6/6(金)名人 山城少掾 BOX

2025年6月 6日 Posted in 中野note
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豊竹 山城少掾のBOXを買って聴いています。
※「少掾」と書いて「しょうじょう」と読みます。
CDが9枚、DVDが1枚入っており、飽きることがありません。
きっかけは『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』でご一緒した
白石加代子さん。白石さんから、このような明治・大正・昭和
の名人がいたことを教わりました。

白石さんは若い頃に山城少掾の『合邦』を聴いて、
継母と継子による禁断の恋の物語に魅せられたそうです。
他に、唐さんも好きな映画『PHAEDRA(邦題:死んでもいい)』
にも影響を受けたと教わりました。
そうした蓄積が後年に代表作となった『身毒丸』に結実した
のだと想像します。

ともかくも、山城少掾の芸は味付けが濃く、
一語一語どころか、一音一音に人間がいっぱいに詰まっています。
一音一音なだけに、表情の移り変わりがすさまじく、
情報量が満載なのです。

目の前で『少女仮面』の稽古をしていて、せりふがどうにも
平板に感じ、よし、この域を目指そう!と思わずにはいられません。
たった数秒のなかにこれだけ表現のチャンスがあると知る、
それだけで変わっていくと思うのです。

奮発しましたが、それだけの価値が充分にあるお宝です。

6/5(木)ポスターも作ります

2025年6月 5日 Posted in 中野note
『少女仮面』2025チラシ_表.JPG
↑これはチラシの表面。ここに裏面からいくつかの情報を流し込んで
ポスターが作られます。現在、デザイナーの秋澤一彰さんが作業して
くださっています


今回の『少女仮面』、思い立ってポスターも作ることにしました。
最初はチラシだけで良いと考えていたのですが、デザインも評判が良いし、
何より、先日に神保町を歩く機会があって、さまざまなポスターが
軒先に貼ってあることに気づき、羨ましくなったからです。

SNS全盛の世の中ではあります。
チラシ自体が要らないのではないかという向きすらあります。

けれども、よくよく街に貼ってあるポスターを見ていると、
その前を日々、何百・何千人という人が通り、中には興味を持つ人も
いると実感しました。近頃は印刷費も安いし、余ったら受付の飾りにしたら
良いとも考えています。

私たち唐ゼミ☆がいちばん熱心にポスターを貼って回っていたのは
浅草でお世話になっていた頃で、いつも定番の店を訪ねては、
ご店主さんたちが優しい言葉をかけてくれました。

出来上がったら、久々にこつこつ巡ってみようと思います。
ここなら貼れるよ!という場所があったら教えてください。

6/4(水)蚊のはなし

2025年6月 4日 Posted in 中野note
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↑明治大学特任教授としての初回講義に、唐さんは蚊帳をつって臨んだという


今日は朝早くから仕事だったために、『住み込みの女』を早朝のみで読み切る
ことができませんでした。一日にこれだけ読むと決めた、6割で出かけることに。

結果、夜に続きを読みました。先ほどまで。
が、難敵が現れたのです。

机の上に広げた台本の原本やパソコンと向き合っていると、どうにも脚に
まとわりついてくるのが、蚊でした。仕方なしに作業を中断して床に座り、
じっと空間に目を凝らして、蚊の姿をとらえました。

それから、手のひらで挟みつぶそうとトライすること5回で、
ようやく仕留めました。10分は中断してしまった。
安心して再び『住み込みの女』と向き合っていると、どうにも痒い。

先ほどの蚊に刺されたところが疼くのかと我慢しながら
集中、集中と言い聞かせましたが、ハッと気づくと、
腕のあたりにもう一匹まとわりついている。

最初から2匹いたとこの時点で認識し、こいつを始末するのに、
さらに10分の中断を余儀なくされました。
蚊の一匹や二匹にこうもすべてを支配されるなんて。

蚊といえば思い出すのは『東海道四谷怪談』で、
主人公の田宮伊右衛門は、遊び金に窮して、女房お岩の止めるのも
聞かず、蚊帳を売ってしまうシーンが好きだと、唐さんは言っていました。

いま思えば、上下水の整備が現在よりはるかに劣っていた江戸の夏には、
信じられないくらい多くの蚊がいたことでしょう。乳飲み児かかえたお岩に
とって、蚊帳とは赤ん坊を守るための生命線だったのです。

その生活の重さが嫌で、ますます自棄に暮れる伊右衛門。
人間のどうしようも無さが露わになるシーンです。
そうして蚊帳は、『少女都市』における重要アイテムになったものと思います。

6/3(火)『黄金バット-幻想教師出現-』本読みWS 第7回

2025年6月 3日 Posted in 中野WS『黄金バット-幻想教師出現-』
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↑理科の実験で使う15㎝のガラス棒。これが「ヤゴ」の体内に入る際の
克明な描写を、唐さんはト書きで書いています。5㎝入るらしい!


昨日のオンラインWSについてレポートします。
なかなか、ハードなシーンではありますが。

「ブドリ」と「ヒサコ」、二人による「三上先生」との思い出の奪い合いが
続いています。「ブドリ」は「三上先生」に風鈴学級で教わったという。
「ヒサコ」は「三上先生」と宮城県の成瀬二中以来の仲だという。
どちらが嘘をつき、どちらが真実を語っているのか。

「ヒサコ」は「ブドリ」が大事にしていた「三上先生」の耳を奪い、
これを切り刻む。ここで、耳を切ったゴッホのエピソードがリフレイン
される。耳を切ったゴッホは狂人であったと「ヒサコ」は断じ、
「ブドリ」が耳を切ることのなかにゴーガンに絶交されたゴッホの
哀しみを見ようとする。同じように、「自閉症児」を単なる落伍者と
見なすか、そこに内面を認めるかで、二人は対決する。

追い詰められた「ブドリ」が「ヤゴ」を助けに呼ぶと、
「ヒサコ」と「鎌いたち」らは協力し、むしろ「ヤゴ」の体内にある赤痢菌を
「ブドリ」に移すという懲罰を考えつく。そこで、「ヤゴ」の肛門にガラス棒を
突っ込み、それを「ブドリ」の口に入れるという恐ろしい刑が行われる。
黄色いウンコのついたガラス棒=黄金バット攻撃!

と、そこへ、「黄金バット」が登場する。
1幕の「男」が、滝沢先生に扮するためにまず女装し、それから
マントを羽織って「女の黄金バット」になっている。役名は「女のタキザワ」。

ちょっと分かりにくいですが、「女のタキザワ」とは、男性である「男」が
化けた姿です。彼が助けに来たことで、さんざんな目に遭った「ブドリ」と
「ヤゴ」が息吹き返します。

各幕の終わりには必ず、「黄金バット」が登場するんだ!
というパターンが見えたところで、昨日はタイムアップ。

次回6/8(日)は2幕終わり〜3幕冒頭を読みます。




6/2(月)唐十郎作品中、トップクラスの下ネタ炸裂

2025年6月 2日 Posted in 中野note
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先ほどまで本読みWSをしました。
『黄金バット-幻想教師出現』第二幕の中盤です。
今日は初参加の方もいて、途中からということで物語に対して
迷子にならないよう工夫して進めました。

そうすることで、ずっと参加してくださっている方にも、
物語を最初から振り返り、全体の見取り図の中で目の前のシーンが
どのように進行し、登場人物がやりとりしているか、
より深く理解してせりふを言う機会になると考えています。

しかし、よりにもよって、今日の場面は、
数多ある唐十郎作品中の下ネタのなかで、自分がトップと考える場面でした。

あろうことか、敵役たちは青年主人公の尻を露出させ、
その肛門にガラス棒を突っ込む。そして、その棒を抜き払った後、
黄色の棒=黄金バットというギャグとともに、それをヒロインの口中に
突っ込むのです。

これには李さんも困ったろうなあ。そう想像します。
まして、棒を突っ込む「鎌いたち」役を初演で演じたのは、
誰あろう唐さんなのです。大よろこびでこの場面に取り組んだだろうと
容易に想像がつきます。

そういうわけで、今夜も燃えました。
詳しくは、明日!

6/1(日) 『少女仮面』の英語のタイトル、ご存知ですか(椎野)

2025年6月 1日 Posted in 劇団員note
2025年8月公演『少女仮面』のチラシができました。
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チラシの表面を見て、察してくださったとおり、
私と津内口淑香が「春日野八千代」を演じる
二組での上演です。

椎野裕美子が春日野八千代を演じる、
昨年の上演メンバーは「同期の桜組
(新メンバーもいます!)

津内口淑香が春日野八千代を演じる、
新キャストメンバーは「ニューウェーブ組

わたしは、「ニューウェーブ組」では
老婆としても出演します。

昨年のメンバーとさらに舞台を磨き上げるのは
身震いするほど楽しみですし、
新キャストメンバーと、新たな役に取り組むことは
挑戦と勝負が待っていて、たくさんの発見がありそうです
ああ、これだから芝居は最高だぜ。

ところで、『少女仮面』の英語のタイトルご存知でしょうか。

これが公式なのか、
これに唐さんがゴーサインを出したのか正確なところは
わかりませんが、こちらの書籍では

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The Virgin's Mask

と訳されていて、「少女仮面」ではなく、「処女仮面」です。
日本語タイトルと英語タイトルで、かなり違う印象を与えます。

そして私は、『処女仮面』こそ
唐さんがつけたかったタイトルではないかと考えています。

この作品は劇の冒頭、少女・貝と老婆の会話の中で
「永遠の処女(=ヅカガールの男役)の考えることは油断が出来ないよ」
と老婆が少女・貝に忠告します。

そして、物語は進行し、男役をきどる一人の老女優は本性を晒され、
仮面の下の「女」の部分を丸裸にされていく。

男役の老女優は「永遠の処女」の仮面をつけさせられていると考えると
タイトルは処女仮面の方が正しい。

ただ、『処女仮面』では、あまりに公序良俗に反するタイトルだから
『少女仮面』にしたのではないでしょうか。

みなさんは英語のタイトル、どう感じましたか?











5/31(土)地球に落ちて来た男

2025年5月31日 Posted in 中野note
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今日は朝から北千住に行きました。
リーディングドラマ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の最終公演地がここなのです。

確かシアター1010に来たのは、三枝健起さんが演出し、
三田佳子さんが主演した『秘密の花園』以来のことです。

あの時はまだ、朝倉摂さんもお元気で、ゲネプロから観せてもらった記憶が
あります。初め、たっぷりとしたペースで演じられる『秘密の花園』にとまどった
覚えがありますが、翌日にお客さんが入って納得させられました。

三田佳子さんのファンが客席を埋め尽くしているのですから
いつもの唐十郎節でまくし立てると話について来られなくなる。
そこを三枝さんと三田さんは分かっていて、わざとゆっくりに、丁寧に物語を
運んでいました。確かに、せりふが内発的に求めるテンポはあります。
が、お客に伝わらなければ何にもならないということを
自分はあの公演から学びました。

たしか、漫才コンビのナイツも、浅草でやると、ゆっくりかつ分かりやすく
なるのだと言っていました。チェリビダッケがフルトヴェングラーにある曲の
テンポについて訊いたところ、「それは演奏する空間によるだろう」と
言われたという有名なエピソードもあります。

・・・ということを、北千住駅についた瞬間に思い出しました。

そして、夜はKAATに行き、デヴィット・ボウイのミュージカル『ラザルス』初日
にも立ち会いました。ミュージカルと謳われてはいますが、これは
中島みゆきさんの「夜会」のようなもので、全編がボウイがさまざまな時代に
つくってきた楽曲を再構成して成り立っています。

それらをつらぬく筋立てが変わっていて、地球に落ちて、帰る手段を失った
男が監禁され、地球での思い出や宇宙にいる家族のもとに戻ることを夢想
する、というストーリーです。

最初から最後まで瞠目しながら観て、ボウイの音楽をたくさん浴びながら
要するにボウイは、地球人として違和感だらけだったということに
思いを馳せました。自分は宇宙から来たんじゃないか。
そう思っていたという内容でした。

さらに、遺作としてこのミュージカルを発表したということは、
つまるところ近く訪れる死を、宇宙への帰還と位置付けていたわけです。
天才と言えば天才、ナルシストといえばナルシスト。
それを押し切るところにボウイと『ラザルス』の醍醐味があります。

演出・白井晃さんの真骨頂を観た思いです。あれは白井さんしかできない
作品です。と同時に、唐さんもまた『唐版 風の又三郎』の教授役のせりふの
なかで、「おれは天からの授かりものだ!」と吠えていたのを思い出します。

地球に落ちて来たり。天から授かったり。才能は自己を劇化してやみません。

5/30(金)酸辣湯麺の王様

2025年5月30日 Posted in 中野note
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今日は朝から台本を読んで、9:00過ぎには打ち合わせに出かけました。
その後に観劇をして、なんだか食事の時間がとれなかったために
夕方になって中華街に来ました。

ここは観光地ですから、アイドリングタイムがありません。
何時だろうがお店が開いているところが便利です。

久々に張記小籠包に着いて、いつもの通り酸辣湯麺を注文しました。
ここではいつも酸辣湯麺で、女将さんが自分の顔を見ると、
勝手に作り始めてくれるほどです。寒かったので、なおさら旨く感じました。

ここの酸辣湯麺は黒酢を使っていて、他とは隔絶した味がします。
いちばん好きな酸辣湯麺です。

このお店も、酸辣湯麺も、今は亡き遠藤啄郎さんに教わりました。
横浜ボートシアターの代表だった方です。

遠藤さんはこのお店が大好きで、ご一緒するたびに、ご自身が初めて
酸辣湯麺を食べた1970年代パリ公演の時の話をしてくれたものです。
シンポジウムの席で一緒に海外遠征をした寺山修司さんと意見が合わず、
大ゲンカしたのだといいます。

夕方に食べたら、夜遅くまでお腹が空かないボリュームがあります。
そうして夜にも劇を観ました。今日は2本観劇。

5/29(木)むずかしさから得るもの

2025年5月29日 Posted in 中野note
唐さんが1983年に初演した台本『住み込みの女』を研究しています。

毎朝、早起きして読み、間もなく1幕を終えるところです。
ここ数日は序盤の苦しみです。内容が入って来ず、
何度も冒頭から読み直したり、同じ箇所をグルグルして、
いつも通り台本を書き写しています。
日々、なんとか渡り合っている。そんな感じ。

が、ここに来てようやく糸口が見えてきました。
つまるところ、この物語は主人公が営む床屋が舞台です。
その店が、おそらく借金のカタにとられかかっている。
そこに現れたのが住み込みの女中さん的なヒロインで、
彼女が知恵と気働きで床屋を支えています。

現在は1幕ですから、けっこう強気です。
2幕ではいつものパターンで負けてしまうでしょうが、
これからどんな風に敗北へと至るのか、少しずつ読むことにたのしさが
芽生えています。地上げが横行したバブル景気の入り口に立つ時代性も
理解できて、そんな風に少しずつ、糸口をつかんでいます。

床屋といえば、『ジョン・シルバー』『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』
『吸血姫』『蛇姫様 わが心の奈蛇』といった台本がよぎるところもあります。
特に、床屋の兄弟の設定は、『蛇姫様 わが心の奈蛇』を思わせます。
こういったリンクも嬉しい。

そして、何よりの収穫は、唐十郎作品に初めて向き合う時の難解さを
思い出したことです。自分のように慣れている者でもこうなのです。
まして、『少女仮面』に向き合っている今回の唐ゼミ☆公演の初参加
メンバーの気持ちがわかるように思いました。

丁寧に説明の時間を惜しまず、あれこれ例え話もして、できる限り
おもしろく伝えたいと思います。皆さんの生きて来られた人生とも
つながるように。


5/28(水)みんなの飲み会

2025年5月28日 Posted in 中野note
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今日はわたしの家のマンションの一階にある中華料理屋さんに
唐ゼミ☆メンバーで集まり、宴会をやりました。

新しく唐ゼミ☆に加わった琴松蘭子の歓迎会と、
一人舞台を終えた米澤を慰労しつつ、近況と近未来について
語り合いました。皆、若い頃よりもガツガツと食べ、酒も飲むように
なった印象です。うちの一階なので、途中まで息子と娘も参加しました。

ここ数年は劇団員が減る一方だったので
久々に劇団の仲間が増えてうれしく、さらに参加してくれる人を
求め続けようと思いました。誰かいないかな。

もうすぐチラシが完成するし、琴松が持ち前の制作能力を発揮してくれて、
これまででいちばんチラシが撒ける手応えを得ています。
米澤もよくしゃべるようになりました。
希望と展望があります。