2021年4月 2日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
こんばんは。佐々木あかりです。
今日から4月ですね。新年度に入り環境が変わる方もいらっしゃるかと思いますが
身体を壊さない様お過ごし下さい!
本日はワークショップレポートです!
今週は、『盲導犬』最終回でした。
盲人の破里夫がフーテン少年に見捨てられ、
やけになってフーテンが興味のある"星"を探しに行く所から
解説がスタートしました。
フーテンが見つけてきた"星"とはなんと"ガスバーナー"。
現実ではケーキ屋さんや回転寿司くらいしか見ることがないですね。
とある中野さんのお知り合いの俳優さんは、
学生の頃『盲導犬』を上演し、その時本物のバーナーを使い、
操作を誤って天井を少し焦がしてしまったとか。
ちなみに唐ゼミ☆で過去に公演した時はさすがに本物は使わなかったそうです。
ガスバーナーはあるだけで迫力がありますね。
最初は、銀杏についている盲導犬の胴輪を
銀杏の元夫の盲導犬学校の先生と破里夫が
二人で持っています。
銀杏の元恋人で、恋を再熱させたタダハルは
男らしい発言をして強がりますが、本来はとても弱い少年です。
そのため先生が来るとすぐに言うことを聞きます。
タダハルのタダ(忠)は
恐らく忠犬ハチ公の忠から来ているのではないでしょうか。
そんなタダハルは先生に叱責され犬になってしまいます。
そして、破里夫は先生と戦おうとするも倒れ、
フーテンは総殴りされてしまいます。
周りに味方がおらず夫の犬になる事を認めるしかないと銀杏は諦めますが、
そんな彼女の首をファキイルが噛み切ります。
殺されると思うとネガティヴに思えますが、
実は"服従してはいけないよ"とファキイルに応援されている
ポジティブなシーンです。
エピローグで、破里夫はファキイルに希望に感じていますが、
ファキイルは破里夫のことを覚えてすらいないのでしょう。
破里夫がかっこつけていて、しかし滑稽であるように魅せる必要がありそうですね。
中野さんがまだ唐十郎ゼミナールの学生だった頃、
最初にこの戯曲を読んだ時は不服従はかっこいい!という理解だったそうです。
しかし、やりながら違うと感じ、上演した後にはっきりわかったそうです。
というのも、『女の人は服従不服従ではなくもっと訳の分からない存在だ』と室井さん、唐さんと話し、
銀杏やファキイルは不服従を選んだというわけではないと思ったそうです。
この作品を書く上で唐さんが原動力にした作品があります。
それは、脚本清水邦夫、監督田原総一郎、清水邦夫の
『あらかじめ失われた恋人たちよ』です。
内容は、都会で政治運動に敗れた青年が田舎にやって来てその町で第二次闘争を行おうとしたがなかなかうまく行かないという作品です。
その作品の中に緑魔子さんが登場します。
(たった3分くらいですが、中野さん曰く唯一面白いシーンだそうです。)
運動に対して田原総一郎さんや清水邦夫さんが頭で考えたものを
緑魔子さんは感覚で粉砕しています。
恐らくその緑魔子さんを観て、銀杏を思いついたのではないでしょうか。
弱く役に立たないタダハル
自らを服従させようとする夫
反権力的であるようで結局高圧的な破里夫
どの人をとっても銀杏にしてはわずらわしく、
銀杏だけがファキイルと同じ存在で、
ファキイルからの応援を受けたのでしょう。
『女の人は犬みたいなもの』
というのは、この戯曲において最大の褒め言葉だったのですね。
来月からは『海の牙-黒髪海峡篇』になります!
来月のアシスタントは麻子さんになります!
興味がある方は是非ご参加下さい!お待ちしています!
2021年3月25日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
こんにちは。佐々木あかりです。
本日もワークショップのレポートをさせて頂きます!
今週は、ヒロインの銀杏が盲導犬の胴輪をはめられてしまい、
昔の恋人タダハルが必死に外そうとするシーンからでした。
タダハルが自分の事を想い、必死に胴輪を外そうとする姿に、銀杏は喜びます。
するとそこに盲人の破里夫とフーテン少年がやってきます。
破里夫は目の前の出来事がわからず銀杏の事を馬鹿にしますが、
銀杏は自分が破里夫の盲導犬となって、面倒を見てやると反撃。
馬鹿にされた破里夫は、さらに銀杏に攻撃しようとしますが、
タダハルが毅然として肩を掴みます。
『俺の女だ』
登場した時はブリキの犬がいないと何もできなかったのに、
こんなセリフを言うほど男らしさが出たタダハル。
・・・男性の皆さんはそんな台詞を日常生活で口にした事はありますか?
中野さんも言ったことはないそうです。
男の人はみな一度は言ってみたいとか。
(私は俺の女とまで言わせる女になってみたいものです)
タダハルから思わぬ反撃を受けた破里夫は、フーテンの力を借りようとしますが、
フーテンからは『あんたには失望しました。』と見捨てられます。
さあ助けてくれ!と声をかけたものの返ってきた言葉で驚きを隠せない。
フーテン役はここまで裏切るようなそぶりを見せないように演じておくと、
ここで破里夫を一気に裏切る事ができます。
破里夫の『え!?』という台詞が生きてきますね。
破里夫はどうにかフーテンに振り向いて欲しくて、ガスバーナーを持って戻ってきます。
ガスバーナーで銀杏の胴輪を焼き切ろうとするこの場面、
こういう時に大事なのが、「実感」です。
『いくらか肉が焦げるかもしれない』という熱と痛みへの感覚や
目が見えない自分が、バーナーを当てるという恐怖。
もちろん舞台上はそうはいきませんが、練習の時に本物でやってみると、
そこにあるだけで怖いものへの実感が湧きます。
結局焼き切る事はできず、盲導犬学校の先生と生徒がやってきます。
さっきまでとても男らしかったタダハルも、先生が現れると非常に貧弱な男へと戻ってしまいます。
来週は『盲導犬』最終回。
ラスト1ページのクライマックスです。『盲導犬』に関する文献を読んだり、『唐版 滝の白糸』との比較をしたりします!
来週もよろしくお願い致します!
2021年3月18日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
みなさんこんばんは。佐々木あかりです。
本日もワークショップのレポートをお送りします!
ワークショップも残り3回、なのですが、
中野さんがあと2回だと勘違いしていることが、先週発覚しました。
そのため、今回は少し余談多め、ゆっくりと進んでいます。
今週はヒロインの奥尻銀杏が、
夫に犬の胴輪をはめられてしまう所の復習からでした。
この夫は、銀杏の大事な思い出の品をロッカーに入れ、
鍵と共にバンコックへ去りました。
思い出の品を失いたくない銀杏は、
毎日100円払いにロッカーに訪れなくてはなりません。
恐ろしい束縛・・。この描写は十字軍の貞操帯を思わせます。
(銀杏にとっては貞操帯より効果抜群かも!)
そして、本を読み進めていくと、少し長めのト書き。
そしてその最後にこう書いてあります。
このト書は、客の中から急に一人の男が立ち上がって言う。
今、書いたことも言う。
これはおそらく唐さんが出たくて出たくて仕方なく、
客席から唐さんが出演していた(するため?)のセリフです。
当時は通いすぎて状況劇場のメンバーに怒られたとか。
(作家だからできることですね!)
そして今回は、以前行われた
『21世紀リサイタル』映像をみました。
唐さんを筆頭に、豪華面々が出演された
唐さんの歌のリサイタルなのですが、
その中の石橋蓮司さんが歌われた『ファキイルの唄』を聞きました。
(かっこよかったです!!)
余談ですが、石橋蓮司さんと唐さんはどこかで待ち合わせをすると
どちらが早く来るか勝負をしていたとか。
中野さんも以前唐さんと待ち合わせをした際、
30分前から喫茶店の下で待っていましたが、
5分前になってもやって来ない。
まさかと思い喫茶店に入ると
すでにやってきていた唐さんは(!)
待ちくたびれて不機嫌な面持ちでテーブルについていた、
なんていう事もあった様です。
(さすがに30分以上前はびっくり!)
胴輪をはめられてしまった銀杏ですが、
昔の恋人タダハルは必死に取れない胴輪を外そうともがきます。
自分のために一生懸命になる姿を見て銀杏は喜びます。
外れない胴輪。想いをまた通わせるタダハルと銀杏。
これからどうなってしまうのでしょうか。
次週もよろしくお願い致します。
2021年3月11日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
こんにちは。佐々木です。
本日はワークショップレポートをお届けします。
今週は盲導犬学校の先生が銀杏の夫に、
ヒロインの銀杏がトハに、それぞれ転生するシーンから始まりました。
このシーンは『盲導犬』の中でも非常に面白く、またわかりにくい部分です。
銀杏とトハを演じ分ける時は、セリフを訛ったり、
トーンを変えたりするぐらいわかりやすくする必要があります。
(文字だけで読むと難しい!)
そして、さらにわかりにくいのは、この夫が銀杏として扱うと女はすぐさまトハに、
また逆にトハとすれば銀杏に、と何度も転生を繰り返します。
さて突然ですが、『盲導犬』の戯曲の中には、いくつか無理難題なト書きが存在します。
例えば、
眠っている男と思ったのは、実は黒いシェパードである。テーブルをとびこえて去る。
というものです。
この作品が自分が主宰する状況劇場ではなく、蜷川さんへの書き下ろしなので、
あれ、これ、書きたい放題書いてないか・・・と思わせるものがあります。
今、唐ゼミ☆劇団員は『ベンガルの虎』を読んでいるのですが、
こっちには舞台装置への妥協点というか言い訳めいたものが多くあります。
例えば2幕冒頭のト書き
ガラス窓(ガラスでなくポッカリ開いていてよい)など
自分の劇団だと大甘です。(現場はありがたいけど!)
今回は読点のアドバイスもありました。
読点「、」を使用するルールは曖昧なのですが、大きく2つののルールで成り立っています。
一つは意味を伝えるものと、もう一つは文を見やすくするものがあります。
演劇においては、もちろんながら前者〈意味〉が重要になってきます。
点を打つ位置で意味が変わってしまう例として
『私とケーキの好きな姉』
この文章には2つの意味があります。
一つめは『私と、ケーキの好きな姉』
これだと、私自身と、ケーキが好きなお姉さんの2人がいる事になり、
文章としては、「姉妹」の説明文になります。
二つめは『私とケーキの、好きな姉』
これは、私とケーキ、両方のことが好きな姉がいる、という「姉」の説明文になります。
このように、読点の位置で意味が変わってしまうので、正確に打たなくてはいけません。
今度は文を見やすくするものの例です。銀杏のセリフを例にとると
『だって、あなたはあたしたちの鍵を持っていってしまった人』
このセリフでは、『あたしたちの鍵』が最重要ワード。
セリフを際立たせるには、大事な単語の前に少しだけ間を開けると際立ちます。
つまり、上記の読点の位置で切るよりも、
『だってあなたは、あたしたちの鍵〜』と言った方が
あたしたちの鍵を一番綺麗に伝える事ができます。
(声に出してみるとよくわかりますよ!)
さて今回のWSの最後では、
銀杏が犬の胴輪をはめられてしまいます。
彼女は今後どうなって行くのでしょうか。
来週もよろしくお願い致します!
2021年3月 4日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
こんばんは。佐々木あかりです。
今週もワークショップレポートをお送りします。
今回はヒロインの銀杏と、昔の恋人タダハルの会話からスタートしました。
タダハルは、盲導犬学校の生徒。
練習用のブリキの犬を連れていますが、この犬にタダハルは依存しています。
犬から離れる時は、きちんとその犬に話しかけてから。
銀杏が犬にいたずらすると、異常なまでの反応をします。
(ちなみに一人で歩いてくる際、ト書きで「独立して歩いてくる」と書かれているほど)
ブリキの犬に頼っていて、完全に犬に〈依存〉しています。
タダハルの様まではいかずとも、どこかものに依存してしまう経験は誰しもあるのではないでしょうか。
実際に、中野さんはどこかに出かける時は、何かしら台本がないと落ち着かないらしく、
20年近く常に持ち歩いているらしいです。
(私もどんなに小さいカバンでもお守りを持っている事が多いなぁ)
そんな不甲斐ないタダハルですが、振られたと思っていた銀杏の思いを知ったタダハルは、
急に男らしくなり(猛犬になる)、いわゆる"濡れ場"になります。
そんな中、フーテン少年と盲人の破里夫が二人それを覗いています。
10代半ばのフーテン少年はもちろん、おじさんの破里夫まで雰囲気に呑まれ始めます。
終いには『鍵穴から歌が聞こえてきたようだ。』とフーテンのお尻を褒め、
もう一つの"濡れ場"のシーンが裏で展開されていきます。
そして突然の銃声。
銀杏の思い出の手紙をロッカーに閉じ込めたまま、
バンコクで娼婦トハに銃で打たれ、死亡した、あの夫が復活してきます。
(ちなみにキャストは盲導犬学校の先生と夫の二役)
これに対して、銀杏は『ほら、あの女が待っていてくれるわ。トハが!』という
台詞をきっかけに、銀杏はトハに転生し・・・
盲導犬学校の先生が夫に。銀杏がトハに転生。
ますます話が盛り上がっていきます。
来週はこのあたりのからくりの説明から先に進んで行きます。
ちなみに過去に唐ゼミ☆で公演した時は、
着物の下に東南アジアの服をきておいて、
『トハが!』の台詞で着物を脱ぐことでわかりやすくしていたそうです。
余談ですが、来月のワークショップの戯曲が決定致しました。
来月は『 海の牙-黒髪海峡篇-』です!
私もとても楽しみです。詳細情報は今しばらくお待ちください!
(角川文庫は盲導犬と同じ本に収録されています!)
(この本です!)
『盲導犬』も残り4回になりました!
来週もよろしくお願いします!
2021年2月26日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
こんにちは。佐々木あかりです。
本日はワークショップレポートをお送りします!
今回のワークショップは、婦人警官サカリノとその上司・警官によって、
フーテン少年、ヒロインの銀杏、盲人の破里夫の三人が連行されそうになった時、
盲導犬学校の教師たちが現れたところからでした。
冒頭は5人の愛犬教師でしたが、今回は1人が先生で残りが研修生です。
犬も本物のシェパードからブリキの人形に変わっています。
唐ゼミ☆が公演した際、このシーンに唐さんから歌を書き足していただきました。
彼らが登場すると、こんな歌を歌います。
あっ見えた 何がだ?⋯⋯永遠
いってしまった海のことさあ
♪海にいるのは あれは
人魚では ありません
海にいるのは 波ばかり
それで たとえ 眠れなくても
ヒュウゴオ 町を 襲ってやろう
という曲です。
唐さんの戯曲にはよく歌が入っていますが、
一見、何回に見える歌を読み解くには、全体の〈図式〉を思い描いて
見当をつけるのがコツだそうです。
全体の〈図式〉から仮説をたて、
ひと言ひと言がそれに合っているかどうか検証、
仮説が裏付けられたらしめたものです。
この曲で考えてみると、
四人の愛犬教師は、盲導犬に言うことを「聞かせる」側、
つまり現実を教え「躾る」のが仕事です。
しかしまだ生徒であり、若く夢みがち(空想しがちと言っても良い?)です。
歌中ではその夢が人魚に置き換えられ、
人魚なんていない。夢を見ていてはいけない!というメッセージが隠れています。
(歌だからと図式を忘れてしまいがちになるなあ)
また、このシーンは個性的な登場人物が多く、役の中に「遊び」があるシーンでしたが、
『キャラクターを先に作るのではなく、劇の戯曲をもとに
キャラクターを乗せていく事が大切である』
という読み方のアドバイスがありました。
これがないと何でもやりたい放題になってしまいます。
(確かに目を引く役者さんはちゃんとしている!)
さて物語に戻りますと、
盲人の破里夫が盲導犬ファキイルを連れていると聞いて、先生の顔色が一変します。
ファキイルがいかに恐れられている伝説の犬であるかを説き、
そんな犬はいないと破里夫を一蹴、その場を去ります。
しかし、一人の研修生だけがその場に残ります。
実はこの研修生こそが、銀杏の元恋人のタダハル。
このタダハルこそ、ロッカーの中に閉じ込められたラブレターの相手です。
来週はお話の中盤、銀杏とタダハルのシーンから始まります。
来週もよろしくお願い致します!
2021年2月19日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
みなさんこんにちは。佐々木あかりです。
本日はワークショップレポートをお送り致します!
今週はヒロインの銀杏(いちょう)と、
自分の盲導犬ファキイルを探す男、破里夫(はりお)の会話から
ワークショップがスタートしました。
先週疑問に終わった、ロッカーの中にあるラブレターの謎も解決!
銀杏は今まで台本上「女」という役名でしたが、
銀杏の『誰かがあたしのことを中傷したの?』という台詞で
ついに「銀杏」に変わります。
これは、『おまえ、男を待ってるんだろ?』と
偶然出会った破里夫に言われ、空気が変わったからです。
確かに、さっき初めて会ったばかりの人に元彼の話をされたら
誰だって驚きますよね。
なぜ破里夫はそこまで知っていたかと言うと、銀杏が過去に
ラジオに昔の恋人への想いの人生相談と、『カナダの夕陽』
という曲のリクエストをして、
そのリクエストが反響を呼んで何度も何度も放送されていたからでした。
そして銀杏がコインロッカーに通っているので、(少し異常ですが)
破里夫には自分の前にいる銀杏こそ
ラジオに人生相談を送った女であるとわかったのです。
そして話題は銀杏の夫の話になっていきます。
銀杏曰く旦那さんはバンコックの安キャバレーの女に
後ろから銃で打たれて死んだそうです。
その話をするあたりで"ユーモア"と"ノーモア"という言葉が頻出する。
これは、1969年『少女都市』上演中に寺山修司さんから
葬儀用の黒い花束が届き、寺山さんは「ユーモアだ」と言ったのですが、
新聞の誤植で"ユーモア"が"ノーモア(未来なし)"になってしまい、
劇団員同士で乱闘になり警察沙汰になった騒動がありました。
唐さんはその事を戯曲に書いたのです。
当時の観客ならば皆さん知っている事だったらしいので
きっとこのせりふで笑いを取っていたのでしょうね。
そして、ここでロッカーの中にあるラブレターの謎が解決します。
銀杏の旦那が南に向かう朝、妻に操(ミサオ)を守らせるため、
少女時代の日記から出てきた過去の恋人からのラブレターを
330(ミサオ)番の中に入れて鍵を閉め、その鍵を持って、
毎日100円を入れる事を銀杏に科して南に行ってしまったのです。
そして、そのまま死んでしまった。
・・・異常ですね。現実にはあり得ない設定です。
だって、ロッカーを管理する会社に問い合わせれば、
そのような事情なら必ず開けてもらえるはずです。
でも、それでは劇が成立しなくなるので、ここでは言いっこ無し。
中野さんによれば、唐さんはそういうことも充分に
心得た上で書いているはずだそうです。
「全てなんでもあり」ではなく、
きちんと私たちが生きる現実の世界の常識や価値観に立ちながら
「この事は話を広げるために無しにしたんだな」と考えるのは、
上演を支離滅裂にしないためにとても大切だことなんだそうです。
(そういう唐作品上演がけっこう多いのだそうです)
私自身、このロッカーの話は、夫が南に向かう朝に2人がした会話を
銀杏が1人で語るのですが、声にするのが非常に難しいせりふでした。
と言うのも、旦那のその時の状態と、その言葉を受ける銀杏自身の状態、
どちらも伝えなければいけないのです。
(上手くいきませんでしたが勉強になりました)
そして銀杏の過去の話をする2人の元に犬を連れてフーテン少年が戻って来る。
余談ですが、この場面は犬の事を角川文庫では『犬』と書いてありますが、
唐ゼミ☆が上演する際、唐さんが面白いからと『リンチンチン』に書き換えたそうです。(印象が全然違う!)
フーテンが連れてきた犬は、破里夫が探す『ファキイル』ではなくフーテンが犬屋から盗んできた犬でした。
彼は警官と婦人警官と犬屋に追われ、見つかってしまいます。
3人は交番に連れて行かれそうになってしまいますが、そこに盲導犬学校の先生と研修生たちがやってきます!
来週はここからスタート!
来週もよろしくお願いします!
唐ゼミ☆上演時のリンチンチンと銀杏(禿さん)
2021年2月12日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
皆さんこんにちは。
今日2月11日は、唐さんの81歳のお誕生日です。
そして中野さんと椎野さんの娘さんのお誕生日です。
おめでとうございます!
それでは10日のワークショップのレポートをしていきます!
今回は、ヒロインの奥尻銀杏(おくしり-いちょう)が登場するシーンからでした。
自分の盲導犬ファキイルを探す、影破里夫(えい-はりお)の歌の途中、
銀杏がコインロッカーの330番の前に立ち、鍵穴につめられた爪をマッチの火で燃やします。
破里夫はその焦げた匂いを嗅ぎつけ、銀杏に話しかけます。
破里夫 もし。
女 がまんしてね。
破里夫 もし。
女 こらえてね。
破里夫 ええ。あの____
女 しばしよ。しばしの間なの。
破里夫 こりゃ、何の匂いですか?
女 爪です。
という部分があります。
突然ですが、皆様は女が破里夫に話しかけたのは、
どの台詞からかわかりますか?
答えは、会話の最初、ではなく「爪です。」という台詞からです。
(私も誤読していました。悔しい!)
では、女は何に向かって前半の台詞を言っているか、
それはロッカーの中に閉じ込められたあるものに対して話かけています。
中に何が入っているのか、本当は次週の範囲ですが少しネタバレをします。
ロッカーの中には、銀杏の思い人からのラブレターが入っています。
彼女はそのロッカーを開けようと爪を鍵穴に差し込み、爪が折れてしまい、
またその爪を燃やしてを繰り返しながら、ロッカーを開けようとしているのです。
会話の前半は、そのラブレターに対して優しく声をかけているのですね。
『あたしから離れたものは皆死骸です。
残ったのは、今生きているあたしだけでけっこう。
あたし、残骸。』
という台詞がありますが、
この『今生きているあたし』というのも、
ロッカーの中にあるラブレターの事を指します。
つまり、"このラブレターをやり取りしていた時だけ、私は生きていた"
という事です。(私はまだその気持ちはわからない...)
なぜそんなに大事なものが、ロッカーの中に閉じ込められているのか、
一体、誰が閉じ込めたのか。
次回以降の範囲なので、気になる方は是非ワークショップに参加してみて下さい!
来週も破里夫と銀杏の会話が続いていきます。
その中で明らかになってくる銀杏の過去。
来週もよろしくお願い致します!
(唐さんのお誕生日なので赤テントの写真を載せてみました。)
2021年2月 5日 Posted in
ワークショップ Posted in
中野WS『盲導犬』
みなさんこんにちは。佐々木です。
本日はワークショップレポートです。
オンラインワークショップ「唐十郎戯曲を読む」今週から『盲導犬』です。
今回が初回ということで、まずはこの戯曲が書かれる経緯の説明から始まりました。
『盲導犬』は、澁澤龍彦さんの『犬狼都市』("キュノポリス"と読みます)が原作で、
1973年に蜷川幸雄さん率いる「櫻社」に書き下ろされた作品です。
かつての蜷川さんは「劇団青俳」で俳優をしていましたが、
1967年に退団、「現代人劇場」を結成します。
1969年に『心情あふるる軽薄さ』で演出家デビュー。
しかし1971年に「現代人劇場」は解散。
思うようにいかなかった蜷川さんは、
1972年の春「状況劇場」が不忍池で上演した『二都物語』を観劇、
感銘を受け唐さんの演出助手になろうかと考えたそうです。
しかしそんな蜷川さんに唐さんは
『蜷川くんに戯曲を書くよ』
『現代劇がいい? 時代劇がいい?』
と声をかけ、その数日後出来上がった作品がこの『盲導犬』で、
蜷川さんは「櫻社」を結成、73年春に上演します。
(数日で傑作を書き上げてしまう唐さんは本当に凄い!
実は私も劇作に挑んだ経験がありますが、半年かかって結局書けませんでした)
さてここからが、ワークショップの内容のレポート!
この戯曲は、天から聞こえてくる「盲導犬についての質問」に
五人の愛犬教師が答えていく場面から始まります。
そこに盲導犬「ファキイル」を探す、盲人の影破里夫(えい-はりお)がやって来ます。
愛犬教師曰く、盲導犬は飼い主に"服従"する事から教えるので、
本来であれば犬が飼い主を置いてどこかにいなくなることも、また飼い主が犬を探すことはありません。
この破里夫とファキイルの関係性、"服従"と"不服従"がこの戯曲のポイントです。
そのあと登場する、フーテン少年と婦人警官では、婦人警官は規律を守らせ、"服従"させる立場です。
しかし、シンナーを吸っているフーテン少年に情けをかけた婦人警官は、彼を逃がしてしまう。
このやりとりに立ち会った破里夫は、フーテンに声をかけます。
犬を探す破里夫と盲導犬ファキイルの関係は、犬が服従しているのではなく、
ファキイルに破里夫が服従していることがわかります。
犬に服従する飼い主と不服従の犬、ファキイル。
常識的ではない破里夫の盲導犬との主従関係。
余談ですが、影破里夫はハーマン・メルヴィルの
『白鯨』に出てくるエイハブ船長が名前の由来だそうです。
(あまりに強引でビックリ!)
映画終映後のアートシアター新宿文化で上演されるのを
想定した戯曲なので、場面転換のない一幕もの。
すこし短めの作品ですが、これから話が展開していくので楽しみ。
来週はいよいよヒロインの登場するシーンから始まります。
次週もよろしくお願いします!
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