7/1(木)ワークショップレポート(林)
3ヶ月の長編、ついに完結します。
最後のレポートをさせていただきます!
二幕「ヘア・ジャック」
その名の通り、カツラ屋の女房オカツの髪の毛をめぐって
シャラは裁判にかけられる。
責められるシャラは呉一郎を挑発し、また呉一郎も反発する。
そうしてどんどん亀裂の入っていく二人。
ついに暴れ出した呉一郎のナイフがシャラの手に当たってしまう。
今週はここからです。
それではいってみましょう!
呉一郎のナイフがシャラの手に。
我に返った呉一郎はシャラにハンカチを差し出すが、
シャラは拒絶する。
そして、その血を名和四郎にすすらせる。
しかし血は止まらず、呉一郎は再びハンカチを差し出す。
シャラはそれをひったくり、タバコを要求する。
タバコに火をつけようとした呉一郎のマッチは、シャラの前髪を燃やしてしまう。
シャラが思わずそれを見るために手にとったのは、
先週でてきた"鏡のない手鏡"。
シャラはそれを覗きながら言うのです。
こうして手鏡の中をくぐりぬけてずんずん前にすすむだけ。
いつか後から抱きつかれるのを待っているのは処女だと言ったわね。
でも今は前からガシッと抱きつくの。
だってあたし、車内で嬲られる百戦錬磨のメギツネだもの。
"嬲られる"
思わずシャラが言ったその言葉にすかさず食らいつく呉一郎。
やはりシャラには被害者意識がある。
もう一度はっきりとシャラの言葉を聞きたい呉一郎は、
嬲られていたのか、戯れていたのか、とシャラを問い詰める。
しかし、その問い詰めもパンマ稼業をしてきたシャラには
鏡のない手鏡を見つめ、歌い出す。
鏡の前では一人ではない
けれど聞こえる声は一つだけ
隣の部屋の囚(とら)われの女を笑う口は一つ
その時、名和四郎が弓をひく。
そこには、円ができあがる。
名和四郎は弓をひき、思いを言葉にする。
髪の毛を奪ったのは自分であること。
しかし、学生たちはさらに追い詰めてくる。
学生たちの手には、鏡のない手鏡。
そしてそれはいつの間にか、電車のつり革へとかわっている。
呉 はい、そうです。証明します。
誰か筆記して下さい。
ついに、完全な円が完成する。
「帰ってこい、ぼくのダントン!」
6/24(木)ワークショップレポート(林)
とその時、按摩、そして弟子たちが現れる。
彼らはオカツの盗まれた髪の毛を探しているのだ。
按摩たちは死体の行方を捜していたはずが、
番頭に感化され、髪の毛を追う刑事になっている!
そこへ番頭が現れ、シャラの髪を見るや
おかみさんの髪はこんな具合だったと按摩たちに訴える。
疑いをかけられたシャラは呉に助けを求める、が、
「ここは取調室なんです。」
と、シャラのことを突き飛ばす。
人が変わったように急に敵へとまわる呉一郎にシャラは驚く。
そしていつの間にか、オカツの髪をめぐって裁判が始まっている!
按摩は呉一郎を証人に仕立てあげ、シャラを問い詰める。
そこへ血だらけのカツラ屋の主人が按摩の弟子に連れられ、
オカツを殺したことがわかる。
按摩はそれに対し、
「下手人はこれで割れたか、では上手人の件に入るとしよう。」
(上手人は下手人に対しての造語。)
もはや、オカツを殺した犯人の件はこの一行で終了。。!
按摩たちにとってそれよりも重い罪は、その髪の毛を盗んだこと。
ヘア・ジャック!
按摩はシャラを朝鮮女だと見なし、問い詰めるが
シャラの回答は、"今は朝鮮パンマよ"
昔は違った、朝鮮女にされただけだ、とシャラは訴える。
しかし按摩たちは、ならば朝鮮パンマになるために
その髪の毛を奪ったのではないかと切り返してくる。
どんどん朝鮮女の髪を盗んだ女にしたてあげられていくシャラ。
初めはシャラの言葉に動揺していた呉一郎だったが、
シャラに追い打ちをかけるように、
電車でのできごとを"戯れていた"と言い切る。
その言葉を聞いたシャラは国士舘の制服を着た名和四郎を
戯れていた相手に見立て、呉一郎をひたすら挑発する。
どんどん亀裂が入る呉一郎とシャラ。
按摩はここぞとばかりに呉に尋ねる。
按摩 証人、お前はどんな誤解をした?
呉 誤解はしません。
按摩 誤解はしないだと? この女が嬲られていると思ったと言ったじゃないか。
いじくり回されて手をあげたと言ったじゃないか。
色んな人の手を切ったと誘導しようとする。
しかし、シャラに挑発されてしまった呉一郎に、もはやそんな余裕はない!
瀬良皿子は、この女は、
呉一郎、ついにはジャックナイフを取り出し、暴れ出す。
6/17(木)ワークショップレポート(林)/中野演出による舞台オーディション情報
先週のおさらい。
病院で目が覚めた呉一郎。
シャラの手を追いかけていたところ、シャラが一団の学生に嬲られているのを目撃します。
そのことを按摩が"戯れていた"という風に表現し、
それを聞いた呉一郎は、またベッドに倒れてしまうところまででした。
さて今週はその続きから。
按摩の弟子が、カツラ屋の番頭を連れて来ます。
ここで、按摩の名前が"刑事"に変わっている。
刑事は、風呂敷包みを取り出す。
その中身は、カツラ屋の女将である"オカツ"の首。
(しかし、そのオカツの頭、髪の毛がない!)
刑事は、この殺人事件を調査しているのであった。
番頭は、オカツの髪を探して欲しいと刑事に訴える。
しかし、そもそも死体の紛失届けが出ていない。
そのことを責められた番頭は、オカツの首を持って逃げ出してしまう。
静かになった病室。
そこへシャラシャラコが花束を持って、名和四郎とともに現れる。
と、同じ病室の布団から、北原北明が起き上がる。
誤って矢を射ってしまった名和四郎は、そのことを謝りに来たのだ。
しかし、許す様子のない北明。
シャラは二人の間に入り、赤くただれた北明の背中をなでようとする。
その時、チョゴリの女たちがシャラの後(うしろ)より現れ、
急にシャラは北明の背中に爪を立てる。
またもや自分ではない力が働いたシャラ。
(ここの場面でも唐ゼミが上演した際には、チョゴリの女たちがシャラの手に
自分たちの手を添えて、北明の背中をひっかかせるような形にしたそうです。)
腹を立てた北明は、シャラに約束していた仕事を無しにしてしまう。
しかし、なんとかすると決意し、泣いている名和四郎をなだめる。
その姿はまるで母!
目覚めた呉一郎は、シャラを見つける。
国士舘の制服に身を包んだ名和四郎を見つけた呉一郎は
電車で起きたできごとを思い出し、シャラに真相を問う。
なぶられていたのか、戯れていたのか。
呉 満員電車の中で、あの時、あんたは手をあげたね。
シャラ ええ。
呉 あいつにつかまれ、ぐいぐいと押しつけられながら、あんたは手をあげたね!
シャラ ええ。
呉 嬲(なぶ)られ、なぐさみものにされながら、千と一本の手のこちらに手をあげたね。
シャラ いいえ。
呉 いいえだって?!
というところで今週のワークショップはここまで。
あと残すところ2回!
どうぞ、よろしくお願いします!
6/10(木)ワークショップレポート(林)
追い詰められたシャラシャラコ。
そのシャラへ呉一郎は、手を伸ばす。
そして"ダントン"が語り始める。
千夜一夜物語を抜け出そう、二人で完璧な円を目指そうと。
その手を取り、瀬良皿子は唄う。
坂を下るすごい手のお方
耳までとどくすごい目の人よ
あたしの心をうばってどこへゆくの
ここには不法が横行しているの?
そこには転落によって男っぷりをあげた呉一郎。
下り坂をいく二人!(冒頭の二人の会話を思い出しますね。)
そして、地雷の仕込まれていた"ダントン"は脱出のごとく宙に舞う。
とここで、先週残したままであった、最後のト書き。
名和四郎は、もう一本の火矢を弓につがえて放つ。
笛の音をひびかせてとんでゆく。
この名和四郎の放った矢の意味。
私も最初読んだときは、名和四郎も苦しみを乗り越えるべく、ダントンと同じように
矢を放ち、跳び立つ。というようなざっくりとした捉え方をしてしまっていました。
がしかし、切実な彼自身の立場にたってみると、そうではない。
カツラを被り、チョゴリを着たシャラは"日向"の母。
二人の脱出は名和四郎にとって、自分の女を連れていかれることになるのです。
そこで名和四郎は矢を放ち、飛び立つ二人に待ったをかける。
名和四郎が呉一郎のライバルへとなる瞬間です。
そして二幕へ向かいます!
二幕 ヘア・ジャック
留置場に収監されている呉一郎。
身元引受人として、按摩が現れる。
シャラと呉一郎は脱出をはかるも、一緒になれず、
呉は飛び立った手のことを思い日々を過ごしていた。
ある日乗った電車で、つり革につかまる手の中に、シャラの手をみつける。
しかしそのシャラが国士舘の制服を着た学生たちに嬲られているのを目にしてしまう。
呉一郎は彼女を救うためナイフを振るい、様々な手を切ったのである。
それを聞いた按摩は、
朝鮮人パンマが戯れていただけだ、と呉一郎に言い聞かせる。
弁解をはかる呉一郎であったが、またベットに倒れてしまうのであった。
と、ここまででワークショップは終了!
とうとう二幕へ突入。
一幕ラストで呉一郎のライバルになった名和四郎が二幕でどうなるのか。
そして、シャラは嬲られていたのか、戯れていたのか。
"ダントン"を失った呉一郎はこの後どうなってしまうのか。
また来週も、よろしくお願いします!
6/3(木)ワークショップレポート(林)
先週は、按摩の義手を見破った呉一郎が、大車輪を完成させたところでした。
ではいってみましょう!
呉一郎は鉄の棒と義手でできあがった大車輪をシャラに見せ、
「円はこれでいいのですか?」と聞きますが、シャラの返答は「いいえ」
「その大車輪は円じゃない。」
「君は直線しか知らない人です。
君はおそらく自分の心臓を四角に切って定規で心弁の尖をちょん切ることができるが、
勢い余って辺という辺を気が向くままにふやして、
それを円と思いこんでる。君の大車輪はそういう邪道の円だ」
中学時代、鉄棒で大車輪をする呉一郎に瀬良皿子が言った言葉と同じ!
ダダダントンタンと耳に響く日々、手まで震えること。
これまでの思いを告げながら、瀬良に近づく呉一郎。
しかし、瀬良は一変、呉一郎を拒絶します。
それを見たシャラは我に返ります。
その二人の後ろに円が出来上がっている。
名和四郎が黒髪を弦にして、ギリギリと弓を絞っているのです。
名和四郎は彼を矢で射ろうとします。
その矢は逃げようとした北明の背中へ。
と、その時、シャラの額にまた石が飛んでくる。
額から流れる血を見ようと手鏡を取り出します。
呉 逆にのぼるんですね。
鏡を持って、坂道を後ろへ歩くと、鏡の中の自分は坂をのぼっているようにみえる。
(ワークショップでも手鏡を持ち出し、みんなでやってみました。)
呉 誰が。
シャラ 石をぶつけられたあたしよ。坂の上で石をぶつけられて泣いているのよ。早くきてって。
呉 あんたはここにいるじゃないか。
シャラ ここにいるあたしはこの鏡の中のあたし。
そして"ダントン"が語り始めるのです。
千夜一夜を語り続ける、シェーラザードよ、
そのループを抜け出そうと。
呉 さあ千夜一夜の一夜先へ完璧な円を描いて飛んでゆこうよ。(手をさしだす)
シャラ (鏡の破片を手に)千夜二夜?
呉 はい。同心円の彼方に。
そしてダントンをつかむシャラ。
なんと"ダントン"には地雷が仕込まれていた。
名和四郎は、もう一本の火矢を弓につがえて放つ。
笛の音をひびかせてとんでゆく。
と、ここでワークショップは終了!
なんとか一幕を読み終えましたが、名和四郎の放った矢の意味は謎のまま。。
来週はこの名和四郎の矢の意味を解いていきます。
そして、二幕へ突入!
5/27(木)ワークショップレポート(林)
鉄の棒が折れ、シャラは梅原北明に、その熱い棒を掴むよう仕向けられる。
困ったシャラはずっと黙っていた呉一郎に助けを求めます。
今週はここから。
呉とシャラの会話を聞いていた按摩は、
シャラが商売敵のパンマであることに気づきます。
あのパンマではないか!!と。
(というのも、呉一郎同様に、チョゴリを着てカツラを被っていたので、
この女が瀬良皿子だということに気づかなかった。)
女がシャラだとわかった按摩は、梅原北明に訴えます。
この女はパンマで、按摩である自分たちの憎っくき商売敵であると。
それを聞いた梅原北明は思いつく、
按摩 VS パンマ
やはり自分は"呼び屋"なのだ!
とこの思いつきに北明は盛り上がる。
しかも、北明はシャラのことをチュジュドの女だと思っており、
"この女は、海を越えてつかみ合いの武者修行に来たのだ!"
と、ストーリーが勝手に組みあがって、さらに盛り上がる。
そして、ト書き。
もはや試合を盛り上げる儀式。
そこへ按摩の弟子たちレンタン、レンタン起こしを持ってくる。
そのレンタンの上へ二本の鉄をかざす。
北明の「火が弱い!」の声に、按摩の弟子たちは
カツラを次々とレンタン起こしの中につっこみ、燃やす。
とそこへ、チョゴリの女たちが現れる。
"日陰"として生きていた女たちは、
自分の髪の毛でつくられたカツラが燃えるのを見て嘆く。
その中には、名和四郎の母もいる。
カツラを燃やし、試合を盛り上げる北明と、
それを見て嘆き訴える母。
二人の間で揺れる名和四郎であったが、
北明が母に手をあげたことで、一変、名和四郎は北明に匕首で斬りかかる。
ところがあやまって、母を刺してしまう。
悲痛な少年の叫びは一つ、
"シュリンガーラ・ティリカ!"
そして、その頃、高温に達した二本の鉄。
按摩 VS パンマが始まる。
じわじわと中央の熱い部分へと手を伸ばしていく双方。
これでもか!
と按摩はぐいぐい手を伸ばす。
その手からは煙があがるほど。
しかし、その煙は妙な匂いがする。
それに気づいた呉一郎は、按摩の手首をつかむ。
"ダントン"がまた動き出す。
呉 ぼくにもよく分るんです。
この手は旋盤をいじくり回した手です。
肉がそがれたり、つぶされたりした時には必ず、
アンズをかむような切ない匂いを発するもの。
ところが何だ、この合成樹脂の匂いは!
といって、按摩の手を名和四郎が持っていた匕首で叩っ切る。
呉一郎は、按摩の手首が義手であることを見破ったのである。
切断された手が、まだ鉄の棒をつかんでいる。
呉はその棒をさしあげて振る。
そして、切られた手首がクルクル回る。
そこでできあがったのは、なんと大車輪!
と、ここでワークショップ終了!
なんとここにきて、あの"大車輪"ができあがるとは。
呉一郎と、瀬良皿子の出会いとなった"大車輪"
このあとの二人は、どうなってしまうのか。
ついに一幕の終盤へと向かいます!
それでは、また来週!
5/20(木)ワークショップレポート(林)
梅雨入りしたところもあるだなんて。
明日までに必要な衣類が乾かず、コインランドリーへ駆け込み、
これを書いています。
乾燥機の中をくるくると回っている服が大車輪で回転する呉一郎のようです。
(というのは言い過ぎました。)
とそんな個人的なことはさておき!
今週もいきましょう、『海の牙~黒髪海峡篇』
今週は、番頭がそのオカツの包まれた新聞紙を開けるシーンからです。
番頭は包みを開ける。
その中身は、ほれた女房の生首。
泣くでもなく、わめくでもなく、番頭はその生首に話しかけます。
「オカミさん。手前です。手前がきます。ほら手前ですよ。」
とそこから過去にオカツからもらった手紙に書いてあった
カーマスートラのことなどを語る。
今まで主人の目を盗んでオカツと会うしかなかった番頭は、
やっとオカツと二人きりになれたのです。やっと日常の幸せ。
しかしその相手は、生首。もうオカツはいない。
そこへ呉一郎が頼まれたスカーフを持って戻ってくる。
しかし、カツラを被り、チョゴリを着たシャラを呉は見つけられない。
シャラがいないと思っている呉一郎は、親しげに「パンマのシャラシャラコー!」
と呼んでみたり、歌まで歌う。
シャラは黙って鏡越しに呉を見ていたが、話しかける。
買ってきたスカーフを見せるよう呉に催促するが、呉はなかなか見せない。
"泣けてくるわあ!" とわめくシャラ。
急にシャラの持っていた手鏡が割れる。
はあ、もういや!といわんばかりにシャラはスカーフも宙に投げる。
鏡が割れ、宙に舞うスカーフ。
音楽!
そして奥のカツラ屋の障子が開くと、鍛冶屋が金床で何かを叩いている。
鍛冶屋といっても、その正体は、あの按摩と弟子たち!
カツラ屋の主人もそこにおり、カツラのぶら下がった背のうを背負わされている。
さらには、梅原北明がいる。
(一気に登場人物が増えてきた!)
"呼び屋"である北明の指導のもと芸を磨く面々。
北明はシャラを見て、その髪の毛からチュジュドの女だと間違える。
それに対し、シャラはカツラであることを証明しようと髪の毛をひっぱるが、
取れない!その髪の毛は女のものになっている!
と、その時、なにかが折れる音。
先ほど鍛冶屋が叩いていた"何か"。それは剣の形をした鉄の棒である。
按摩は弟子たちの見本として、熱々の棒をつかむ。
(というか、渋々つかむ!)
それを見ていたシャラの「どうして万力でつかまないの?」
の一言を拾って、北明は、シャラにその役割をさせようとする。
揚げ足をとるように会話を進められたシャラは、呉に助けを求める。
と、ここでワークショップは終了!!
このあと、呉は一体どうでるのか?!
来週もお楽しみに!
5/13(木)ワークショップレポート
瀬良皿子はカツラ屋の前にいく。
そして、
今日は梅原北明が連れていた少年、名和四郎の登場からです。
少年の第一声。
「シュリンガーラ・ティリカ」
少年はこれしかいわない。
カツラが欲しい瀬良皿子になかなかカツラを売ってくれない。
とそこへ、チョゴリ姿の女たちが現れる。
この女たちも髪が刈り取られており、その髪の毛はカツラとして売られているのだ。
少年はその中の一人の女のふところに抱きつく。
それは少年の母だ。
チョゴリの女たちは礼をする。
ここで、ずっと「女」だった瀬良皿子の名前が「シャラシャラコ」に変わります。
瀬良皿子じゃなくて、シャラ。
この一連のおじぎ、で意思疎通をした(と感じた)途端に音楽!
ワークショップでは、サムルノリを聞きました。
同じ頭をしたシャラを見た女たちは、ここにも自分たちの仲間がいた
と言わんばかりに踊り、そして抱きつく。
カツラ屋に並ぶ自分たちの髪の毛で作られたカツラを見ては
「あれはあたしの。」「あれはあたしの。」と叫ぶ女たち、その勢いにおされ、シャラも続く。
ただ名和四郎だけがシャラの正体を知っているので、
「シュリンガーラ・ティリカ!」
を使って、シャラが母たちとは違う国のものであることを訴えます。
「シュリンガーラ・ティリカ」とは"愛欲"という意味で、
この言葉を使って名和四郎、いろんな表現をしていく。
母は、この名和四郎の由来を長々と語るも、
シャラは、なんとも言えない。だって故郷が違うもの。
母と名和四郎のやりとりを見届けつつも、自分の目的を忘れていないシャラ。
シャラはカツラが必要なのだ。
シャラはカツラが必要な理由として、パンマであることを打ち明ける。
自分たちと同じく苦労人であるに違いないと同情した母は、
シャラにカツラを差し出す。
さらには、チョゴリも来て欲しい、とお願いをする。
いつもカゲに巣喰ってこの名和四郎の行く末を見ていなくてはなりません。
せめて、日かげに入ったら、ああ、あたしと同じかっこうをした
あたしの生まれ変わりが行くと、涙をのんで見ほれていたいのです。
でもそれはあたしですよ。
それは、なるになれないあたしたちの涙だと思ってください。
さあ、かぶってください。 着てください!
5/6(木) ワークショップレポート
夏がこがした黒い手で 夜毎の闇を研ぎまする
語るも因果なシャラシャラコ
4/29(木)ワークショップレポート(林)
呉 何ですって?
女 草と言ったんだよ。植物の。おまえ、草民だな!?
あたしは立ってその人のところに歩いてゆく。
すると向うもどんどん動きだす。あたしは追う。向う遠ざかる。
それであたしはかけ出す。まるでグルグル回り。いい?
こんな円周があるとあなたはお思いになります?!赤の他人よ。
つき合いもないのよ。つまり鉄棒の大車輪でいえば
4/22(木)ワークショップレポート(林)
4/15(木)ワークショップレポート(林)
「その大車輪は円じゃない。」
「君は直線しか知らない人です。
君はおそらく自分の心臓を四角に切って定規で心弁の尖をちょん切ることができるが、
勢い余って辺という辺を気が向くままにふやして、
それを円と思いこんでる。君の大車輪はそういう邪道の円だ」
4/9(金)ワークショップレポート(林)
4月になり、ワークショップでは『海の牙-黒髪海峡篇』が始まりました。
今月のアシスタントは、林が担当します。
どうぞよろしくお願いします!
この『海の牙-黒髪海峡篇』は1973年に状況劇場で初演された作品で
文芸誌「海」10月号に掲載された戯曲です。
初回ということもあって、まずは登場人物表をながめていきました。
中野さんがnoteで、この作品をやっていた時、ヒロインの名前が「瀬良皿子」だから、
リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』を聞いていた、と書いていましたが
「シェエラザード」は『千夜一夜物語』の語り手であるお姫様の名前で、
そこから着想を得た交響曲がこれにあたります。
ということで少しだけ交響曲をみんなで聴いて、 WSはスタート!
冒頭は、とあるカツラ屋のシーン。
そして按摩の群が通り過ぎる場面ののち、
そのカツラ屋の前、ゴミ箱のかげにうずくまっていた女と男、立ち上がる。
(この女は「瀬良皿子」、男は「呉一郎」)
女は石を投げられて怪我をしており、男が「大丈夫ですか?」
と聞くところからこの二人の会話は始まります。
自分はパンマだからカツラ屋の前を通るといつも石を投げられる、と女は話します。
("パンマ"(娼婦)というのは、パンパンの按摩で、"パンマ"というそうです。)
石を投げられるにも関わらず彼女はその道を通るのですが、
その理由として女は「昼下りの坂」の話を始めます。
男 あんたにはそれが本当に見えるんですか?
女 見えるとも。ぐんと下ってビールびん色の。
ここをかけ降りてゆきたいといつも思うの。
愛する人と手に手をとって昼下りの坂をビュンビュン走ってゆきたいの。
このカツラやの前に立つといつもそう思います。
どうしてかしら。
きっと西陽がこのウインドウにさしこんで、
こんがり黒々のカツラがじとっと焼けて、
それがあたしの背中にはっついて、
「瀬良、さあ、かけ降りてごらんよ」とたきつけるから。
愛する人と走る坂は上り坂ではなく、下り坂。
...なにやら今後の二人の展開を予感させるような表現がちらほら。
その後、女はお客を待たせているといってその場を去ります。
会話の最後で男は、前からあなたを知っていると女に告げるのですが、
一体どんな目的で女へ接近したのか。。
そこへ一人の按摩が現れる。
この按摩、異様なずうずうしさがあって、男につかまらせてくれとお願いをします。
あれよあれよと按摩のペースで会話は進み、彼もまた「昼下りの坂」の話をします。
"昼下りの粒々"という言い方をするのですが、これは坂に差し込める西陽のことで、
「物の粒子を見たものはみな関係があるものです。」
と続けます。
つまり、私とあなたはもう関係があります。
ということを言っているのです。(これまた強引な距離の縮め方。。!)
このあたりのやりとりは『盲導犬』冒頭の、フーテンと破里夫の会話に似た感じがあります。
この按摩との会話が終わるところで今回のワークショップは終了。
今日の会話までで、この戯曲のテーマがたくさん出ている、と中野さんの気になる一言。
テーマと思われる表現や繰り返されている単語を自分なりに考えて、
今後どう物語と関わってくるのか気にしながら次回もワークショップに臨みたいと思います。
みなさま、次週もよろしくお願いします!
(唐ゼミ☆の『海の牙-黒髪海峡篇』のDVD。ずいぶん前にもらって観たのですが、またワークショップが終わった時に観たいと思います!)