8/11(祝月)『お化け煙突物語』本読みWS 第4回
2025年8月11日 Posted in 中野WS『お化け煙突物語』
↑唐ゼミ☆2006年春公演より。一幕終盤ベッドの上で色目を振りまくカイ
読んだ箇所は1幕終盤から2幕の頭まで。
その内容をレポートします。
①探偵と江ノ島カイの会話〜カイの色目修行
「カイ」の流し目は、誰彼ともなく魅了してしまう必殺の流し目であり、
それは「玉の井の女郎蜘蛛」と呼ばれた養母「ツレちゃん」直伝の
ものなんだそうです。「探偵」の質問に答えて、「カイ」はどんな種類の
色目があるか、どんな修行を経てその技を習得したのか、語ります。
例えば、名優の色気になぞらえた「長谷川一夫の銭形色目」
文字通りの所作で繰り出す「振り向きざまの色目」
うつむいたところから見上げがちに繰り出す「逆さ袈裟がけ」
というパターンが「カイ」の色目にはあり、「逆さ袈裟がけ」が
もっとも得意技であるそうです。
その習得法としては、「ツレちゃん」と電車に乗り、車窓から外を
通り過ぎる人々に色目を使って魅了しなければならない、というもの。
厳しい修行だった。そう「カイ」は言います。
②「カイ」の正体が女だと知れる
「本間玲子」が入ってきます。そして驚く。
なぜかといえば、①の色目についての会話中に「カイ」がかぶっていた
フルフェイスのヘルメットをとって長い髪を露わにしていたからです。
「カイ」を男だと思い込んでいた「玲子」はショックを受けつつ、
しかし、「カイ」の繰り出す色目は威力を発揮し続け、「玲子」を
惹きつけてやみません。
③「大塚の母」のベッドに潜り込む「三盲人」
舞台前面で上記のように色目がどうのこうのとやっているうちに、
舞台奥では「三盲人」の作戦が進行します。「大塚の母」こと「ワシ」
への復讐を果たすべく空きベッドに隠れていた「蝉丸」「とかげ丸」
「蜂丸」の三人が色目合戦の隙を突き、いつの間にか「ワシ」の
ベッドに潜り込みます。
④「ワシ」を乗せて走るベッド
「大塚の息子」が「医師たち」を連れて帰ってきます。
病院関係者に「三盲人」が闖入してきたことを訴え、彼らを追い払って
もらうためです。が、「カイ」が色目を振り撒くことで場が混乱します。
そうこうする間に、「三盲人」は「大塚の母」のベッドをトロッコに
連結され、ベッドごと敵である「大塚の母」を連れ去ります。
「カイ」はその際にベッドに飛び乗る。そのベッドこそ「ツレちゃん」
の形見だからです。というわけで「大塚の母」「三盲人」「カイ」の
5人を乗せてベッドは走ります。
1幕終了時点で大仕掛けがある、唐十郎作品の中でもユニークな展開です。
⑤二幕。ベッドを追う「大塚の息子」と「探偵」。
二幕は冒頭のさわりだけやりました。「大塚の息子」は「母」を追い、
「探偵」は「カイ」を追います。「探偵」は一幕最後で「カイ」が
放った色目に「女郎蜘蛛」のオーラ(実際には照明や映像で表現)が
浮かぶのを見て、二人でベッドの行く先を追うことになったわけです。
たどり着いた先は「盲人」たちの滞在する「こうもりホテル」。
このホテルを舞台に二幕が展開します。
『少女仮面』公演によるお休みを挟んで、次回は8/31(日)です。
キリの良いところで、二幕冒頭を復習するところからスタートします。
8/4(月)『お化け煙突物語』本読みWS 第3回
2025年8月 4日 Posted in 中野WS『お化け煙突物語』
↑走行中のトラックの荷台にしがみつく、フルフェイスのヘルメットを
かぶってバイクを運転する「江ノ島カイ」を再現したかったのですが、
現在の画像生成ソフトでは限界がありました。バイクを運転しながら
荷台に捕まっていることが不可能だからです。いずれにせよ、「探偵」
が思わず見入ってしまった理由はよく分かりますね
読んだ箇所は1幕中盤から後半に差し掛かるところ、
青年主人公である「探偵」が登場したのが、特に大きな進展です。
それでは、読み進めたところを整理します。
①先週のおさらい〜三人の盲人たちのこと
先週の終盤にダーッと読んでしまった箇所をおさらいしました。
「蝉丸」「とかげ丸」「蜂丸」が過去にどのような仕事に就き、
働きながら、それぞれの職場から眺める「お化け煙突」に思い入れ
やがて「大塚の母」から買ったメチルアルコールによって失明したか
ということを確認していきました。
②盲人たちの復讐
遠回しに「大塚の息子」に自分たちの被害を訴えていた盲人たち
でしたが、ついに牙を剥きます。自らも売り物であるメチルアルコール
に手をつけてしまったために極度の便秘におちいってしまった
「ワシ」こと「大塚の母」にカンチョウを振りかざします。
「蝉丸」は2本、「とかげ丸」と「蜂丸」は1本ずつ。
合計4本が「お化け煙突」のように見える本数を変えながら
「大塚の母」に迫るというギャグ的なサスペンスが展開します。
※盲人たちがちっとも視力を失っている感じでないところもまた、
この場面のおもしろさです
③「探偵」の登場
「探偵」がやってきます。すると、盲人たちは空いていたベッドに
隠れてしまう。この時点で、上手のベッドに盲人たち、真ん中に「姉」、
下手は「大塚の母」という配置です。
「探偵」はハナクソ探偵事務所、つまり、それだけしがない事務所で
浮気調査や探し物など、パッとしない仕事をダラダラとしているうちに
道で「江ノ島カイ」を見かけたことから、彼女を追ってここにやってきた
ようです。
④「カイ」と「探偵」
病室に「カイ」が戻ってくると、ふたりの会話が始まります。
彼らはちょっと前に道路で出会い、カイがバイクで転倒したところを
「探偵」が助けた、という間柄だと分かってきます。
そして、その前段がふたりの話題にのぼります。それによると、
・まず、「カイ」はバイクに乗りながらトラックにつかまっていた
・それは「ガソリン代」を節約するためではない
・「カイ」はトラックに積まれた荷物を追っていた
・荷物とは、「カイ」の養母、「ツレちゃん」のベッド
・「ツレちゃん」は、玉の井の女郎蜘蛛と呼ばれた娼婦だった
・ベッドと「カイ」の手の間には「蜘蛛の糸」のようなものが見えた
・「探偵」がそんな「カイ」に釘付けになった時、「カイ」も彼を見た
・結果、カーブのところで「カイ」は転倒
・ベッドと「カイ」の手の間には「蜘蛛の糸」のようなものが見えた
・「探偵」がそんな「カイ」に釘付けになった時、「カイ」も彼を見た
・結果、カーブのところで「カイ」は転倒
・転んだ「カイ」を「探偵」が担ぎ込んだ
という経過でした。
また、「カイ」は「ツレちゃん」直伝の「流し目」を持っており、
彼女が見るだけで多くの者が魅了され、メロメロになってしまう
こともわかってきました。これは、舞台上でアクションされると
すごく面白い動きなので、参加者のみなさんが想像できるよう
画面ごしに身ぶり手ぶりで説明をしました。
昨晩は以上です。
時間は、1幕が終わります。
8/10(日)に開催したら、その後は『少女仮面』公演のために
2週間のお休みをいただき、8/31(日)に再開します!
7/28(月)『お化け煙突物語』本読みWS 第2回 その①
2025年7月28日 Posted in 中野WS『お化け煙突物語』
↑参加の方から初演事の配役について問合せがありました。
これを載せます
初回と変わらず、快調です。
内容が平易かつ軽快に進むので、いつもの1回につき20ページ
というペースを超えて、30ページずつ読み進めています。
物語の進行としては。
①相変わらず、「大塚の息子」が「妹・本間玲子」を口説いています。
その口説きから、「大塚の母」が戦後の闇市でお化け煙突周辺の
労働者たち相手にメチル・アルコールを商って皆さんを失明させた
こと、自らもメチルを嗜んだために便秘になって便通が無いために
入院していることがわかってきます。
メチルの影響からか、「母」は気がふれて煙突にのぼり、ワシの
鳴き声を上げたために「ワシ」とあだ名されるようになりました。
※これはおそらく、ギリシャ悲劇『トロイアの女』に出てくる
トロイア王妃「ヘカベ」の影響です。敗戦により夫と息子たちを
殺された「ヘカベ」は、捕虜としてギリシャへと進む船のマストに
のぼり、犬の鳴き声をあげて落下するというエピソードがあります。
さらに、盲人となった顧客たちが、「母」を恨んで病院周辺に
潜伏していることも分かってきます。後に登場する「蝉丸」
「とかげ丸」「蜂丸」らです。この3盲人は、病院の外から、
上層階にある「母」の病室めがけて石を投げ、窓を割ります。
大量に飛んでくる石を「大塚の息子」が受けながら「玲子」を
口説くシーンはかなり笑えますが、一方、盲人たちになぜそんな
狙い撃ちが出来るのか、どうやって「母」の病室の位置を把握し、
そこまでの投石コントロールを身につけたのか、謎です。
「大塚の息子」の「玲子」に対する口説きは続き、
それが彼の拾ったラブレターを根拠にしていることが分かってきます。
本当は「大塚」宛に書いたものでなく、「玲子」が別の男に向けて
書いたものをたまたま「大塚」が拾ったことが判明し、「大塚」は
自棄に暮れます。
と、そこへ、バイク乗り姿の人が現れます。
一見、男性に見えるこの人こそ、「玲子」の思い人であり、
実はこの劇のヒロインです。つまり、女性。名を「江ノ島カイ」と
言います。「カイ」は玉の井の娼婦に育てられ、その娼婦が愛着した
ベッドがこの鉄道病院にあると知ってここに来たのですが、
娼婦に育てられた経歴からついつい他人を魅了する癖があります。
その必殺の流し目により、「玲子」がメロメロになってしまうところが
ギャグとして演じられます。「カイ」が流し目すれば色目となり、
「玲子」は惚れ惚れと口を開ける、という設定です。
二人の間で右往左往する「大塚の息子」がギャグになっています。
・・・長くなったので、盲人たちの登場は、また明日。
7/21(祝月)『お化け煙突物語』本読みWS 第1回
2025年7月21日 Posted in 中野WS『お化け煙突物語』
↑引き続きこの本にお世話になります
新しく取り組む『お化け煙突物語』本読みの初回でした。
皆さん、新たな気持ちで臨んでくださっています。
この『お化け煙突物語』。
唐さんの作品としてはそんなにメジャーでなく、
2006年に私たち唐ゼミ⭐︎が上演した他に再演の話も聞かない演目です。
が、冒頭から読んでみると、これが楽しい。
物語としては、前半である第一幕は鉄道病院を舞台にしています。
病室には、性病に罹っている娼婦らしき「姉(苗字は本間)」と、
彼女を見舞いにきた「妹」、戦後にメチルアルコールを飲料として商い、
自らもそれを飲んだために体を悪くした「母(苗字は大塚)」らが
いて、そこに、自分の探すいわく付きのベッドを求めてヒロインが
やってくる、という内容です。
昨日はそのうちの、「本間姉妹」の会話、
「大塚の母」を見舞いに来た「大塚の息子」と、彼が惚れ込む
妹の「本間玲子」との会話を読みました。
軽妙で、スイスイ進むやりとりでした。
わかりやすい設定、コントのような掛け合いがおもしろく、
演目の初回としては異例の約20ページ進むことができました。
全10回ほどかかるかな、と思っていましたが、
これはもっと一気呵成に、8回ほどでいけるかも知れないという
予感がしています。(これは、見立てて今後に方針を出します)
ともかくも、思い込みの激しい「姉」としっかり者の「妹・玲子」
のやりとり、「玲子」が自分に気があると思い込んでいるバカ息子
「大塚」の口説きによる軽妙な空回りにより、『お化け煙突物語』
は快調に滑り出しました。
スピード感があって、爽快な印象です。
1980年代に入って新展開を模索していた唐さんが、
『下谷万年町物語』をテコに出自である下町モノを書くことで
新たな扉を開いていく。過去を題材にしたものなので地味にも
思えますが、とにかく唐さんが着想を得てイキイキしているのが
体感できます。来週が楽しみで待ち遠しい、そう思わせてくれる
始まりでした、次回は7/27(日)です。