聞こえてくる会話の中にヒントがあるのだ、
みんな、ナイフを隠し持っているような青年ばっかりだ。
そう言っていたのを思い出します。
『アリババ』も青春、ビブレも青春が溢れています。
2025年12月 9日 Posted in
中野note
↑「魔の巣」といえば・・・
初めて豊橋に行きました。
あるいは、名古屋出身ですから、初めてではないかも知れません。
ひょっとしたら、何の気なしに親に連れてきてもらったかも知れない。
けれど、少なくとも、意図して豊橋にやってきたのは、
これが初めてでした。
主目的は程なく済み。
新横浜まで一駅のひかり新幹線を待つまでの間、街を歩きました。
図書館だとか、新興のカフェや飲屋街だとか、品揃えの良い本屋だとか
いろいろありましたが、ひょっと見たところにあったお店に
釘付けになりました。それが上の写真。
あの店が、ここに。
小学校3年生くらいのころ、火曜日の夜は大橋巨泉の
『ギニア・ぶれいく』が始まるのを心待ちにしました。
その中で『笑ゥせぇるすまん』が始まるのを今か今かと
待ったのです。時にこの目的のアニメが無いのに落胆したことも
ありましたし、眠さに耐えきれずに落ちてしまったことも
ありました。それが、ここに。
夜には横浜に戻ったので開店時の様子はわかりませんでしたが、
いずれ宿泊込みの時には、訪れてみたいものです。
お酒飲めないので、ソフトドリンクで。
2025年12月 8日 Posted in
中野WS『盲導犬』
↑「夫」が殺されたキャバレーについて検索すると、こんな写真が
出てきました。絶対に違うと思います、タイのキャバレーはすごいん
ですね。「カリプソ」というギリシャ神話の魅惑の女神の名を冠した
「カリプソ・キャバレー」
先ほどまで本読みをしました。
読んだ箇所は、先週のおさらいで「銀杏が330番に通う経緯」、
それから、「犬を盗んできたフーテンと、破里夫」、
「犬屋・刑事・サカリノと主人公3人」、「盲導犬学校の先生と研修生」
に進みました。
先週のおさらいは面白く、この劇の起点となる「銀杏」と「夫」の
エピソードをもう一度味わいました。海外に単身赴任する朝、
妻がかつての恋人とやりとりしたラブレターを持ち出し、
それをロッカーの330(みさお)番に封印して毎日、妻をロッカーに
通うわせる夫の心理状態もさることながら、意外な意見も出ました。
それは、「銀杏」はやはり「夫」を愛しており、でなければ
毎日100円を入れにロッカーに通わない、という意見でした。
私など、特に「夫」がバンコックの安キャバレーで、女に撃たれて
亡くなった後なら、業者にコインロッカーを開けてもらえば
良いじゃないか!?、などと考えてしまうタチですが、
「銀杏」の愛を云々するこの意見は、今まで短絡的に思い描いていた
「夫」の悪役像が覆すおもしろさがあります。
「夫」は、けっこう良い男ではなかったか。
妻の元恋人に嫉妬してレブレターを封印したり、出張先でハメを
外したからところさえも、彼の人間らしいいじらしさではなかったか。
そういわれて見れば、ひとりの役者が演じるように設定されたもう
一つの役「盲導犬学校の先生」が、これまで日本の盲導犬業界に
果たしてきた貢献は誠実そのもので、何も間違ったことは言っておらず、
むしろ「破里夫」や「ファキイル」の方が断然、迷惑な存在に
思えてなりません。知っているようで、これまで思い描いてきた
『盲導犬』は間違っていないだろうか。そういう視点を生んでくれた
本読みとディスカッションでした。おもしろかった!
2025年12月 7日 Posted in
劇団員note
今年もいよいよ12月になってしまいました。
パッと書くことが思いつかない、せっかくなので、
今年1年を、僕の携帯に眠ってる写真フォルダとカレンダーを見ながら、ともに振り返りたいと思います。
撮ったけど、何のために?みたいな写真の供養でもあります。
【1月】
◎今もやってるヨルノヨの撤去から新年スタート。
◎1月15日のカレンダーに「ベットが届く」の文字。そういえばベット買い替えました。
*写真フォルダに1月の写真なし・・・
【2月】
◎初めてオペラの裏方やりました。
◎3月の『オバケッタ』の準備が密かに始まる
◎2月7日に 「粗大ゴミ」の文字。昔のベットと布団を捨てました。
→そういえば、謎に布団だけ見当たらなかったです、と収集業者から連絡あり。
すっごい、すんごい汚かったのに・・・・あの布団は何処へ・・・
*写真フォルダには劇場下見の写真のみ・・・
【3月】
◎『オバケッタ』 本番近いので、大きな仕事は受けずに倉庫整理したりと少し緩やかな日々
◎豪雨&強風の大さん橋で撤去作業。目の前が海のせいか、気分はカニ漁船
◎月末にオバケッタ本番! オペラシティのHUBに吸い込まれる日々。
舞台で使用する「ポジションランプ」 なぜ写真を撮ったのか、不明。
【4月】
◎オバケッタ地方公演。初めての大分と安定の松本。
◎後半からはミュージカル『李香蘭』の裏方。手引きバトンに緊張する日々
大分で食べた、美味しい宮崎地鶏と特大おにぎり。左上はステーキじゃなくておしぼりです。
【5月】
◎中旬まで『李香蘭』 曲のナンバーが耳から離れなくなる
◎初めて劇団四季倉庫へ。スナックでカラオケ地獄。
◎ドライブ小旅行
長野で見かけたワイルドな配線。 しかも屋外。
【6月】
◎仕事の合間に、8月の少女仮面の再演に向けて、稽古場道具や仮面などの作業を進める
◎舞台技術ワークショップでメイクしてもらう
◎浦和のスターバックスで、トリプルエスプレッソラテにハマる
カツラと髭をつけてもらった。食事にイチイチうるさそう。陰険な顔しとる。
というわけで、ちょっと飽きて、長くなってしまうので続きはまた今度。
絶対に続き書きます。絶対に。
(齋藤)
2025年12月 6日 Posted in
中野note
今日は子どもたちの小学校で合唱の発表会がありました。
私には別件があるので椎野が一人で行くことになっていましたが、
昨晩に娘が名古屋の実家に電話をした結果、私の母と姉が来ることに
なりました。たった一本の電話で二人の新幹線往復日帰りの旅を
させる。なかなかの剛腕です。
昨日20:00に電話して、12時間後に母と姉はうちに到着。
私は別件、すなわち「あっぱれフェスタ2025」に行きました。
毎年恒例、横浜市旭区の福祉作業所20軒以上が旭日公会堂に集結して
店舗とステージを展開する大規模文化祭です。
同時に、二俣川駅ビルのサンハートで展示も開催。
私はここ毎年、ホールでの演し物大会の総合演出を拝命していて、
細かな段取りを調整して円滑にいくようにしたり、ピンスポットを
振ったり、トラブル対応にあたっています。
要するにイベントの用心棒みたいなもの。
各事務所で働く皆さん、彼らを支えるスタッフの皆さん、
クリエイターの方々とも、一堂に会する同窓会的な雰囲気に、
安心します。今年は参加者もサポーターもさらに増えて、
巨大化しています。終演後に見に行った展示もステキでした。
終わって帰ってきてから、家族と過ごしたり、県民ホールに
ファックスのチェックに行き、新横浜に母と姉を送りしました。
それでもまだ早いので、ここ一月先延ばしにしてきた懸案、
ダイアンへのクリスマスカード書きを終えることができました。
おかげで、なかなか気持ちの良い1日でした。
また、このところ、久々にホメロスの『イリアス』を読んでおり、
ちょくちょく登場するクレタの王「イドメネウス」に注目しています。
これまであまり真剣に聴いてこなかったオペラ《イドメネオ》に
興味が湧き、いくつか録音を聴き始めたところです。
2025年12月 5日 Posted in
中野note
昨日、『ビニールの城』を読み終わりました。
だから今朝はいきなり仕事をし、読書をして、落ち着いた気持ちで
1日を始めることができました。台本を読んでいると、何があっても
まず台本で、一定ページを進まなければ、どうにも落ち着きません。
そして、その後に始動、という感じで過ごすので、1日が盛り盛りに
なります。それにしても。
自分には、ナマの相手がどうしても嫌だという主人公の生理が
縁遠く感じますが、ヒロインの「ケモノ臭いのがいやなんでしょう」
という迫り方には、同じように恐怖を感じないではありません。
その辺り、女性と犬とを結びつける『盲導犬』が底流している
ように感じられます。唐さんは、魔子さんのなかにずっと
『盲導犬』の「銀杏」を見て、それを大切にしてきたのでしょう。
また、年内に『アリババ』を読んでみようと思います。
新宿梁山泊が上演した『アリババ』の映像が有料で公開されるよう
ですし、あの短編について、ちゃんと考えてみようと考えています。
前にWord打ちをしっぱなしにして、誤字脱字チェックも疎かにして
いたのをきちんと読み直してみるつもりです。
そういえば。
唐さんは、いつだったか、ついに三島由紀夫さんに自分の劇を観て
もらうことができなかったと、残念そうに語ってくれたことが
ありました。でも、澁澤龍彦さんは共通の知り合いだし、澁澤さんを
通じて、三島さんが『アリババ』というタイトルを気にしていたことは
聞き知っていたそうです。それだけに惜しまれるのでしょう。
また、別役実さんの『マッチ売りの少女』と『アリババ』とは同じ
1966年に発表された作品であり、両方とも、復讐するために子が親を
訪問するという点で共通しています。どちらが早く発表されたのだろう
と疑問に思っています。そういうことも調べてみたい。
年が明けたら、両方ともオンラインWSの俎上に上げようと考えて
います。
2025年12月 4日 Posted in
中野WS『盲導犬』

↑新宿駅サブナードのコインロッカー。モデルはここかな?
歌っているさなか。一人の女が、コインロッカーの
330の前に立つ。歌い終る頃、女はマッチをつけ
て、ロッカーの鍵穴に押し当てる。間。破里夫は
それをじっと嗅ごうとする。
女、またマッチをすって穴に押しあてる。
破里夫 もし。
女 がまんしてね。
破里夫 もし。
女 こらえてね。
破里夫 ええ。あの―
女 しばしよ。しばしの間なの。
破里夫 こりゃ、何の匂いですか?
女 爪です。
『盲導犬』といえば、上記の「銀杏」登場シーンに
触れないわけにいきません。
「銀杏(=女)」のせりふ、初めの3つ目までについて。
唐さんは、
「破里夫」に言うんじゃない、
コインロッカーのなかのラブレターに語りかけるんだ、
と教えてくれました。
(初演の)魔子ちゃんはそうやってくれた、とも。
ところが、このシーン。「女」は初めから「破里夫」に
語りかけているようにも取れるし、事実、たいがいの
上演はそうしています。
唐さんがそう書いたのか、それとも、緑魔子さんが、
唐さんが書いた以上のことをしてしまったのか、
それはわかりません。が、やはり、「ラブレターに
語りかける」方が良いに違いありません。
唐さんから受けた細かな指導として、同じせりふでも、
話しかける対象を変えるだけでこんなにも役と劇が膨らむのだ
という証拠として書いておきます。前にも書いたかも
しれませんが、もういっぺんここに書いておきます。
2025年12月 3日 Posted in
中野note
↑バカルディくらいは、私も知っています
今日も真面目に『盲導犬』について考え、
ここに書くつもりだったのですが、先ほど食べたケーキに
かなり強いラムが入っており、ベロベロになってしまいました。
私は酒が飲めません。
父は酒屋の次男なのですが、彼も飲めず、
母と姉はやや飲めるけれど、私は父に似てしまったのです。
大学生の時に毎日、カルーアミルクを飲んで鍛えようとしたのですが、
カルーア薄々の牛乳多め、さっぱり味で飲みやすくなるばかりで、
瓶のカルーアがまったく減っていかないことに愕然としました。
そういうわけで、運転は得意です。
唐さんにすらも、いつかご自宅を訪ねた際に
「中野にこれを買っておいたよ」とグレープフルーツジュースを
差し出され、私は申し訳なさと嬉しさでいっぱいになりました。
今日はこのくらいにして寝ます。
もうすぐ『ビニールの城』の研究が終わります。
今回は時間がかかり、一ヶ月と少しを費やしています。
あの作品に出てくる「電気ブラン」を飲めずして、
自分には内容を云々する資格はないように感じてしまいます。
一度、神谷バーに行き、舐めてみるくらいのことはしなければ
なりません。
2025年12月 2日 Posted in
中野WS『盲導犬』
↑2005年に新国立劇場で『盲導犬』を上演しました。その時のチラシです
昨晩は次の三つの場面を読みました。まずは整理していきます。
①「影破里夫」、「フーテン」を説得する。
「破里夫」が「フーテン」を説得します。
時に甘い言葉をささやき、時に腕力で。要するに飴と鞭です。
寄るべなく生きる「フーテン」に、「破里夫」は目標、すなわち
「星」を目指して生きる大切さを説きます。そうして、自らが
大切にする不服従の盲導犬「ファキイル」をともに探すよう
促します。
が、「フーテン」はなかなか感化されません。腕づくで言うことを
聞かせようとする「破里夫」から「フーテン」は逃げます。
「破里夫」は望みを託して叫び、劇中歌を歌います。
②「破里夫」、ロッカーに通う「女」に出会う
そこへ、ロッカーに通う「女」がやってきます。
彼女の名は「銀杏」。毎日、330番のロッカーに通う彼女は、
そこに自分の大切なものが仕舞われていると言います。
鍵はなく、それを爪でこじ開けようとしているために、
鍵穴は剥がれた爪で埋まり、その爪に火を灯すことで、
鍵穴を壊そうと試み続けているのだそうです。
「破里夫」はそんな「銀杏」に興味を持ちます。
「銀杏」は貞淑なる人妻のようでいて、どこか「破里夫」を
誘うような物腰でもあり、それが「破里夫」を魅了します。
「銀杏」によれば、このコインロッカーには自分のような女が
たくさん通い、それぞれの大切なものが、このロッカーに
封じられていると言います。
③「銀杏」とその夫、封印されたラブレター
次第に、「銀杏」が330番に通う理由が明らかにあります。
それは、彼女が大切にする、昔の恋人とのラブレターが
ここに封印されているからでした。恋人は「良い人」だった
と「銀杏」は言います。
「銀杏」の「夫」は商社員で、タイのバンコクに単身赴任して
いました。そして南に向かう朝、妻が元恋人と取り交わした
ラブレターを330(みさお)番に入れ、鍵を持っていってしまった
のです。以来、「銀杏」はその所有権を維持するために、毎日
100円を入れるためにここに通っています。それが、「夫」の
仕掛けた罰であり、貞操帯でもあるわけです。
ところが、「夫」はバンコクで亡くなってしまいました。
安キャバレーのダンサーに入れ上げていたところ、その女に
拳銃で撃たれたのです。逃げるところを後ろから頭を撃ち抜かれた
夫は死に、鍵は永遠に失われました。だからこそ、「銀杏」は
今もここに通い続けているわけです。
という、劇の背景が語られます。
現在位置は、
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です。